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28話 食物素材

※前回までのあらすじ


 MPの回復方法を探った!



 MPの回復方法が分からない!



 俺はベッドの縁に腰掛け、腕組みして考える。



 寝ても回復しないのなら、あと考えられるのはアイテムとか、パワースポット的な回復ポイント。

 ゲームだとそんな感じだ。



 最初の頃に、ざっと魔王城を見て回ったけど、回復ポイントっぽいものは見当たらなかった。



 となると、やはりアイテムなのか?

 ポーションを自分で作らなきゃいけないのか?



 そんなレシピはまだ獲得していないが、とりあえずそれっぽい素材が入ってないか確かめてみよう。



 ゴーレム達にダンジョンを掘らせ続けているから、俺のアイテムボックスに自動で素材がストックされて行っているはず。



 どんな感じになったかな?




[素材パレット(鉱物)]

 土×99999

 土×287

 石×1526

 砂×3200 NEW!

 粘土×425 NEW!

 鉄鉱石×96

 銅鉱石×13

 銀鉱石×1 NEW!

 魔紅石×221

 石炭×101

 大理石×320

 油×226



 うはっ!? めっちゃ増えてる!

 しかも土が大変なことになってる!



 どうやら一アイテムあたりの保有上限が99999個らしく、土のストックが二つ目に突入してしまっている。



 こんなに土いらないんだけど……。

 捨てるとか出来るのかなあ。



 それはさておき、新しい素材がいくつか増えてる。

 砂や粘土は今後、何か新しい物が作れそうな予感がする。



 あと銀鉱石が一個だけ。

 すごく貴重な感じだ。

 これも何かになったらいいな。



 と、ここまで見てきたが、全部鉱物系なのでMP回復に繋がりそうなものは見当たらない。



 あとは城周辺の森へ素材採取に行っているゴーレム達の分を見てみよう。

 種類別でソート出来たので、見やすくなってる。




[素材パレット(植物)]

 木材×991 NEW!

 雑草×124 NEW!

 ポムポム草×5 NEW!

 毒キノコ×3 NEW!

 リゴルの実×1 NEW!




 当たり前だが、地下ばかり掘っていては手に入らないものばかりだ。

 ほとんど木材と雑草だけど、気になる素材がいくつかある。



 ポムポム草と毒キノコは、何かのアイテムの合成元になりそうな雰囲気があるが、リゴルの実ってのは、そのまま食べられそうな感じがする。



 試しに取り出してみようか。



 俺はリゴルの実にカーソルを当て、クリックする。

 すると、瞬時に手の中に赤い実が現れる。



 丁度、リンゴぐらいの大きさ。見た目もそっくりだ。

 匂いは……とても甘い香りがして、食欲をそそる。



 普通に食べられそうだ。



 実際、リゴルの実の詳細(プロパティ)を覗いてみると、




[リゴルの実]

 食用。森の動物達の大好物。

 甘くて美味しい。




 と、表記されていた。

 だからやっぱり食べても大丈夫なものなのだろう。



 だが――。



 俺をサポートしてくれる、このコンソールシステムに今まで裏切られたことは無い。

 でも、用心深い俺には気になることがあるのだ。



 それは、〝森の動物達の大好物〟って所。



 動物にとっては美味しいものかもしれないが、魔族にとっては、もしかしたら毒になりはしないか心配なのだ。



 なので信用のおける配下を呼び寄せ、聞いてみることにした。

 一度帰ったアイルを再びゴーレムに呼びに行かせる。



 数分後。



「お、お呼びですか! 魔王様!」



 やっぱり息を切らしているが、今度はずぶ濡れにはなっていないようだ。



 しかも今度は、罠の位置を完璧に把握しているらしく、勝手知ったるといった感じで飛んで来るバネ罠を華麗にかわし、俺の側まで近付いてくる。



 しかし、



「ちょっ、そこは……!」



 俺が言うや否や、アイルは床にあるスイッチを踏んでいた。



 バヒュッ



 涼しげに歩くアイルに向かって、今度は反対側の壁からバネ罠が飛び出し、彼女の鼻先を掠める。



「うぇっ!?」



 寸前の所で当たりはしなかったが、彼女はまたもや尻餅を突いていた。



「ごめん、ごめん……どうにも気になって、あれから一つ罠を追加したんだ。すぐに伝えればこんなことには……」



「い……いえ……魔王様は何も悪くありません。罠を察知出来ない私が未熟者なだけで御座います……いつつ……」



 アイルは打ち付けた腰を擦りながら、ゆっくりと跪く。



「それで、何の御用でしょう?」

「あ、そうだった。えっと、このリゴルの実なんだけど俺が食べても大丈夫かな?」



 手にしていた赤い実を彼女に見せる。



「ええ、何も問題は無いかと思います。魔王様のお口にも合うかと」

「そっか」



 俺の気持ちを察した彼女は、そこで提言してくれる。



「気になるようでしたら、私がお毒味させて頂きますが?」

「え……じゃあ、一応……」



 リゴルの実が俺の手から彼女に渡る。



 すると彼女は早速、その小さな口で実の端っこに、カプリと噛み付いた。

 しっかりと咀嚼し、飲み込む。



「美味しゅう御座います」



 淡泊な感想と共に、リゴルの実が俺の手元に戻ってきた。



 なるほど、大丈夫そうだ。

 さすがにこれで遅効性の毒でした。なんてことは、まず無いだろう。



 彼女のお陰でようやく口にする覚悟が出来た。



 じゃあ俺も……。

 そう思ってリゴルの実を口元に持って行こうとする。



 だが、そこで妙な視線を感じる。

 アイルだ。



 彼女は俺がいつその実を食べるのか待ち遠しそうに、且つ、火照った顔でニヤニヤとして見ている。



 何事かと思ったが……。

 そんなふうに顔に出ちゃってる時点で理解した。



 リゴルの実には彼女の歯形がしっかりと付いている。

 ようは、この実を俺が食べれば間接キスなのである。



 それを分かっていて彼女はさっきから興奮気味に「フーッ、フーッ」と猫みたいに唸っていた。



 なんなんだよ、もう……。



 だからといって気にしていては何も出来ない。

 なので思い切って囓ってみる。



「ん……」



 サクッとした小気味よい触感。

 中から溢れる爽やかな果汁。



 これは……うまい!

 リンゴに似た味がするが、こっちの方が数段旨いぞ!



 食欲に任せていると、あっという間に一個、平らげてしまった。



「ふぅ……うまかった。もう一個食べたいくらいだ」



 そう思っていると、体に異変が。

 なんだか、体の内側から力が湧き上がって膨れたような気がしたのだ。



 もしかして……。



 予感がした俺はすぐさまステータスを見てみた。

 注目すべきはMPの値。




 MP:227/3016




 ん?



 パッと見、何も変わってないように見えるが……。

 リゴルの実を食べる前は確か226だった気がする。

 ってことは――。



 1ポイント回復してるーっ!



 ってか、少ねえぇぇ!

 一個丸々食べて、それだけの恩恵しかないのかよ!



 アイルが少し囓ったから効果が減ったって可能性もあるが、それを鑑みても少なすぎなので関係無いと思う。



 それに……旨いけど、一個で結構お腹いっぱいになっちゃったぞ?

 確かにMP回復アイテムなのかもしれないが、効率悪すぎ!



 こんなの全然実用的じゃない。

 でも、食べ物でMPが回復するって分かったのは大きな収穫だ。



 もしかしたら、もっと大きく回復する食べ物が存在している可能性があるってことだから。



 よーし、ちょっとだけ希望が見えてきたぞ。

 食材探しに少し力を入れてみよう。



 そう決めてアイルに目を向けると、



「ついに……魔王様の唇と……私の唇が……ああー……なんて幸せ……」



 彼女は間接キスのことを思い出しながら、恍惚の笑みを浮かべていた。



「……」



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