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10話 水源を探そう

※前回までのあらすじ


 大浴場を作ることになった!


 ダンジョン内に大浴場を作るということは決まったが、実際に入る為にはお湯が必要だ。



 というか、この世界に水道があるとは思えないので、お湯以前に大量の水が確保出来る環境を整えなくちゃならない。



「ねえアイル、この城の水場はどこ? やっぱり井戸とか?」



「井戸? そのようなものはこの城には御座いませんが……」

「え……無いって……この城の皆は水が必要な時、どうしてるの?」



「飲み水ですか? こちらです」



 そう言って彼女が連れて行ってくれたのはジメっとした感じの小部屋。

 その隅に水瓶らしきものが置いてあった。



「定期的に城の西を流れる川で水を汲み、ここに溜めております」



 説明された水瓶は表面に苔がびっしり生えていて、中の水も藻のようなものが浮かんでいて濁っていた。



 ワイルドすぎ!



 飲み水ですらこんな状態じゃ、本格的に水源の確保が難しくなってきたぞ……。

 聞くところによると、その川とやらも距離があるみたいだし……。



 とにかく敷地内を地下水脈に当たるまで掘ってみようか?

 しかし、当てもなく掘るのも効率が悪い。

 どうしよう……。



 そんなふうに悩んでいると、ボヨンボヨンという音が近付いてくる。



「どうかしたの?」



 俺の心の声を知ってか知らずか、プゥルゥがそう尋ねてきた。

 そこで、水脈について話してみると、



「それならボク、分かるよ」



 と、あっさり言われてしまった。



「本当に?」

「うん、ボクこんなミズみたいなカラダだから、ナカマをみつけるみたいなカンジですぐわかるんだ」



 おお……それは願ったり叶ったり。



「じゃあ頼まれてくれるかな?」

「もちろんだよ」



 プゥルゥは体でドーナツみたいな丸の形を作って答えてくれた。



          ◇



 そんな訳で俺は、快諾してくれたプゥルゥと共に掘り途中のダンジョンへと降りた。

 プゥルゥが言うには、その辺りに水脈を感じるらしいのだ。



「ここ、ここ。このマシタにおおきなながれをカンジるよ」



 プゥルゥは水脈があると思しき地面の上で跳ねて見せる。



 そこは俺が掘り進めた空間の丁度、ど真ん中の辺りだ。

 このままそこを掘ったら、ダンジョンの入り口にいきなり井戸が出来ることになる。



 そんなダンジョン、ゲームでも見たこと無いけど、その状況はともかく置いといて、掘ろう。



「深さはどれくらいか分かる?」

「けっこう、ふかいよ」



 アバウトな答えだなー。



 まあ、どのみちダンジョンらしく多くの階層を作る予定だったから、結構深く掘るつもりではあったけど、今はこの場所だけピンポイントで掘る必要がありそうだ。



「とりあえず掘るだけ掘ってみようか」



 俺は右手に意識を持って行くと、強欲の牙(グリーディファング)で穴を掘り始める。



 あっという間に五メートル、十メートル掘れるが、あんまり深くなると戻るのが大変なので螺旋階段状に掘り進めて行く。



「まおうさま、すごい、すごい!」



 俺の後ろに付いて螺旋階段を降りてくるプゥルゥが、歓喜の声を上げているのが聞こえてくる。



 掘ってるだけで褒められるのは悪い気はしない。

 そのまま調子に乗って掘り続ける。



 数分後。



 かれこれ数百メートルは掘ったと思うが、未だ水の気配は無い。

 もうすぐ一千メートルを越えるんじゃないかな……。



 周囲の土も湿った様子が感じられないし……。

 本当にここで出るんだろうか?



 不安に感じながらも、一旦休憩する。



「ふぅ……なかなか出ないね」

「まおうさま、もうすこしだよ。ボクわかる」

「……そう?」



 そう言われると、もう少し頑張ってみようという気がしてくる。



 螺旋状に掘られた階段を見上げると、壁掛け燭台の明かりが地上に向かって繋がっているのが見える。



 これだけの量を掘ってきたので、俺の中のアイテムボックスは大量の素材で埋まっていた。

 ほとんどが、ただの土だけど、中には珍しいものもあった気がする。

 気がする――というのは、掘ることに集中していたので、ちゃんと確認してないから。



 戻ったらあとでゆっくり見てみよう。



 それにしても暑い。

 こんな空気の流れの無い、狭い場所なら当然のことだが、ちょっとキツいものがある。

 ダンジョンの下層に部屋を作る時は、空調のことを考えないといけないな。



「まおうさま、ダイジョウブ?」



 プゥルゥは俺が暑さに参っていることに気が付いたのか、心配して声を掛けてくれる。



「ああ、これくらい大丈夫さ」



 言いながら礼の意味も込めてプゥルゥの頭(?)を撫でた。

 すると、



「冷たっ!?」



 プゥルゥの体は丁度、ジェル状の冷却シート……いわゆるヒエ○タみたいで、とてもひんやりしていることに気が付いた。



「何これ、冷たくて気持ちいいじゃん。ちょっと、しばらくの間、くっついてていい?」

「えっ」



 答えも聞かぬまま俺はプゥルゥの体に抱き付く。

 それはまるで大きなゼリーにダイブしたような感覚。



「はあぁ……気持ちいいぃ……癒やされるぅぅ……」



 こんな便利な体をしているなら、もっと早くに言ってくれればいいのに。

 ああ、それにしても気持ちいい。



 そんなふうに涼んでいると、なんだかプゥルゥの様子がおかしいことに気が付く。



「あっ……あの……まおうさま……」

「ん? どうした? どこか苦しかった?」



 強く抱き付き過ぎてしまっただろうか?

 心配して耳を傾ける。



「あの……ボク……いちおう……メスなんだけど……」

「……へ?」



 そう言うと、プゥルゥは青い体をピンク色に染め上げた。



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