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116話 七人の勇者

※勇者側視点です。


〈勇者側視点〉




 ラデス帝国から北東に広がる広大な平原。



 そこを七つの影が進んでいた。



 ラデスの勇者達である。



 全員が十代後半から二十代前半の青年達。

 皆、白銀の装備に身を包み、各々の聖具を手にしている。



 彼らが歩みを進める中、一番後ろを行く筋骨隆々の勇者が愚痴を漏らした。



「ああっクソっ! 何で歩かなきゃなんねぇんだよ」



 すると先頭を行っていた赤髪の勇者が苛立った様子で答える。



「仕方がねえだろ。分かってることをいちいち聞くなよ」



 魔王城までは遠い。

 その距離を彼らが馬も使わず進む理由は、魔王城から放出されてる気にあった。

 馬が怖じ気づいて進まないのだ。



「でもよ、言いたくもなるだろ?」

「まあな」



 二人の会話に他の五人の勇者も同意の表情を浮かべる。



「そういや馬のビビりで思い出したが、あのリアとかいうエルフの勇者、ビビりの癖にイキって独断で先行したらしいじゃないか。何考えてんだ? あいつ碌な攻撃スキル持って無かっただろ」



「ビビりが過ぎて頭がおかしくなったんじゃないか?」

「ははっ、そうに違いない!」



 彼らが嘲笑すると、他の勇者もそれに同調して笑う。



「ともあれ、サクッと魔王をぶっ倒して、一生分の報奨でももらおうぜ」



 赤髪の勇者がそう言うと、全員が「おうよ」と呼応した。



 彼らがやる気を見せ、足取りも心なしか軽くなった時だった。



「ん? なんだ……ありゃ」



 筋肉勇者が何かに気付いて前方を指差した。



 七人の視線がそこへ向けられる。



 地平の彼方で土煙のようなものが上がっていたのだ。



 赤髪の勇者は、その様子を呆然と見つめながら呟く。



「何かが、こっちに向かってくる……?」



 しかも、物凄いスピードで。



 ここにいた全員が、それを理解した直後だ。




 バヒュゥゥゥゥゥゥンッ




「!?」



 彼らの真横を何者かが、目にも留まらぬ速さで駆け抜けたのだ。



 しかも少し遅れて、辺りに突風が巻き起こる。



「ぬわっ!?」

「おわっ!?」

「いっ!?」

「うっ!?」

「ひっ!?」

「……!?」

「っ!?」



 それぞれが衝撃で吹き飛ばされないように身を守る。



「な……なんだったんだ……あれは……」



 赤髪の勇者が後方を見遣るが、駆け抜けた存在はもう遙か彼方の地平線に消えて行こうとしていた。



「全く見えなかったぜ……」



 筋肉勇者も今起きた出来事に唖然としていた。



 そんな刹那だ。



「おい!! あれっ!」



 誰か他の勇者が叫んだ。



 声の方へ全員が振り向く。

 それは謎の存在がやってきた方向だ。



「なっ……!?」



 そこで彼らは、上空を見上げたまま硬直してしまった。



 空から真っ赤に燃えた火の玉が落下してきていたのだ。



 どうやらそれは、先程駆け抜けて行った高速物体を追い掛けているようだった。



 だが――、



 火の玉は追い掛ける存在が速すぎるあまり、追尾仕切れず、ついにはこの場で地上に激突しようとしていた。



 しかもそれは不幸な事に、今、勇者達が立っているこの場所だったのだ。



 何がどうして、こうなったのか?



 彼らに思考する時間も、逃げる時間も、もう残されてはいなかった。



「ちょっ……まっ……」



 全員の顔が恐怖に引き攣る。



 直後――、




 チュドォォォォォォォォォンッ




 火の玉が地上を穿った。



 真っ赤な爆炎が上がり、勇者達の身は欠片も残らず水蒸気となって消えた。





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