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94話 真偽

※前回までのあらすじ


 ファイアトラップが発動しなかった!



 リアはヘナヘナと力無くその場にへたり込んでしまっていた。



 死ぬ覚悟を決めていたのに、それが起こらなかったからだ。



「ど……どういうことですか?」



「ファイアトラップの上に魔力の鏡を重ねて設置しただけだ」


「?」



 魔力の鏡には魔力を吸収、蓄積する効果があると以前、詳細(プロパティ)を見た時に書いてあった。



 ファイアトラップに重ねて設置すれば、全て吸収して無効化するのではないかと思いやってみたのだ。



「それもそうなんですけど……なんで、そんな事を?」



 リアは戸惑いを見せていた。



「急に名案を思い付いてな」

「……名案?」



「それだけのスキルをここで失うには惜しい気がしてな。上手く利用すれば勇者共に対する最高の武器になるのではないかと思ったのだ」



 実際、隠密(ステルス)感知(パーセプション)のスキルがこちら側の手にあれば、これほど心強いものはない。



 真実、欲しいスキルだ。



「それって……」

「我が軍門に降るつもりはあるのかを聞きたい。ないのならば残念だが、やはり死んでもらう」



「……」



 思ってもみなかったのだろう、彼女は動揺の色を濃くした。



「えっ……な……なんで……??」



「共通の敵がいるのならば、叩き甲斐があるのでは? と思っただけだ。但し、その場合、忠誠を誓ってもらうことになる」



「忠誠……って、実際にどんなことを?」



 無論、言葉や態度での話ではない。

 そんな忠誠はあやふやだからだ。



 端的に言えば、俺の魔物リストに加えてしまうということ。

 トントロの時と同じだ。



 恐らく、俺に対し真に忠義を誓った時点で魔物リストに登録されるはず。

 実際に登録されなければ、彼女の忠誠は嘘ってことになる。

 それなら、やっぱり死んでもらうしかない。



「忠誠の言葉を述べるだけでいい。その真偽は我が判断する」


「……」



 彼女は黙り込んでしまった。



 さすがに勇者が魔王の仲間になるのは無理があったか……?



 そんなことを思っていると、彼女が不安そうに口を開く。



「あの……それだと……」

「なんだ?」



「私が魔王さんに忠誠を誓えば、村の皆はただでは済まないと思います。やはり私には死ぬしか方法が無いのです」



 俺はゴーレムの体でフッと息を吐く真似をした。



「なんだ、そんなことか」

「?」



「貴様は先程のファイアトラップで死んだ――ということにすればいい」

「え……」



「ラデスには勇者リアは死んだという噂だけを流せばいい。その代わり貴様は名前を変える必要がある。見た目はどうとでもなるだろう。例えば騎士のようにフルプレートアーマーを着込めば姿など分かりはしないのだからな」



「……」



 リアは、まさかそんな方法が……とばかりに呆然としていた。



「我の意志は伝えた。あとは貴様がどうするかだ。但し、我が配下に加わった場合、二度と元の世界には戻れぬと思え」


「……」



 それは故郷に残してきた家族や友達などに二度と会えないということだ。



「元より死ぬつもりでここに来たんですから、そんなことはとうに覚悟しています」



「ならば」



「ええ……」



 彼女はゴーレムを通して、俺の目をしっかりと見つめる。



「私は今より、名をリリアに改め、魔王さん……じゃなかった、魔王様に忠誠を誓います!」



 彼女がそう述べた途端、俺のコンソールに変化が訪れる。



 魔物リストに〝リリア〟の名が刻まれたのだ。



 しかし、変化はそれだけじゃなかった。



 リア改め、リリアの体が闇に包まれ始めたのだ。



「ふえっ!? こ、これ、何ですか!?」



 まるで霧のような闇が彼女の体に纏わり付き、全身を覆う。



「ふ……ふぁ!?」



 だが、それはものの数秒で消え去った。



 再び彼女の姿が目の前に現れた時には、全てが変わり果てていた。



 白い肌は浅黒く染まり、鮮やかな金髪は、煌めく銀色に変わっていたのだ。



「あ、あれ……? 私……どうなって……?」



 リリアは変化した自分の体を困惑しながら見回していた。



 俺……RPGでこんなの見たことあるぞ……。



 これって……ダークエルフじゃね?



 勇者は、魔王に忠誠を誓ったことで、見事に闇落ちしたのだった。



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