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女盗賊ミランと盗賊団の黒蛇  作者: 三千
第七章 国主の兄と翼人の妹
31/54

三十


「メナス。お前に任せておけば良いとは思うのだが……メイファンの動向はきちんと把握しているのだろうな?」


双子の用心棒ルイとライをひと時ばか退出させ、リンドバルクは頭を垂れるメナスに向かって問うた。


「はい、今はメイファンに動きはありません。ミランがそれほど遠くに離れていないのでしょう。ティア様がご一緒ですので、ミランも無理はできぬはずです」


「そうか……なら良い。メナス、ミランはどこへ向かうと思う? 自分の隠れ家だろうか?」


「私がミランならば、自分の隠れ家には向かわないでしょう」


「メイファンに嗅ぎつけられる、か」


「はい。ミランは孤高の女盗賊として名を知られています。仲間も限られており、少人数で移動するのでその動向も掴みにくい」


「ああ、あの竜族の男か」


「はい。主にあの男とペアを組んで仕事をしているようです。無論、世間の者はミランがどこに居を得ているのかも、知ってはおりません。そんな完全で完璧な隠れ家を、メイファンとリンドバルク様の二方から追われる身となった今、手放すことになるような真似はしないでしょう」


「……二方から、と言ったか?」


リンドバルクがぎろ、と強い眼差しをメナスに向けた。その睨みでメナスの鉄面皮も崩れるかと思いきや、メナスは目を細めただけだった。


「何もするな、ミランに任せろ、と言わなかったか?」


「仰る通り、護衛も用心棒もつけてはおりません。ただ、何かあってからでは遅いと、動向だけは耳に入れております」


「……そうか。なら良い。メナスよ、お前は先回りが得意なようだが、あまり考えが過ぎてしまうと、回った先が見当違いの場所だった、ということにもなりかねんぞ」


「肝に命じます」


メナスは軽く頭を下げると、退席し、部屋を後にした。ドアの両脇にはルイとライが微動だにせず、立っている。


「メナス殿、話は終わりましたか?」


ルイが訊く。


「ああ。だが、まだ時間は掛かりそうだ」


曖昧な返事で、双子を翻弄する。


(国政もあるというのに、まったく……こと妹君に関しては、いつも本当に面倒臭いことになる)


思った通り、眉をひそめた二人は顔を見合わせると、次にはライが口を開いた。


「ミランはまだティア様を連れて?」


さも意地悪そうに、メナスが言い放つ。


「なんだ、お前たちもミランの尻を追いかけたいのか?」


「……い、いえ、俺たちは別に、……ただ罪を犯した男を牢から出すとは、と、」


「いいのだよ、ガナシュに任せておけば。あれは、お前たちと違って、やると言ったからには必ずやり遂げる男だからな」


ただ、それが皮肉であり意地悪な意を含む言葉であるという自覚が、メナスにはあった。


予想通り、双子は押し黙り、そしてバツの悪そうな顔をした。


リンドバルクが暴漢に襲われた時、ミランに助けてもらったという事実が、まだ双子の中の根っこのところで、ぶすぶすとくすぶり続けているからだ。


(これで、この双子はリンドバルク様の前では、その口を一層、噤むだろう)


人心を掌握することに長けた男は、鉄面皮を貼り付けたまま、その場を離れていった。



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