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番外編3 回復さんの日常

 俺はダンジョンにある食堂で思考に耽っていた。



 これからも現れるであろう勇者に対して、最も有効な対応策を……。



 とは言っても……勇者によってスキルがまちまちだから、それに合わせるように毎回違った策を考えなければいけないわけで……。



 そう簡単に、これ一つで全ての勇者に効果てき面! みたいな便利な方法が見つかる訳でもない……。



 やっぱり、その都度、地道に考えていかないと駄目だろうな。



「ふぅ……」



 そんなふうに嘆息すると、グラスに入ったジルジルジュースをワインのように回しながら口に含む。



 ちょっと一服。

 そんな感じで背もたれに体を預けた時――、



 俺の視界に全裸の少女が入り込んできた。



「ぶふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっっっっ!?」



 思わずジルジルジュースを噴き出す。



 その少女というのは回復さんだった。



 しかもスケルトンとしての姿ではなく、肉体を回復させたヒルダの姿。

 だから文字通りのすっぽんぽん。全裸オブ全裸だった!



「ちょっ、何してんの!?」



 例えスケルトンでも、見ちゃいけないような気がして目を背ける。

 それでも視界の端に白い姿態がチラついて落ち着いてはいられない。



 妙にスタイルが良いから尚更、困る。



「カタカタッ」

「え? 何?」

「カタタタッ」

「……」



 しまった……言葉が分からない。

 でも、こちらの意志を伝えることは出来るか……。



「と、とにかく、スケルトンの姿に戻ってよ」

「カタタ……」



「え……嫌だ?」

「カタ」



 あれ? 意志の疎通が出来る?

 何となくニュアンスで理解出来そうだな。



「嫌だって言われても、そんな格好でうろうろされたら困るんだよ」

「カタタタ、カタ」



「私は気にしない? いや、こっちが気にするんだって! せめて服を着てくれ、服を」

「カタァ……」



「なんで不服そうなんだよ!」



 ともかく、このままではまともに話し合いも出来ない。

 何か着るものはないのか?



 俺は自分のアイテムボックスの中で彼女が着られそうな服を探す。



 使えそうなのは、シャル・ゴーレム用に作り置きしてある魔法使いの服かな。



 濃紺のフード付きローブを取り出すと、



「取り敢えず、これを羽織って……」



 明後日の方向を向きながら彼女の背後に回り込み、肩に掛けてやる。



 長い裾は彼女の体をすっぽりと隠した。



 ふぅ……これで一先ず落ち着いた。



「で、どうしたの? 何か用があってここに来たんじゃ?」

「カタタタ、カタ」



「ふむ……何か仕事を与えて欲しい?」



 当然のように忠実なるしもべになっている彼女だけど、勇者の顔でそう言われると、まだちょっと戸惑う。



「そうだなあ……新たな勇者への対抗策を手伝ってもらいたい所だけど、今考えてる最中だしなあ……」



 思案していると、ふと食堂の風景が目に入ってくる。



 片づいてはいるが……この食堂、建設してから結構、使用頻度が高い為、少し汚れが溜まってきている感がある。



「じゃあ、ここの掃除を頼もうかな」

「カタッ」



 彼女は骨を鳴らして元気良く返事をした。

 そして――、



 バァッサァァッ



 ローブを脱ぎ捨てた。



「なぜ脱いだ!?」



 どうせ脱ぐなら肉も脱いでくれ!



「カタカタカーッ」

「ん? これを着ていると体を動かしにくい? まあ確かに裾が長くて引っ掛かりそうだけどさー……ん」



 そこで俺はある事を思い付く。



「じゃあこうしよう。取り敢えず、これ着て」

「カタ?」



 再びローブを着せてやる。

 そして、



「こうやって下の方を巻いて……」



 たくし上げる為に裾を引っ張った時だった。



 彼女は裾の一部を踏んでいたのだろう。

 引っ張った直後、回復さんはバランスを崩した。



「カタッ!?」

「おっ!?」



 転んだ彼女が俺の上に覆い被さってきた。



 痛くはなかったのだが……何やら顔の辺りに二つの柔らかい感触が……。



 これは、もしかすると……そのもしかか……!?



 俺は、はだけた彼女の胸に押し潰されていた。



 ぬぉ……なんというコテコテなラッキースケベ展開!

 でも、相手はスケルトン。

 なんだか複雑な気分だ……。



 なんて思っていると、食堂の入り口の辺りに人の気配が。



 回復さんの胸に埋もれたまま、そちらに目をむけると、そこには――、



「ま……魔王様……?? あわわ……」



 青ざめた顔でこちらを覗いているアイルの姿があった。



「……」



 どう言い訳したものか……と考える俺だった。



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