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38話 再現

※前回までのあらすじ


 ゴーレムに勇者の物真似を頼んだ!


「以前にも皆の物真似をゴーレムにしてもらったことがあると思うけど、それは一度でも対象の声や姿を見たからこそ出来る能力だったよね?」



 アイルと四天王達は黙って頷く。



「ということは、勇者と対峙したこのオスカーリーダーは、その物真似が出来るはずなんだよ」



「なるほど、当時の様子をゴーレムに再現してもらえれば、勇者の特徴を探ることができ、加えて今後の対策に繋がるという訳ですね。さすがは魔王様、素晴らしいアイデアです!」



 アイルが感心したように言った。



「なので早速、ここで再現をしてみようと思う。で、それにあたり皆に頼みたい事があるんだ」

「なんでしょう?」



 アイルが代表してそう尋ねてきた。



「オスカーリーダーには当然、勇者役をやってもらうんだけれど、それだとゴーレム役がいないんだよね。だから、皆にはそれをやって欲しいんだ」



「え……私達がゴーレム……」



 アイルを含め、四天王達の間でどよめきが起こる。



「さっき、皆が来る前にオスカーリーダーに聞いてみたんだけど、当時、ゴーレム達は特に何もしないで立ってただけなんだって。だからアイル達はただ立ってるだけでいいと思う」



「はあ……それならば私達にも出来そうです」

「うん、頼むよ」



 当時を完全再現するには実際にノーマルゴーレムを立たせておけばいいんだけど、ただ立ってるだけなら別に誰でもいいと思うんだよね。

 それにあの巨体を数十体、この大広間に入れるのはどうにも暑苦しいし。



 しかし、それにしても……立ってるだけで、どうやって勇者を退散させたのかが謎だ……。

 これは、それを知る為の再現でもある訳だけど。



「あ、それとオスカーリーダー役を誰かにやってもらわないといけないな」



 言いながら皆に目を向ける。

 すると、虚空を見詰めてぼんやりとしているイリスの姿が真っ先に目に入ってきた。



 うん、その気の抜けた感じ。実にゴーレムっぽい。

 彼女に頼もう。



「イリス」

「っ……!?」



 不意を突かれたようで彼女はビクッと体を震わせた。



「オスカーリーダー役をやってくれるかい?」

「わ……私?? で、でも……あの……どうしたらいいのか……」



 急にそんなことを言われたもんだから動揺してる。



「大丈夫、リーダー役と言ってもやっぱり立ってるだけだから。他の皆と変わらないよ。ただ先頭にいるだけ」

「そ、そう……それなら……頑張る!」



 イリスは胸の前で拳をギュッと握って可愛らしく気合いを入れていた。



 そこまで頑張らなくても平気だと思うぞ……。



「じゃあ、配置についてくれるかい?」



「「「「「はい」」」」」



 皆、返事をするとオスカーリーダーと距離を開け、向かい合うようにして立つ。

 イリスだけ、皆より一歩前に立っている。



 対するオスカーリーダーはというと、普段通り不動の構え。

 ただ、その手には太めの木の枝が握られていた。



「えっと、この木の枝は聖剣のつもりね」



 俺は皆にそう伝える。

 そして、タイミングを見計らって告げた。



「では、再現スタート!」



 言った途端、オスカーリーダーがドスンドスンと音を立てて走り出す。

 その向かう先はイリスだ。



「ふぇっ!?」



 彼女は、木の枝を振り上げて突進してきたオスカーリーダーに怯えるも、なんとか堪えてその場に立っていた。



 そのまま木の枝が彼女に振り下ろされようとした瞬間、オスカーリーダーは唐突に後ろへ飛び退いた。



 ドシンと音がして大広間全体が揺れる。



 そして、そのゴツい見た目と相反するような青年の声が、彼の巨体から漏れた。



『な……なんだ?? ゴーレムごときに聖剣が弾かれただと!?』



「え……」



 俺は何かの聞き間違いかと思った。



 ゴーレムの体が聖剣を弾いただって!?



 当然、ゴーレム役の皆もその言葉に呆然としていた。

 困惑する中、演技は続く。



『チッ……まさかゴーレム相手に私の秘技を見せることになろうとはな。ただ、これを受けて立っていた者などいない。あの天災級と言われるウォータイガーを一撃で打ち倒した技だからな』



 言うと、木の枝を正面に構え、何か力を込めているような体勢になる。



『これで塵になるがいい』



 そんな台詞を吐かれたイリスは、



「あわわわ……」



 と、あからさまに狼狽え始める。



 そんなにビビらなくても大丈夫だし!

 そもそも、あんた魔王四天王な上に邪竜魔団長でしょうが!



『くらえ! 天翔光波斬リトリビューションブレイク!』



「ひぃっ……!?」



 イリスは、思わず頭を抱えて目を瞑った。

 次の瞬間、



『カンッ』



「へ……?」



 急に金属音みたいなものが辺りに響く。



 それはオスカーリーダーの口から出た音のようだ。

 どうやら声真似だけじゃなく……効果音も真似できるらしい。



『お、おい……嘘だろ……。これが効かないってことは……このゴーレムは天災級以上の強さってことになるぞ……そんな馬鹿な。ゴーレムだぞ?』



 立ち尽くすオスカーリーダー。



 台詞の内容から察するに、さっきの効果音は勇者の必殺技を弾き返した音だったらしい。



『じょ……冗談じゃない……こ、こんなの絶対無理っ!!』



 そんな捨て台詞を吐くと、オスカーリーダーはイリス達に背を向けドタドタと走り出した。



 恐らくメダマンの映像に捉えたのはここからの出来事だ。



 オスカーリーダーは、そのまま壁際まで走ると、そこで動きを止めた。

 それで再現終了。



 残されたのは唖然とした表情のアイルと四天王達だった。



 さて、ここまで見てきた内容から勇者の特徴と対策を考える――――、

 ってか、それ以前に、



 俺のゴーレム強すぎじゃね?



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