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最強の相棒 〜弱い僕と弱い君で異世界最強を目指す〜  作者: グラミヤマ
第一章 底辺ハンター
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第一章7『ハンターの二人』


 昼前のギルドはハンターの数が少ない。 それは今日も同じことで、ギルドの二階にはヒロトとベルカ、そしてルルカのパーティーだけが姿を見せていた。


 二人は朝早くからルルカらにハンターが持ち歩くべきアイテムの種類や、モンスターと対峙する際の心構え等を教わっていた。

 彼らから得られるものは知っておくだけでもアドバンテージになるアドバイスばかりで、ルルカたちのハンターとしての経験値がよく伺えた。


 その中で、一際ヒロトの興味を引いた話があった。


「世界を冒険?」


「そう、大型モンスターのせいで人類はろくに生存圏を拡大できないからねぇ。未知の自然を冒険し、開拓するのもハンターの仕事の一つ」


 ハスキーな声でそう話すのは、ルルカの隣に座る長髪の男『クリル・ミィナス』だ。 妙齢の女のような喋り方がとても似合う美青年だ。

 そんな彼はルルカのパーティーで唯一のメンバーらしく、その見た目故に街に出ると度々ハンターに声をかけられるとか。

 

「まぁ、モンスター討伐しかしてないハンターが圧倒的に多いけどな。俺達もそうだし」


「だから開拓に貢献したハンターはギルドから沢山お金がもらえるわ。その分危険もつきまとうから、下級ハンターじゃまず無理ね」


「そうですか……」


 ならば自分にはあまり関係の無い話か、と半ば聞き流すように相槌を打つ。

 冒険という言葉の響きに一瞬でも胸を躍らせたのがぬか喜びのように感じられ、今は余計に興味が薄らいでしまう。

 ベルカも冒険という単語に反応し、ピンクの髪に隠れた『長く尖った耳』を動かすが、それにヒロトは気づかない。

 

「それじゃあ僕達は依頼を受けて来ます。色々教えてくださってありがとうございました」


「おう、じゃあな」


「頑張りなさい、困ったらいつでも来なさいね」


 お礼を言って依頼書を手に席を立つ二人にルルカは心地よく励ましの言葉を送り、クリルも励ましの言葉を送ると共にヒロトに対して意味深にウインクする。

 ベルカはそれをはジト目で見続けるが、先に一階へと降りようとするヒロトに遅れまいとあとを追った。



 階段を降り、そのまま受付嬢が立っているカウンターへと直行して依頼書を提示する。


「依頼を受けに来ました」


「はいはぁい」


 血や汚れはタオルで綺麗に拭き取ったが未だボロボロな服を着ているヒロトを見て、受付嬢は哀れに思ったのか若干態度が軟化ししている様子だ。


 ヒロト達が受けたのは獣肉を調達してほしいという依頼である。

 依頼達成に必要な重さは『五百ミレ』と告げられ、ヒロトは専用の計測機を受付嬢から受け取る。


「ちゃあんとそれで重さを測るのよ? ちょろまかしたってすぐにバレて罰を受けてハンター辞めさせられて独房に入って拷問されて苦しんで殺されるんだから」


「罪と罰のバランス悪すぎないですか!?」


 流れるように吐かれた恐ろしい嘘にしっかりとツッコミを入れられるようになったのは、ひょっとすると彼の成長の内の一つかもしれない。

 恐れない心のかけら──とでも言おうか。


「ベルカ、行こうか」


「うんっ!」


 世界を冒険などといった大それたことはまだ彼にはできない。

 だが、小さな冒険を積み重ねることはできる。 例えば、もう一度扉を開いて平原へと向かうことだ。

 他のハンターからすれば当たり前かもしれない。 むしろ、笑ってしまうほどにちっぽけな勇気かもしれない。 だが、それが大事だ。

 小さな足でも、短い歩幅でも関係ない。 歩き続けられるものこそが『最強』と呼ばれるのだ。


 だから彼は歩みを進める。 癒えない傷を残したその手で、青扉を開いて。





─────────────────────


 



 

 今朝のアドバイスの中に、こんな言葉があった。

 ──『狩人たるもの、狩るべからず』。


 ルルカ曰く、これは自身の命を危険に晒してまでモンスターを狩ろうとするなというハンターの教訓らしい。

 当然だが、命のやり取りをする職業である以上毎日のようにハンターが命を散らしている。 その原因のほとんどが、自身とは不釣り合いなほどに強い敵は挑んだことにあるらしい。

 弱者である人間が強者であるモンスターに斬りかかるということは、やはりそういうことである。


「どうしたの、ヒロト?」


「今朝のルルカさんの言葉を思い出したんだ。 それで、ちょっとだけ考えちゃってさ」


 実力の伴わない勇気が連れてくるのはいつだって勝利ではない、不条理な現実だ。

 物語の英雄が苦難の果てに掴み取る華々しい結末など現実には起きるはずがなく、鋭い牙に惨たらしく引き裂かれるのがオチなのだと、ルルカは言うのだ。


 だからこそ、ヒロトは葛藤している。

 ルルカの言葉が頭の中で浮かぶたびに、自身の戦いの記憶が蘇るのだ。

 決死の思いで肉食モンスターを打ち倒したこと。 ベルカを救うために、暴漢の肉を食いちぎったことを。


 もし、あの日のヒロトが『狩人たるもの狩るべからず』という言葉に従っていたとすれば、どうなっていただろうか。

 モンスターに襲われた時点で、きっと食われて死んでいただろう。

 仮に上手く切り抜けられたとしても、ボロボロのベルカを見殺しにして、彼の善性は殺されてしまっていただろう。


 どちらにしても、今のヒロトがあるのは彼が『戦い続けた』からに他ならない。

 決して華々しい勝利ではなかったかもしれないが、それでも彼は勝ち続けたのだ。 そう、道を阻む敵を狩ろうとしたが故に。


「たぶん、たぶんだけどね」


「──?」


 掴んでいたリュックの背負い紐から手を離し、真剣な眼差しでベルカはこう続けた。


「ヒロトのやってきたことって、たぶんハンターとして……ううん、人としてすごく不器用だと思うの」


「不器、用……か」


「だけど、その不器用さが救ったものもあるでしょ? だから、ヒロトにはそれを忘れてほしくない。 たぶん、これからもっといろんなものを救える気がするから」


 ベルカの、心の底から溢れ出した言葉だった。

 自身の命を危険に晒し、それでも成し遂げたい何かがある。 とても損な生き方だと誰もが指をさして言うだろう。

 だが、そんな茨だらけの道を突き進むことができる者がいたならば、その使命は決して絶やしてはならない。


「人類とモンスターは争い続けてる。 この時代を変えるには、きっと『狩り続けるハンター』が必要なんだよ!」


「──狩り続ける、ハンター」


 時代というのはいつだってそうだ。 人によって形作られ、人によってそれが守られ続け、そして人によってひっくり返される。

 そこには必ず『意思』が存在し、それを持った者が現れてしまうと、もはや人でもモンスターでも、あるいは神ですらも止めることができない。


「……昔にいたんだ。 まだハンターなんていうものが存在しなくて、人類がモンスターに怯えていた時代に抗った人たちが」


 拳を胸に合わせ、微笑みながらベルカは語る。


「それは少年と少女。 誰もが恐れるモンスターの波に、たった二人で立ち向かっていくの。 戦えば戦うほど勝利を手にして、やがてはそれに感化された人たちが彼らの足跡を追っていく」


「なんかそれって──」


「ベルカとヒロトみたいだよね? フフッ」



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