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208話 勇者が分析してみた

※勇者ユウキ視点の回です。


〈勇者ユウキ視点〉




「どう思いますか?」



 ユウキは隣にいる覆面姿の少女、カルラに尋ねた。



「あの反応は確実に魔王側と内通しているでござるよ」



 彼女はうんうんと頷きながら答えた。



 ここは旧ラデス帝国からやや離れた高台。

 二人はそこから帝都の姿を見下ろしていた。



「結論が早いんですね」

「だって、メチャクチャ怪しいでござるよ?」



「まあ、そうなんですけど。早とちりってことも有り得ますからね」

「いや、でもユウキも通りがかりに見たでござろう? あの城跡の様子」



「ええ、猛烈な勢いで建設が進んでいるようでしたね。この短期間であそこまで土台が出来上がっている……。その割には建設要員の姿が全く見えませんでしたからね」

「ほらほら、やっぱり超怪しいでござる」



 カルラは普段からせっかちな性格である。

 それで失敗したことは数知れず。



 だが、今回のこれは彼女の言う通りだとユウキも確信していた。



 ここからでも目を凝らせばギリギリ見える巨大な扉。

 城の建設現場に置かれているそれが確信を後押ししていた。



 整地された土地にポツンと置かれているだけで、建設中の城の一部とは思えない構造。

 それだけが意味ありげに周囲から浮いて見える。



「あの扉は大きさこそ違えど、前にモルス山脈の麓で見たものと形が似ていますね」

「そうそう、私もそう思ったでござる」



 以前から、イスラ法王庁絡みのキナ臭い動きを北のモルス山脈に捉えていたユウキ達。



 神聖レジニア皇国を探っていたユウキ達は、その動きを嗅ぎ付けモルス山脈に向かったことがあった。



 そこで目にしたのは、遺跡のような謎の扉からレジニアの勇者と思しき男女が出てくる姿だった。



 レジニアはかつての魔王の力を手に入れ、山の向こうで栄華を極めた国であるということが調べを進める内に分かった。



 前人未踏のモルスを越えられたのも、その魔王の遺産と思しき扉のお陰に違いないと踏んでいる。



 モルスで見たものはだいぶ朽ちた印象を受けたが、ラデスに置かれているものは真新しく、しっかりしているように思える。



「しかし形は似ていますが、レジニアが使っているものとは違うように思えるのですが」

「そうでござるね。恐らく、レジニアの勇者が使っていたのは昔の魔王のやつなのでござろう。となると、こっちのは今の魔王のものってことになるでござるよ。ならばラウラ姫は魔王と手を組んでいるのは確定的でござる」



「相変わらず君は答えを急ぎるようだ」

「だって、そうでござろう?」

「その可能性は高いですが、動き出す前に事はしっかりと詰めておかないと足下を掬われますからね」

「ユウキはいつも慎重すぎるでござるよ」



 カルラは肩を竦める。



「ラウラ姫は何故、魔王側と手を組む必要があったんですかね? というか、そもそも魔王はそういった人間の交渉に応じてくれるような人物なんですかね?」

「利害が一致すれば、そういうこともあるのではござらんか?」



「利害ですか、それはどんな利害なのでしょう? 聞いてみたいものです」

「いや、そういう難しいことはいいから次の行動に移るでござるよ」



 カルラは居ても経っても居られないといった具合で足踏みする。

 この性格で、さっきはよくラウラ姫の前で黙って聞いていられたものだと改めて感心する。



「特に姫や民に洗脳が施されているような気配は見受けられませんでしたので、もしそうならば素の状態で魔王に従っているということになるでしょう。それはどういう状況ですかね?」

「えー……それはその……直感っていうかフィーリング? ……でござるかな?」

「……」



 ユウキは額に手を当て嘆息した。



 正直、カルラのこういう所はついて行けないとユウキは思っている。

 だが一概には言えない部分もある。

 実際、過去に彼女の直感に救われたこともあるからだ。



「では、その直感てやつで感じたことを聞かせてもらえませんか?」

「えーと……そうでござるねえ……」



 カルラは顎に手を当て思案する素振りを見せた。

 そしてすぐに、



「あ、そうだ。ラウラ姫に会った際に周りに兵士が警備していたでござろう?」

「いましたね。結構な人数が」

「あの中に、一人だけ全く気配を感じない兵士が居たでござるよ」



「……!? それはどういう意味ですか?」



「なんていうか……例えるならば死人みたいな感覚でござるね」

「死人……」



 死人が兵士など出来るはずがない。

 動ける死人というのならそれはゾンビだ。

 ゾンビを操れるのは死霊使い(ネクロマンサー)か、または魔物の類い……。



 そうでなくても魔物が絡んでいるのは確か。



 ――兵士の格好をした魔物……。



 その条件でユウキの中で思い当たるのは――。



 ――まさか……魔王代理ですか。



 実際にそうかは分からないが、そのカルラの感覚が確かなら魔王の息が掛かっている証拠になる。



「ならば今一度、その死人とラウラ姫に会いに行きましょうか」

「おお、やっと動く気になったでござるか! 早速、行くでござるよ!」



 ユウキ達はそのまま坂を駆け下りた。




いつもお読み頂きありがとうございます!


下記の新作を始めております。

本作とはテイストが違いますが、根底に流れているものは同じだと思いますので、

本作の読者様も楽しめるのではないかと思っております。

是非、ご覧下さいませ。


尚、本作も続けて参りますのでご安心を。


『影縫いの裁縫師~役立たずだからと上級パーティを追放された俺だけど、外れスキル『裁縫』が真の力に目覚めたので、落ちこぼれの仲間と一緒に最強を目指します~』


作品URL

https://ncode.syosetu.com/n8074gi/



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[一言] 新作もいいけどこっちの更新も頼んますよ!
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