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174話 見えない道筋

※勇者ヒルダ視点の回です。


〈勇者ヒルダ視点〉




 ヒルダは焦燥の中にいた。



 盾となるべき兵士を失い、レオとも離れてしまった。



 今の彼女は無防備そのもの。



 ――どうする……私。考えるのよ……。



 思考すればするほど焦りがそれを邪魔する。



 ――やはり、一刻も早くレオ達と合流するのが最善の方法だと思う。それしかないわ……。



 そう思って体を起こす。

 だが……寸前で踏み止まった。



 ――待って……。その行動は軽率かもしれない……。



 ここまでヒルダ達の行動は魔王の手の内だった。

 それを鑑みれば……。



 ――私がレオと合流したいと思っている事は魔王にとっても想定内ということになる……。ということは、下手に合流しようとすれば新たな罠に嵌まる可能性が高い……?



 焦って行動を起こそうとしていた自分を改めて客観視すると、途端に血の気が失せて行く。



 ――危ない危ない……。一旦、落ち着きましょう。



 ヒルダは近くの木の幹に背中を預け、思案する。



 ――これまでの罠から推測すると、私から兵士を引き剥がそうという意志が感じられる。それは普通に考えて常に全回復する不死の部隊が邪魔だからだろう。



 そして、それを奪われた今のヒルダは、奴らにとって仕留めるには絶好の機会。



 ――となると……このタイミングで必ず刺客を送ってくるはず……。



 それが一対一であるなら、まだ勝機はある。

 これでも勇者、回復スキルを使わずとも矛の扱いは誰にも負けない自信があるからだ。



 だが、複数で来られたら厄介だ。



 ――魔王はまだ私が回復スキルを使えると思っているはず。だとしたら、回復させる機会を与えまいと、複数の敵を差し向けてくる可能性が充分にある。



 ヒルダは目を細める。



 ――まずいわね……そうなる前になんとかしないと。



 魔王の想定外になるような行動は起こせないものか?

 それを思案している時だった。



 森の草木が急に突風でも吹かれたように激しく揺れた。



「何……?」



 それは自然な風ではない。



 それを理解した刹那、反射的に体が動いていた。



 咄嗟に体を横に傾ける。

 すると、耳の横を何かが駆け抜けた。



「……っ!?」



 横髪の数本が刃物で切断れたようにハラリと落ち、頬に一本の紅い筋が引かれる。



 遅れてくる痛み。



 ――斬られた!?



 頬にうっすらと血が滲む感覚がする。



 ――……かすり傷程度だけど……僅かに遅れたら首をやられていた……?



 突然の不意打ち。



 それは先程まで刺客が送られる可能性を想定していたからこそ、避けられたにすぎない。

 それが無かったら今頃は……。



 ふと背後に、さっきまで無かった気配を感じた。



「……」



 ヒルダは額に汗を滲ませながら振り向く。

 すると、突風を巻き起こしたと思しき人物がそこに立っていた。



 ラデス帝国の兵服に銀色の鉄仮面――。



 その姿にヒルダは見覚えがある。



「……!!」



 忘れるはずもない。

 彼女は森の西側にある河原で、彼と一度対峙している。



 素早い身のこなし。

 そして、その男によって何人かの兵士の首が跳ねられたことも。



 ヒルダの中に緊張が走る。



「……魔王代理」



 彼女の矛を持つ手が強く握り締められた。



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