十四
「あー‼︎ お前、よくも、ミランにキスしたなっっ‼︎」
モニが大声で叫びながら、閉じ込められている籠を揺らした。
「あ、あ、あ、やめろって、やめろってばっっっ‼︎」
籠を揺らし過ぎて、ベッドの上でころんと一回転した。お陰で、ミランとルォレンの二人の姿が見えない。ただ、荒い息と会話だけは、大きな耳でキャッチしている。
「ミラン、俺はお前をずっと探していた」
「私はお前など、忘れていた」
「そんなつれないことを言わないでくれ」
「離せ、私に触るなっっ」
「そうだよっっ、ミランに触るなよっっ。ボクを本気で怒らせたいのか‼︎」
中でモニがバタバタと暴れ、籠がさらに回って、二人の姿が見えた。
「こらあ‼︎ ミランに触るなって言ってんのっっ‼︎」
モニがぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる。
ついにルォレンは、白旗を上げた。
「うるさいな、話もろくにできやしないぞ。こいつ処分するか」
籠に手を伸ばすと、ミランがその手首をすかさず握った。
「やめろ」
「なら、黙らせろ」
ミランが、眉根を寄せた。
「モニ、静かにしていてくれ」
「でもミランっっ」
「お願いだ」
「……わかったよ」
ぶすっとした顔で、モニは頬を膨らましたりへこませたりした。
「ミラン、俺はメイファンの白蛇に連れてこられて、この盗賊団に入った。お前と離れて寂しかったが、今では良かったと思ってる。お前に頼ってばかりのひ弱な俺では、お前を幸せにすることなど到底できなかったからだ」
「…………」
「今の俺ならできる。お前を守ることも、そしてお前を、」
「ルォレン、私は誰かに守ってもらわなくとも、自分の力だけで生きていける。お前など、必要ない」
「ミラン、」
「裏切っておいて、今さらなんだっ‼︎ 私を置き去りにして逃げたお前を、私は決して許しはしない」
ルォレンの唇が歪む。ぎりっと歯の擦れる音がして、モニの耳を刺激した。
「お前が去って、私がどんな思いでここまできたのか、知らないだろう」
「ミラン、」
「心の支えだった」
「ミラン、俺だって、」
「お前は違うっ‼︎」
ミランは、緩んだルォレンの手から逃れて、ベッドの上に立ち膝で立つと、ルォレンの胸ぐらを両手で掴んだ。ぐいっと締め上げる。
「……お前を恨んでいる」
ルォレンが唇を噛む。
「お前を恨んでいるっっっ」
ミランが、ハアハアと深く息をつくと、胸ぐらを掴んでいた手を離し、そして後ろへと退いた。
「私を捉えるために翼人の姫君を誘拐したのだろう。だったら、もう良いはずだ。彼女を逃せ」
「それはできない」
「こいつら、あの娘を売り飛ばすつもりだよっ‼︎ つ、翼を、は、剥ぐとか、言ってたんだ……うええぇ」
モニの言葉で、ミランの形相が変わった。
「なら、代わりに私を売り飛ばせ」
「それもできない」
「ルォレンっっ‼︎」
その声で、ビクッとモニの籠が飛び上がった。
「お前を許さない。私の代わりに誰かを傷つけるというなら、お前を一生、許しはしない」
低く抑えたつもりではあったが、それは成功していない。ミランの声はかすかに震え、そして少しの弱さが含まれていた。
(翼人の姫君を助けなければ……)
それは、ミランが決して非情になりきれない、大盗賊として名を馳せる四人の中に入れないわけが、そこにあった。




