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128話 決起

※ラデス皇帝視点の回です。

《ラデス皇帝視点》




「陛下っ!」



 男の声でラデス皇帝は目を覚ました。



 見れば眼前に不安げな表情で覗き込む近衛兵の顔があった。



 まだ意識が朦朧としている感覚は抜け切らないが、どうやらベッドに寝かされていることは理解出来る。



 その事実を認めると、途端に先程の出来事が脳裏に蘇った。



 ――そうか……私はあの……魔王代理とかいう男に……。



「くっ……」



 まだ鈍さの残る体に鞭を打って半身を起こす。



「陛下、まだお起きになられては……」

「よい」



 吐き捨てて、すぐに室内に目を向ける。



 だが、そこに魔王代理の姿は無い。

 代わりに数人の兵士と召使い達がベッドの周りを囲んでいた。



「奴はどこへ行った?」



 先程の兵士に尋ねる。



「奴……と申しますと? 私がここに来た時には既に誰もおりませんでしたが……」



 皇帝は歯噛みする。



 ――ラウラの姿も無い……。



「ラウラはどうした?」

「姫様ですか……? 私は存じておりませんが……お連れ致しましょうか?」



「ああ、居たらな」

「?」



 兵士は不思議そうな目を返した。



 ――ラウラも奴と共に行ったのか?



 ラウラは自分に対し、これまで反抗的な態度を見せることは何度かあった。

 だが、ここまではっきりと敵意を示すことは無かった。



 ――勇者というだけで放置してきたが、そろそろ潮時か……。



「どれぐらいの時間が経っている?」



「はっ、私が陛下を発見してから一時間も経っておりません」



 幸い、失神していたのは数時間だけのようだ。



 ――しかし、あの魔王代理とかいう男……。僅かに対峙しただけだったが、底知れぬ力を感じた。それでいて気配を全く感じない……。



 城内の最奥部まで気付かれずに侵入出来るような能力。

 全ての魔物が同様の力を有しているのなら、城は丸裸も同然だ。



 とても太刀打ち出来るような相手ではない。



 しかし、奴は魔王〝代理〟と名乗った。

 ということは、魔王の名を代わりに名乗れるほどの力を持っているということだ。



 ならば魔王の配下で奴が一番の強者である可能性が高い。

 それは逆に他の魔物は奴より劣るということになる。



 ――奴が一番の強者であるならば、我が帝国にも勝機はあるやもしれぬな……。魔王代理が告げてきた言葉が我々に対する最後通告というのならば、ここは……。



 我々に出来る事は限られている。



 殻に閉じ籠もり怯え続けるか――、

 魔を攻め滅ぼし富を手にするか。



 その答えは考えるまでもない。



 だが、抜かりは無いようにしなくてはならない。



 皇帝は側にいる近衛兵に告げる。



「すぐに帝都にいる全ての騎士隊を城内広場に集めよ。無論、勇者もな」



「ぜ、全隊ですか?」

「そうだ」



 兵士は目を丸くした。



 全ての騎士隊が一堂に会する時は何らかの式典か、勅命が下される時だ。

 ただ事ではないと悟ったのだろう。



「はっ!」



 兵士に選択の余地は無い。

 彼は力強く敬礼をすると、命を全うする為、部屋を出て行った。



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