表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

102/239

102話 リリア

※リリア視点の回です。



〈リリア視点〉




 リリアは魔王様の部屋で色々なことを聞かれた。



 故郷の事とか、ラデスのこととか、リリア自身のこととか。



 それも終わり、今は与えられた部屋である第五階層の広間にいた。

 部屋の真ん中にイスを置き、そこでポカーンと座っている。



「それにしても広いなあ……」



 自分の声が広間に反響する。



 ――元勇者である私を魔王城の中にまで引き入れて、こんなに大きな部屋まで与えて下さる。どうしてそこまでしてくれるんだろう?



 リリアはここに至るまでの出来事を改めて思い返してみる。



 とにかく死霊の森の周囲を取り囲むゴーレムの数が尋常じゃなかった。

 数の暴力というか、あれだけの数のゴーレムが一斉に襲い掛かってきたら、どんな勇者も一溜まりも無いと思う。



 罠も数え切れないほどの量が仕掛けられていた。少しでも踏み間違えれば、何らかの罠に嵌まる。それぐらい大量。



 ――あと……無数のバナーネの皮が落ちてたけど、あれってなんの意味があったんだろう?? なんか危険な感じはしたけど……。



 バナーネの意味はちょっと分からないが、リリアが隠密(ステルス)感知(パーセプション)のスキルを持っていなかったら、魔王城に辿り着く前に瞬殺だっただろう。



 それで――魔王城に着いたら着いたで、そこからも驚きの連続だった。



 とにもかくにもリリアには、魔王に一矢報いたという結果が必要だった。

 ラデスに〝ちゃんとやる事やった上で死んだ〟という事実が残らないといけなかったから。



 なので、城門前で「滅びを届けに来ましたー」と挑発っぽいことを叫んでしまったのだ。



 ――今を思えば、よくそれで魔王様は城門を開けてくれたと思う。



 それでなんとか中に入れたのだが、そこでも更に驚かされることになる。

 なんと、魔王様がリリアの話に耳を傾けてくれたのだ。



 中に入ったら即、殺される。そう覚悟していたのでびっくりした。

 まさか魔王様に対して身の上話をするとは思ってもみなかったのだから。



 自分を殺せるタイミングなんていくらでもあったのに、わざわざ試すようなことをして……。挙げ句には、魔王城に迎え入れてくれた。



 ――どうしてそこまでしてくれるんだろう?



 考えは最初の疑問に立ち戻る。



 ――私の持ってるスキルに利用価値があるから?



 リリアはすぐに首を横に振る。



 ――それだけじゃ理由にならない。元勇者だった者を側に置く方が、ずっとリスクが高いし。じゃあ……、



 と、別の理由を考える。



 ――善意?



 いや、配下の者達を危険に晒してまでする事ではないし、そんなに甘い人じゃない。



 ――だって、瞬足くん……だったかな? その人も元勇者だったみたいだけど、彼への処置の仕方を見ればそうだってことが分かる



 自分達に害を成す敵には容赦はしない。

 けれど、そうでない者には……。



 リリアはファイアトラップを踏んだ時の感触を思い起こす。



 覚悟を決めていたというのに、鏡を踏んだ瞬間、足先から恐怖が――、

 まるで燃え広がる炎のように、体全体へ伝播してゆく感覚を覚えた。



 膝から下がガクガクと震え、全ての力が抜けてゆく。

 業火に焼かれる自分の姿が克明に脳裏に浮かぶ。



 しかし、実際には罠は発動せず、リリアが炎に包まれることはなかった。



 そう――、



 これは助けてもらった命なのだ。

 魔王様の優しさによって。



 玉座の間で初めて、魔王様と顔を合わせた時のことを思い出す。



 確かに、玉座に座る彼からは魔を統べる者の風格と威厳を感じた。

 しかし、その端正な顔立ちの中には、自分が想像していた魔王とは違うものが存在していた。



 ――彼は底なし沼に沈んでゆく私を救い上げてくれた人。



 だから決めたのだ。



 二度目の人生は魔王様の為に尽くすのだと。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ