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187話 魔王ゴーレム

※勇者レオ視点の回です。


〈勇者レオ視点〉




 レオ達は大きな二枚扉の前にいた。



 それは他の扉とは明らかに違い、重厚な佇まい。



 場所も魔王城の最奥であるが故、恐らくここが魔王の居る玉座の間だと思われる。



「ついに来たか」



 今この場に自分が立っていることをしっかりと噛み締める。

 そしてヒルダや兵士達に目を向け、問う。



「準備はいいか?」



 それに対し、皆は目で答えた。



「行くぞ」



 レオは短く告げて、扉に手を掛ける。



 それは思いの外、滑らかに開いた。



 直後、視界に入ってきたのは高い天井を持つ広い空間。

 その奥に据えられた椅子の上に、明らかに巨躯と分かるシルエットがあった。



 ――あれが……魔王か?



 自身の中に緊張の高まりを感じる。



 兵士を引き連れ、ゆっくりと広間の中へ足を踏み入れる。



 すると、玉座に座る魔王の姿がよりはっきりと見えるようになった。



 人間の三倍はあろうかという巨体に燕尾服のような裾の長い服を身に付け、黒色のマントを羽織っている。



 顔の辺りは髪なのか髭なのか、得体の知れない繊維で覆われており、その表情は全くと言っていいほど窺うことが出来ない。



 ただ、これだけは分かった。



 ――こいつも……ゴーレムか!



 いくら服装や装飾で飾り立てても、その手足の先は隠し切れていない。

 ゴーレムの特徴であるゴツゴツとした岩のような指が袖の先から出ているのだから。



 ――そもそも、隠す気すらないようにも思えるが……。



 レオは不審に思いながらも立ち止まり、玉座を見上げる。

 すると、向こうから口を開いた。



「よく生きて辿り着けたな、勇者よ。褒めてつかわそう」



 発せられたその声は巨躯に似合わない若めの声質だった。



 森で相対した熊の着ぐるみもそうだったが、何度見てもゴーレムが人語を喋ることに驚く。と同時に不気味さを覚えた。



「ほほう、俺もゴーレムに褒められる日が来るとはな。そんな勇者は世界広しと言えども俺くらいなものだろう」



「左様、ありがたく思うといい」

「……」



 皮肉を投げかけるもゴーレムは微塵も動く様子は無かった。



「森で相対した四天王もそうだった。ゴーレムにしてはやるようだが……。この城では玉座にゴーレムを座らせるのか?」



 するとゴーレムは言葉を溜める。

 そして――



「我こそがこの城の主――魔王だ」

「……」



 兵士達がザワつく。



「ゴーレムが意志を持ち、魔力を高め、多くのゴーレムの頂点に立つ。それがゴーレムの魔王と呼ばずして何だというのだ」

「……」



 ――今期の魔王はゴーレムとして誕生したということなのだろうか? まさか、そんな事が……。有り得るのか……? だが……先の四天王と戦って分かったが、ここまでの力を持ったゴーレムは今までに見たことが無い。それに言葉を喋ることにも納得が行く。ということは……本当に……?



 そこでレオは心の中でほくそ笑む



 ――もし、こいつが本当に魔王だというのなら、勝機はある。



 いくらゴーレムの頂点立つ者といっても所詮は岩の塊。

 先の鋼鉄の騎士のように絶対防御(スヴェル)の力を一点に集束させて突けば、粉々に砕け散るだけだ。



 ――腐っても魔王。それなりの硬度はあるのだろう。他の勇者が太刀打ち出来なかった理由はそこなのかもしれない。だが、俺は違う。こちらには万物を突き崩す力があるのだから。



「なら、貴様を魔王ということにしておいてやろう。故に、ここでおとなしく成敗されるがいい」



 レオは大盾を前面に構えた。

 ヒルダと兵士達も戦闘態勢を取る。



 更なる緊張の高まりを感じた時だった。



「その前に――」



 今まで不動だった魔王が右手を挙げる。



 その合図で広間の中に数体のゴーレムが次々に入ってきた。



「……!」



 レオ達は思わず身構える。



 だが、ゴーレムの手には武器ではなくテーブルや椅子があり、彼らはそれをレオ達の前に黙々と設置して行くだけだった。



 次いでテーブルクロスが敷かれ、水差しとティーポット、茶器の類いが置かれる。



 一連の様子を呆然と見つめていると、ゴーレム達が捌けて行った所で魔王が口を開いた。



「水と茶、どちらを所望する?」



「え……」



 予期していなかったものが眼前に並べられ、レオ達は目が点になるのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 草生えた
[一言] ティータイムは大事。 特に激しい運動をした後なんだし汗を拭いてティータイムで一息入れさせる紳士的対応 (英国面堕ち中)
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