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209話 ダウト

※前回までのあらすじ


 勇者二人が再びラデスに向かった!



「姫様! 先ほどのゼンロウの勇者が今一度、姫様のお会いしたいと申しております!」



「なんじゃと!?」



 兵士の報告にラウラは素っ頓狂な声を上げた。

 これには俺もビックリ。



「小一時間ほど前に帰ったばかりではないか! 一体、何がしたいのじゃ?」

「私にもさっぱりです……」



 報告に来た兵士も困った様子。

 ラウラは確認を得るように一旦、俺の方を見ると、溜息を吐きながら兵士に告げる。



「分かった……通せ」

「はっ」



 彼は伝令の為に戻って行った。



 俺とラウラの脳内やり取りでは、

 何か仕掛けてくるなら、さっきやってるだろうし、拒む理由も無い。

 という結論が出ていたので通すことにしたのだ。




 さっきと同じ礼拝堂に場を設け……数分後。




「やあ、これはこれはお久しぶりですラウラ姫、またお会い出来ましたね」



 ユウキがやけに嬉しそうに礼拝堂に入ってきた。

 隣には無論、忍者少女カルラの姿がある。



「何が久し振りじゃ、さっき会ったばかりであろう」

「ほんの僅かでもお顔が見えなければ寂しいものですよ」

「……」



 ラウラはあからさまに不機嫌そうな表情を浮かべた。



「で、一体、何の用なのじゃ? 用件なら一度で済ませて欲しいものじゃの」

「仰る通りなのですが、帰りがけに急にある事を思い出しまして」

「ある事じゃと?」



 するとユウキはニコニコしながら周囲に配置されている兵士達を見渡す。



「ここからは少々込み入った話になりますが……宜しいですか?」



 それは暗に人払いをした方がいいと言いたいのだろう。

 しかも自分達の為ではなく、ラウラ姫にとって。



「分かったのじゃ……お前達、下がれ」



 彼女が命じると礼拝堂内にいた兵士達がゾロゾロと扉から外へと出て行く。

 そんな状況で俺だけ残るのも怪しいので、彼らに混じって外に出ることにした。



 彼らを監視する手段が他にもあるし、ラウラも一応あれで元勇者だ。

 何かあっても対処の方法は心得ている。



 外に出たらメダマンを使って天井から様子を探ろう。

 そんなことを思いながら出口に差し掛かった時だ。



「あ、ちょっと待って下さい。一人だけ兵士を残して頂きたいんですが」



 唐突にユウキが言った。



「なぜじゃ?」

「ラウラ姫もお一人で我々と会談するのは心細いと思いましてね。ですが、その兵士はこちらに選ばせて欲しいのですが」



 僅少の間が空く。



「人払いを要求しておいて一人だけ残せと? しかもそなた達が選ぶと? おかしな話じゃの」

「ええ、本当に。あはは……」

「うふふ……」



 互いに不敵な笑みを浮かべる。



「妾は別に構わぬが」

「そうですか、ありがとうございます。では、カルラ、どの方にしますか?」



 そこで忍者少女が顎に手を当て兵士達を見回す。



「うーんと……そうでござるねえ……」



 彼女が喋ったのを初めて聞いたが、思ったより幼い感じの声だった。

 って、「ござる」って何だよ! 今日日の忍者漫画だって、そんな喋り方するキャラクターはいないぞ。



 そうこうしているとカルラはある一点に視線を絞り、指先を向ける。



「あ、あの人!」



 ギクゥゥッ



 って、俺じゃねえか!

 正確には瞬足くんだけど。



 ってか、よりにもよって俺を選ぶとは……。

 でも、それならそれでまあいいか。

 彼らを観察し易くなるし。



 というか、これは偶然なのか?

 それとも俺に何かを感じて意図的に選んだ??



 どちらにせよ、興味深い。



「では、そちらの兵士さんが残って頂けますか」

「……」



 瞬足くんは当然、無言でラウラの背後に控える。



 暫くすると全ての兵士が捌け、礼拝堂の中には彼らゼンロウの勇者二人と、ラウラ姫――そして、瞬足くんの体を借りた俺の四人だけになっていた。



「さて、これでだいぶ話し易くなりましたね」



 ユウキが胡散臭い笑顔を浮かべる。



「それで込み入った話というのは何じゃ?」

「それはですね……」



 彼が質問に答えかけた時だった。

 カルラが横から出て来て、いきなり呟いた。



「この人が魔王代理でござるよ!」

「早いんだよ、ボケッ!」



 べしっ



「あうっ!?」



 ユウキが急に人が変わったようになってカルラの後頭部を引っ叩いた。



 彼女は頭を押さえて涙ぐむ。



「……」

「……」



 そんな勇者漫才みたいな光景を見せられた俺とラウラは、正体がバレてることを認知するのに少し遅れたのだった。



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