表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

120/239

120話 侵入計画

※前回までのあらすじ


 エルフ達が連行されてゆく姿を見た!


「見せしめ……? なぜ……?」



 リリアは蒼白の面差しで俺のことを見てきた。

 足が震えている。



 彼女がそうなるのも分かる。



 そもそも彼女が俺に倒されにやってきたのも、人質になっているエルフの村の皆を解放する為だったからだ。



 それに――まだ、勇者リアの死がラデスに伝わっていないとはいえ、エルフ達に対するこの仕打ちが予想外だったというのもある。



 なぜ、このようなことになってしまっているのか?



 一連のリリアの行動に対するラデスの反応はいくつか考えられる。



 一つは、魔王を倒しに行ってくるとメッセージを残すも、仲間を見捨て一人逃亡を謀ったと思われていること。



 もう一つは、リリアが自暴自棄になり、死を覚悟で単身魔王城へ突っ込んで行ったのでは? と思われていることだ。



 これはリリアが計画していたものに近い結果。

 彼女のスキルや能力をラデス側が把握しているが故に至る考えだ。



 他にも色々考えられるが……。



 なんにせよ、エルフ達を拘束する理由には繋がらない。

 リリアが行動を開始した時点で、既に人質としての効力を失っているからだ。



 となると何の為に? という疑問が湧いてくる。



 考えられるのは他の勇者に対して、勝手な行動を起こすことへの戒めに近いのかもしれない。



 だから、今から勇者リアの死を伝えたところで、エルフ達への対応は変わらないと思う。



 でも、もしかしたら……。



 表に現れているものだけでは分からない、ラデスの内部だけに秘匿されている他の理由があるかもしれない。



 戒めと言うのなら、そもそも、これだけ多くのエルフを一度に拘束する必要も無い。

 家を焼き払ったり、近しい者を処刑したりする方がずっと効率がいいはずだからだ。



 見せしめと考えるのは早計か……。



「他にも何かあるのかもしれない。その辺も探りつつ、彼らを救出しよう」



 すると彼女は驚いたように目を見張った。



「えっ……助けて下さるんですかっ?」

「当たり前でしょ。配下の者が困っている時に手を差し伸べるのが統べる者の務めだからね」



「魔王様……」



 そこでリリアはうるうると瞳を潤ませた。



 うむ……我ながら、なかなかの統率者らしい台詞。



 俺はちょっぴり自己陶酔しながら、彼女の頭を軽くポンポンと叩く。



「その為にも瞬足くんの侵入を手伝ってくれない? ラデスについてはリリアが一番詳しいんだし」

「もちろんです! 全力でお手伝い致します!」



「ああ、頼むよ」



 どのみち当初から侵入することには変わらないのでやる事は同じだ。



「で、リリアは以前、西門の警備が手薄と言ってたよね?」



「ええ、そちら側には大きな街道が無いので。でも、人通りが少ないというだけで、警備兵はそれなりに配置されています。いや、寧ろ兵の数は他の門より多いです。何しろ敵対する隣国、リゼル王国の方角に一番近い門ですから」



「ダメじゃん! それのどこが手薄なのさ」



 そこでリリアはニタァと笑う。



「ぬふふ……それはですね。逆に兵が多すぎるが故の弊害と言いますか……」



 彼女が言うには、あまりに多くの警備兵が配置されているせいで、中には、



「俺一人、サボってても分からないんじゃね?」



 というふうに考える奴が結構いるんだとか。

 そこが抜け穴になったりするらしい。



 元々、そこに居たことがある彼女だからこそ得られた情報。



「なるほど、なら瞬足くんを西門側へ移動させよう」



 とりあえず、その案を採用し、闇に紛れやすい夜を待って、瞬足くんをそこへ向かわせた。



          ◇



「めっちゃ、いるじゃん!」



 西門前の映像を見た俺の第一声はそれだった。



 実際、門の前には十人くらいの兵士が待機していた。

 門の両端には塔が建っていて、その上から監視している者もいる。

 しかも門は常時閉ざされたままの状態だった。



「これ……無理そうじゃない?」



 さっきの正門(南門)の方がまだマシな気がする。



「そんなことないですよ。ほら、ここを見て下さい」



 リリアがやや北寄りにある石壁の上を指差す。



 そこには兵士が等間隔に立っていて、上から見下ろすように監視の目を光らせていた。

 彼女はその内の一人に着目したようだ。



 リリアが指摘するその兵士にカメラ映像を寄せて行くと――、



 警備兵の一人がコックリコックリと舟を漕いでいた。



 まさかの居眠り!?



 彼女の言う通りだった。



 とはいえ、あの兵士の隙を突くにしろ、近くにいる他の兵士にすぐにバレてしまいそうだ。

 それにあの石壁の高さ。あれの上にどうやって登るかも問題だ。



 瞬足くんが忍者みたいに身軽ならいいのに……。



 ん……身軽?



 そこで俺は、瞬足くんが初めてお披露目された時のことを思い出す。



 そういえば瞬足くんて……頭で想像出来ることは大体実行可能なんじゃなかったっけ?



 あの時も俺が命令した〝空を飛びながら三回まわってピヨピヨ〟なんていう無茶な指示もちゃんとこなしていたし。



 ってことは……あの壁も登れそうな気がするぞ。

 でも、さすがに忍者みたいになれ! っていう命令は無理そうだから、出来るだけ音を立てないよう指示を出そう。



 とはいえ、死人である瞬足くんには人の気配が端から無い。その辺が役に立ちそうだけど。



 あと問題なのは、目標の近くにいる別の兵士の存在。

 三十メートルくらいの間隔で立ってるから両隣には確実にバレそうだ。



 ターゲットと合わせて三人の兵士を一瞬にして無力化する方法が必要だ。



 素早さに不安は無い。

 彼の速さを超えるものは、そうそういないだろうし。



 一瞬で仕留めてしまう方法があるが、それだとそのあとがマズいだろう。

 死体が出た時点ですぐに騒ぎが広がってしまう。



 となると……()()を使うしかないか。



 俺は瞬足くんに命令する。



 ドチャッ



 それで彼は背負っていた麻袋を足元に降ろした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ