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85話 ドキッ罠だらけの小部屋

※前回までのあらすじ


 アイアン・メイデンを設置した!



 鉄の処女(アイアン・メイデン)を通路に設置した俺とアイルは、少し広めの小部屋に移動していた。



 これからテストしようとしているファラリスの雄牛が、通路に設置するには大きすぎるような気がしたからだ。



 それに罠としての特性を生かすのにも、こっちの方が良さそうだ。



 小部屋は第一階層と第二階層を繋ぐ通路の途中に存在している。

 ゲームで言ったら小ボスでも出て来そうな雰囲気の場所だ。



 早速、ファラリスの雄牛を合成する。

 レシピは、



草牛(ムートリ)の毛皮×1 + 鉄鉱石×2 + ファイアトラップ×1 = ファラリスの雄牛×1



 となっている。



 草牛(ムートリ)の毛皮は持ってないぞ……と思ったが、先のレベルアップでこんな料理レシピが増えていた。




[合成レシピ(料理)]


草牛(ムートリ)×1 = 草牛ムートリの肉×20 NEW!


草牛(ムートリ)の乳×1 = 生クリーム×5 NEW!




 恐らく、草牛(ムートリ)の肉を生成すると毛皮がドロップしそうな予感。



 草牛(ムートリ)は割合可愛い牛なのだが……肉にするのも、まあ……食物連鎖のうちだから仕方が無いよね。



 試しにアイテムボックスの内の草牛(ムートリ)を肉に変えてみたら案の定、草牛(ムートリ)の毛皮×1が自動生成された。



 正解。



 実際に捌くとなると大変だったけど、凄くお手軽で助かった。



 そんな訳でその毛皮を利用してファラリスの雄牛を作る。

 そして、部屋の最奥にドカッと置いてみた。



 普通の牛と同じくらいの大きさがあった。



 やっぱ、でけぇな……。



「今度は牛さんのお人形ですね。これも先程の鉄の処女(アイアン・メイデン)と同じような感じで使うのでしょうか?」



 アイルがファラリスの雄牛の周りを観察しながら言った。



「そうだね。やっぱり中に侵入者を誘い込んで仕留める感じかな。ただ、今度は内部に針は無いんだ。その代わり、下からファイアトラップの炎で炙る感じになる」



「まあ! それはとても風情があってよろしいですね!」

「……」



 まるで風鈴とか花火みたいな感覚で言われてもね……。



 しかし、これは鉄の処女(アイアン・メイデン)以上に罠として使うのが難しいぞ……。



 鉄の処女(アイアン・メイデン)は、扉が観音開きだったから誘い込み易かったけど……これは牛の背中……真上から入るタイプだからなあ……。



 わざわざ罠として使わなくてもいい感じだが……。

 と、そこまで考えた所で思い付く。



 真上から入るのが難しいなら、落とせばいいんじゃね?



 落とし穴を作って、そこにファラリスの雄牛を置く……って、それじゃ落とし穴とファイアトラップだけでよくね? 雄牛いらなくね?

 という結論に至る。



 でもまあ、落とし穴に落ちた際、雄牛に閉じ込めてしまえば脱出され難いっていう利点があるな。



 実際、勇者アレクが這い上がってきた事例があることだし、案外良い罠になるやもしれない。



 よし、それで行こう。



 俺は小部屋に入ってすぐ横の床に落とし穴を三つ分掘り、その底にファラリスの雄牛を置き直す。



「え……そこに置くんですか?」



 その様子を見ていたアイルが不思議そうに言った。



 落とし穴なら普通、小部屋に入ってすぐの床に設置するのが定石というか、嵌まり易い位置である。



 なのにもかかわらず、侵入者が全く歩かなそうな場所に設置したもんだから彼女は驚いたのだ。



「ここはダンジョンの第二階層に向かおうという場所だよ? さすがに勇者も罠のパターンに慣れてきている頃合いだと思うから、そろそろ仕掛けの方法を変えていかないと」

「なるほど」



 アイルは感心したような表情を見せた。



「まずは小部屋に入ってくる手前の通路から、ファラリスの雄牛に向かって追い込むような仕掛けを作っていかないと」



 俺は通路に戻ると壁をチェックし、位置を決める。



「この辺でいいかな」



 そこに設置するのは初めての罠。スイングカッターだ。

 天井から吊された大鎌が振り子の原理で侵入者を襲い、体を切り裂く罠である。



「わあ……」



 アイルは、天井からぶら下がる大鎌の刃の輝きにうっとりしている様子。



 これは本来、床スイッチで動き出す罠なんだけど……さすがにもう床は警戒されてそうだから別の方法を考えないといけない。



 出来れば踏む方式のスイッチじゃなくて、人感センサーのようなものがあったら便利なんだけど……。



 センサー……。



「ん……」



 その単語で俺はあるものを思い浮かべた。



 メダマンだ。



 あれはセンサーの塊みたいな魔物。

 工夫すれば使えるかもしれない。



 俺は床スイッチを壁に設置してみた。



 壁なのに床スイッチ。

 最早、何スイッチと呼んだらいいのか分からないが、そのスイッチの側にメダマンを設置する。



 するとメダマンは壁と同化し、見た目では姿が確認出来なくなる。



「目玉コウモリ……そこに新たな監視の目を設置されるのですか?」



 アイルが聞いてくる。



「カメラとしても使えるけど、優秀な人感センサーとしても使えるんじゃないかとい思ってね」

「センサー……ですか?」



 聞いたことのない単語に彼女はぼんやりとする。



「例えばこんなふうに」



 そこで俺は設置したメダマンに命じる。



「侵入者を発見したら側にあるスイッチを押してくれ」



 するとメダマンは、その虫のような細い足で壁に設置されているスイッチを押し込んだ。

 直後、



 ブンッ



 大鎌がアイルの眼前をスイングして掠める。



「……」



 彼女は青ざめた表情で硬直していた。



「あ……言い忘れた。俺達は侵入者に含まないってことで」



 俺はメダマンにそう伝えるのだった。



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