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58話 気配

※前回までのあらすじ


 勇者が再びやってきたっぽい!


 イリスから、



「勇者がやってきた!」



 との報告を受けた俺は、ダンジョン一層にある食堂にやってきていた。



 食堂内には既にアイルと四天王達が集まっており、皆思い思いの席に着いている。



 勇者がやって来たのだから、普通はそれに備えて最下層にある玉座の間に集まるのが妥当だと思う。



 だけど、何故か今回は食堂。



 それは、これがやりたかったからだ。



 俺は皆から見える壁際の位置に立つと、メダマンからのカメラ映像が映し出されているウィンドウを展開する。



 そしてそのウィンドウの端を指先で引っ張って、目一杯拡張させた。



 一瞬にして映画館並みの巨大スクリーンが出来上がる。



 皆から「おお……」という感嘆の声が漏れる。



「これから勇者の様子を皆で見て行こうと思う。動きを探りながら随時対応策が取れたらなあと思ってるので、忌憚の無い意見を聞かせて欲しい」



 俺がやりたかったのは、酒や食事を取りながら映像で試合観戦するパブリックビューイング的なもの。



 でも実際、酒は無いし、食事はさっき鱈腹食べたのでこれ以上は入らないと思うけど、似たような感じでリラックスした状態の方が、身構えているより色々と意見や良い発想が出るんじゃないかなーと思ったのだ。



「はいはい、魔王様」



 シャルがフリル付きの袖を大きく伸ばして手を挙げた。

 早速、何か質問のようだ。



「はい、シャル」

「えっと、勇者は今どこにいるの?」



 いきなり基本的な質問からだった。



 まあ、画面には分割されたカメラ映像が無数に表示されているので、分かりにくいことは確かだ。



「ちょっと待って、今映像に出すから」



 イリスとイフドラからの報告では森の西側。

 以前、勇者が侵入を試みようとした方角ってことは分かってる。



 しかも魔物リストを見ると、やはり前と同じオスカーリーダーが戦闘中と表記になってる。



 ってことは、オスカーリーダーの頭に取り付けたメダマンの映像に切り替えるのが一番手っ取り早いだろうな。



 俺は早速、そのカメラを選んでスクリーンに一画面表示させた。



「ん?」



 スクリーンに映ったのは何も無い草原だった。



 確かにその目線の高さはゴーレムのそれっぽいが……辺りには人影も無く、とても戦闘中とは思えない状況。



 青空と白い雲。

 風にそよぐ緑色の草原。

 その景色の中でヒラヒラと飛ぶ、小さな蝶。



 そのあまりに平穏な風景に呆気に取られる。



 一瞬、切り替えた映像を間違えたかな? と思って再度確認してみたけど、やっぱり間違ってなかった。



「ユウシャいないね」



 イスの上にぽちょんと載っているプゥルゥが、ぼんやりと呟く。



 おかしいな……。



 イリスは「あわわ……」と不安そうにしていたけど、彼女やイフドラの報告が間違っているとは思えないし、そもそもコンソール上の表記が戦闘中を示しているのだから、何かと戦っていることは確かなのだ。



 なら、オスカーリーダーに直接聞いてみるか。



 魔物リストの中からオスカーリーダーを選び、その名前の横にあるマイクの絵が付いたアイコンを押す。



「オスカーリーダー聞こえる? 聞こえてたら、ちょっと周囲の状況をぐるっと回って見せてくれないかな」



『リョウカイ』



 早速、返事が返ってきて、スクリーン上の映像が動き出す。



 そもそもオスカーリーダーがどこに立ってるのかって話。



 映像がゆっくりと横に流れ始める。

 オスカーリーダーがその場で足踏みして回り始めたのだ。



 さっきまで青空と緑の草原だった映像に、おどろおどろしい闇の広がる森が映り込み始める。



 死霊の森だ。



 それらから分かることは、オスカーリーダーは今、死霊の森を出てすぐの場所に立っているということ。



 映像は一回りすると元の場所で止まる。



 それで周囲の環境は分かったけど……。



 やっぱ、勇者いないじゃん!



 ってか、こんなことしてるより率直に聞いてみた方が早いか。



「オスカーリーダー、今戦闘中ってなってるけど、何と戦ってるの?」



『ユウシャ』

「……」



 俺はちょっと戸惑った。



 そこは間違っていないようだ。

 でも実際、勇者はどこに?



「その勇者は、どこにいるのか見せてもらうことってできる?」

『リョウカイ』



 すぐに返事が返ってきた。

 すると続けて、こんなことを言い出した。



『カメラ トノ レンドウ カイシ。ネツカンチセンサー ヘ キリカエル』



「ね……熱感知?」



 思ってもみなかった単語を耳にするや否や、カメラ映像が動き始める。



 目の前に広がる草原。

 その正面にやや大きめの岩が転がっていた。



 そこへカメラがズームアップしてゆく。



 その最中、通常の映像から、色による段階表示へと映像が切り替わった。

 いわゆるサーモグラフィー的なアレだ。



 すると大岩の向こう側を透かしたように熱源が見えてくる。



 人だ。



 赤い色で人型がはっきりと映ってるから間違い無い。



 しかも一人じゃない。

 手前に三人。



 更に奥には正確な数は分からないが、複数人が確認できる。



 これが勇者だって言うのなら、仲間を連れてきたってことか?

 それとも、この前とは違う勇者?



 ともかく、向こうはこちらにバレていないと思っているらしく、岩陰でじっとしている。



 逆にオスカーリーダーにとってはバレバレだったらしく、一方的にこちらだけ戦闘中に入ったらしい。



 でも、これで周囲の状況は把握した。



 あとは、もう少し詳しい情報が欲しいところだが……。


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