表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/239

18話 ドラゴンの力

※前回までのあらすじ


 イリスが魔紅石の在処を知っているらしい!


「よかったー、知ってる人がいて。助かるよ、イリス」



 俺は安堵の息を吐いた。

 それを受けた彼女の反応はというと……、



「べ……べつに……たまたま知っていただけ……」



 素っ気無い素振りを見せるが、表情はそこはかとなく嬉しそうだ。



「それでその魔紅石はどこにあるの?」

「……火山の中」



「火山……? って、マグマがグツグツ言ってるあの火山?」

「そう……その火山」



「……」



 彼女が言うには、魔紅石というのはマグマの持つ熱エネルギーが凝縮して出来た魔法石の一種なんだそうだ。

 しかも火山の深部にしか存在していないものらしい。



 さすがにマグマの中に突っ込んで行って掘る訳にもいかない。

 普通に溶けるし。



「それはリスクの方が大きいから、今回は見送りかな。採掘出来る方法が見つかるまで保留ってことにしておこう」



「私なら行ける」

「え?」



 フラットなテンションで言われたから、思わずスルーしそうになった。



「どういうこと?」

「堅牢な竜の鱗を持つ私なら、マグマの熱にも耐えられる」



「マジで!?」



 そういえば、ゲームやファンタジー小説に出てくる竜の鱗って頑強なイメージだよね。

 竜の鱗を繋ぎ合わせて作った鎧は、剣や槍の攻撃を受け付けないだけでなく、魔法をも弾き返したりするのが設定として良くある。



 イリスの肌は普通の女の子と同じように白くて柔らかそうだけど、これでも竜の鱗なんだ……。



「ドラゴンすげー」

「えっ……す、すごい……? 私が……?」



「うん、かなり。さすがドラゴンだなーって思ったよ」

「そ、そう……? 私……すごい……うふふふ」



 褒められたことが余程嬉しかったのか、その言葉を反芻してはニヤニヤとしている。

 そのうちに気持ちが大きくなったらしく、



「だから、私に任せて欲しい」



 と言いながら、小さな胸を張ってみせた。



 彼女がそう言うのなら、その言葉に甘えさせてもらった方が良さそうだ。



「じゃあ、この件はイリスにお願いするよ」

「うん」



 そこに居合わせたアイルと他の魔団長らは、そんなイリスに羨望の眼差しを向けていた。

 どうやら魔王である俺に頼まれごとをされるのが、何よりも羨ましいことらしい。



 それはともかくとして、



「で、その火山ってどこにあるの? 結構遠い?」

「この城のすぐ裏」

「近っ」



 気になったので城の裏手にあるテラスに移動してみると、眼前にでっかい山がそびえているのを確認出来た。



 本当にすぐ裏だな……。

 しかし、そう思うと温泉が湧いて出たことも何となく理解出来る。



「やっぱり深部に入るとしたら火口から?」

「そう」



「なら、あそこまで登らないといけないのか。結構な高さがあるなー」

「私が飛べば、すぐ」



 あ……そういえば人型だから完全に忘れていたけど、彼女の背中にはちゃんとドラゴンの翼が生えてるんだった。



「じゃあ大丈夫そうだね」

「うん」



「それじゃ頼むよ」

「う……うん」



「行ってらっしゃい」

「う……」



 そこまで言うと彼女は口をへの字に曲げ、何か言いたげにしている。



「どうしたの?」

「あ……あの……魔王様も……一緒に来てくれたら……嬉しいなって……」



「どうして?」

「あう……」



 何が言いたいんだろう?

 彼女はマグマの中に潜れる能力を持ち合わせていて、魔紅石を単独で取りに行くことが出来る。

 しかも、あの山の頂上までその翼で一っ飛びだ。



 俺がそれに付いて行く理由が何も無いんだけど?

 寧ろ、彼女の仕事の邪魔に成りかねない。

 側にいて何か手伝える訳でもないし。



 そんな事を思っていると、イリスの様子に異変が。

 はにかみながら俺の顔を見上げてくる。



「あの……魔王様が側で見ててくれると頑張れるから……。それで良く出来たら頭を撫でて欲しい……」



 その姿は反則っぽい可愛さだった。



 でも分かった。

 彼女は基本、自信が無い感じだが、褒めると伸びるタイプだってことが。



「分かった。じゃあ一緒に行こう」



 それで彼女の表情が晴れやかになる。



 まあ、すぐそこだし、城を空けるのも少しの間だ。

 と、思ったけど……。



「って、俺はどうやって行くの?」

「それは……」



 そこでイリスは照れ臭そうに頬を朱に染める。

 そして、こう呟いた。



「私が……抱っこする」



「んんんっ!?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ