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231話 見物客

※前回までのあらすじ


 ユウキ達のもとへ瞬足くんを向かわせた!



「おおっ! 魔王代理殿ではないですか!」



 死霊の森の外縁に突如現れた瞬足くんにユウキ達は驚いた様子を見せた。



「ラデスから、もう戻られたのですか?」



 彼らがモルス山脈へ向かっていた間、普通に戻る時間はある。



 だが、瞬足くんはその足の速さも然る事ながら、今回はラデスに魔法の扉Ⅱを設置したので一瞬で移動出来ることを彼らは知らない。



「それより、ここに何の用だ? 魔王様に代わり我が話を聞こう」



 俺は瞬足くんの体を借りて、彼らに話しかけた。

 するとユウキはばつが悪そうに後頭部に手を置いた。



「それがですね……以前、お約束したレジニアの勇者を倒してみせるというお話なんですが……つい先日、直接相対してきましてね……」



 知ってる、と言いたくなったが堪える。

 ここで嘘を吐くかどうかで、彼らの信用度にも関わってくるから。



「ほう、それで?」

「これがお恥ずかしい話……全く歯が立たなかったというか……敗走してきた始末でして……」



「それはお前達が弱いということを言いたいのか?」

「いえ、私達は勇者としてそれなりの強さがあると自負しています。ですが、この度のレジニアの勇者、モルガスが規格外の強さを持っていたのです」



 映像で見てた限りでは、ユウキ達もめちゃめちゃ弱いよね?



「あれはヤバい強さでござるよ! ユッキーなんか、行く前は『レジニアの勇者なんか、口ん中に手突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたるわー』なんて言ってた癖に、逃げ帰る頃には自分が奥歯ガタガタ言わせながら全速力で走っていたでござるからなー。最早、生きたギャグでござるよ」

「お前が言うなよ! あと、ユッキー言うな!」



 二人の調子は相変わらずのようだ。



「それで、その返り討ちにあった件をここで話して、どうしようというのだ?」



 こちらの問いかけに、ユウキは真剣な眼差しを向けてくる。



「大口を叩いておいて大変申し訳無いのですが……ここは魔王殿のお力をお借りしたいと……」



 結局、俺が始末を付けなきゃならないんかい。



「そんな事を言って、レジニアの勇者と示し合わせ、我々を挟み撃ちにする策略なのではないか?」

「そんな、滅相も無い。私達は本気で勇者を根絶させたいと思っています。それにこの度のモルガスとの戦闘で得た情報をお教えすることも出来ます」



 ああ、それね。

 映像で見てたから、それ以上の情報は無いと思うんだけど。



 とにかく、ここまでの状況で、このゼンロウの勇者にそこまでの脅威は感じない。

 何かの役に立つとは思えないが、このまま死霊の森の外に待機させておくか……。



 不穏な動きがあったら、すぐにゴーレムで制圧できるようにしておこう。



「ならば、その良く回る口でペラペラと喋っているがいい」

「おおっ、やって頂けますか!」



 了承と捉えたユウキは喜びに目を見開いた。



 別にあんた達に頼まれなくても、勇者は攻めて来るんだから、どのみちやらなきゃなんないんだけどね!



「では、私達はこの辺でキャンプを張らさせて頂きますね」

「キャ……キャンプ??」



 途端、彼らはその場で荷物を広げ始めた。

 布を広げ、杭を打ち、あっという間にテントを張る。

 ついでに火まで起こして、鍋をかけ、テントの中に寝っ転がった。



 何、寛いでんだよっ!



「な……何をしているのだ?」

「いえ、お言葉に甘えて、ここら辺で待機させて頂こうかと。どうぞ、お構いなく」



 言われても構わねぇよ!



「ねえ、ユッキーお腹空いたでござる」

「仕方ないですね。道中で採取した山菜でスープを作りますから、それまで昼寝でもして待ってて下さい」

「わーい、やったでござる! ユッキーの作るスープ好き! グゥゥ……」

「寝るの早っ!?」



 急にほのぼのした光景が目の前で繰り広げられる。



「……」



 こいつらは本気なのか、ワザとボケてるのか分からなくなってきたぞ……。

 いや、もうこれが素だな……。

 演技だったら、もう天晴れとしか言いようがない。



 しばらくして、魔王城を望む死霊の森の外縁に山菜スープの良い匂いが立ち籠め始めた。



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