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165話 絶対防御の対策

※前回までのあらすじ


 勇者の対応策を皆で練った!


 勇者ヒルダから回復スキルに必要と思われる聖具を奪う為、皆でアイデア出しを行った。



 結果、その中で使えそうなものを組み合わせて、とある結論が導き出された。



「じゃあ、ヒルダ対策はそれで行こうか」

「承知致しました」



 アイルが皆を代表して答えた。



「あとは勇者レオの対策だな」

「ボウギョがスゴイんだったよね?」

「ああ、じゃあこれを見てもらおうか」



 プゥルゥに言われて、俺は勇者レオの映像を再生した。

 画面に映し出されたのは、アイルが尻尾を振り回した際、彼に防がれた場面。



 盾を構えたレオの前にまるで見えない壁でもあるかのように、攻撃を弾いているのが分かる。



「これを見た感じ、本人に攻撃が通らないのはもちろん、結構な範囲をカバー出来てるように思えるんだ」

「そうですね。実際に攻撃した私の感覚では前列にいた兵士、三十人程度はその防御スキルの内側に守られていたように思えます」



 アイルが自身の経験から語ってくれた。



 一人の兵士が直立していた場合、その体の幅は六十センチ程度。

 それが三十人だから、単純に考えても約二十メートルの幅は防御出来ている。



 しかもそれは一センチも間を空けずに密集していた場合だし、実際には騎竜に乗っている状態なので他者と間隔は一メートル以上空いている。



 なので多めに見積もって、幅五十メートルくらいは守れると思っておいていいかもしれない。



 アイルの背後にいた兵士には攻撃が通った為、全ての味方に防御が働くわけでもない。

 だから普通に大きな見えない壁と考えていいだろう。



 ただ、不可視が故にその形状が分からない。



 今、言ったように壁のような形なのか?

 半球状なのか?

 それとも全方位を守れる球体なのか?



 そればかりは映像とアイルの話では判断が付かなかった。



 本当にどんな攻撃も防いでしまうのか?

 それとも、防御力を上回る力でなら通るのか?



 試してみないことには分からないが、ともかく現状では、この防御力でゴリ押しされかねない。

 しかも多くの兵力を維持したまま。



 非常に厄介なスキルなのだが……。



「ふっふっふっ」



 俺は自分でも分かるくらい楽しそうに笑った。



「魔王様? どうなさいました?」



 唐突に笑みを浮かべた俺を、アイルが不思議そうに見ていた。



「実はもう、レオに関しては対策案が思い付いてしまったんだ」

「!」



 瞬足くんを除き、その場にいた全員が目を見張った。

 そしてすぐにアイルが賞賛の言葉を贈ってくる。



「さすがは魔王様! あの防御スキルを破る方法をもう閃きになるとは!」

「破るのとはちょっと違うんだけどね」

「?」



 ん? となる彼女だったが、俺の発言に興味津々のようだ。



「とにかくレオには走ってもらいたいんだ」

「走る……ですか?」



「今ある罠を駆使して、彼が走り回らなくてはならない状況を作り出して欲しいんだよね」



 と、そこでキャスパーが掌で拳を打つ。



「分かりましたぞ! 勇者を疲弊させ、スキルの使用が鈍った隙を突くという戦法ではないですか?」

「半分正解かな」

「うーむ、左様ですか……」



 キャスパーは難しい顔をして、更に熟考していた。



「まあ、結果は見てのお楽しみってことで。ともかく勇者が侵入してくる前に、死霊の森を走り回らせるような仕掛けを皆で手分けして設置して欲しいんだ。俺一人じゃ時間が掛かってしまうからね」

「承知致しました」



 アイルはそう返答したが……。



「ですが、罠は魔王様しかお作りになれない。私達はどうやってお手伝いを?」

「俺がどんどん罠を合成して行くから、それをゴーレム達に運ばせるといい」

「なるほど」



「配置のセンスは……」



 アイルに任せる……と言いそうになって止めた。

 自分から罠に嵌まりに行く彼女にやらせると、とんでもないことになりそうなので。



「アイルは皆の指揮を取ってくれ」

「はい、分かりました」



 そこで彼女は前に出てきて、参謀らしく皆の統制を取り出す。



「では皆さん、担当箇所を割り振ります」

「「「「「はーい」」」」」



 配下達は、ぞろぞろとアイルの周りに集まり出す。



 その中にリリアの姿を見つけた俺は、彼女に声を掛けた。



「リリア、君には別の任務を与える」

「えっ? 私だけ別の仕事ですか?」



 彼女は長い耳をフルルと震わせ、目を丸くしていた。



「リリアには皆が罠を設置し終えるまで、勇者侵攻の時間稼ぎをしてもらいたいんだ」

「そ、そんな大役……。任せてもらえるのは嬉しいんですけど、私一人で大丈夫ですか?」



 不安が表情に滲み出ていた。



「大丈夫だと思うよ」

「?」



「リリアの弓と、新しく備わったその視力があればね」

「あ……」



 それだけ言ってやると、彼女は理解してくれたようだった。




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