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最強の相棒 〜弱い僕と弱い君で異世界最強を目指す〜  作者: グラミヤマ
第一章 底辺ハンター
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第一章2『ハンター登録』

 思っていたよりも早いスピードで進む竜車はグラグラと揺れてヒロトは少し気分が悪くなった。 少しでも風に当たって気分を紛らわそうと竜車から顔を出し、顔に風を当てて涼む。

 気持ちよさそうな顔をしているヒロトを横目にメリアは本を読む。


「メリアさん、それは?」


 静かに本に集中しているメリアにわざわざこのタイミングで本の内容を聞いてしまったヒロト。 あからさまに嫌そうな顔をするメリアに少し怯えたが、メリアはヒロトの問に答えた。


「英雄譚よ」


 そう言えるものかは怪しいが、自己紹介の時のように簡潔で、最低限のことしか話さないメリア。 ヒロトもメリアがどういう人なのかはある程度理解して、その受け答えの雑さにも慣れ、一度聞いてしまったものはしょうがないとして更に踏み入ったことをメリアに聞く。


「英雄譚が好きなんですか?」


「ええ」


 その一言だけで質問に答えたメリアの態度はヒロトの精神にダメージを負わせるのは容易い。 元々本を読んでいるところを邪魔しただけで、怒られていても完全に自分に非があるわけだと考えてそのまま黙って座る。


「着いたぞ。 ハンターの街、メルタリアだ」


 それを聞くとヒロトはまた竜車から顔を出し、大きな城壁とその門が見えた。 アドラ曰く門を通り抜けてすぐに街のハンター達が集うハンターズギルドがあるらしく、そこに竜車を停めるようだ。

 門にはイタリアの国家憲兵のような風貌の人が二人ほど立っていたが、なんの検問もなしにヒロトたちはその門をくぐり抜けることが出来た。 ハンターだから顔パスなのだろうか、そう考えるとこの人たちはすごい有名人なのだろうか、竜車が揺れる間ヒロトはずっとそんなことを考えていた。



 


 ハンターズギルドに着くと入口前に竜車が停まり、熱心に読書していたメリアは本を閉じて竜車から降りる。 そしてさっきまでぐっすり寝ていたアリスは今まで揺れていたのが急に止まったのと同時にハッと目を覚まし、メリアに続いて竜車を降りる。

 最後にヒロトが腰を上げ、降りるとそこにはかなりの大きさを誇る建物が建っていた。

 

「ハンターズギルド…………」


 これこそがハンターズギルド。 あれは何回建てだろうか、ヒロトが下から一行、窓のガラスを数えると総てその数はなんと八枚もあったのだ。

 しかしそれだけではない、今ヒロトが階数を数えた建物はギルドの一部に過ぎず、その建物を挟む二つの巨大な塔が天を貫いている。

 こんなに大きな建物が建てられるとは、一体ハンターというのはどれだけ偉大ですごい職業なのかとヒロトは思い知った。


「ふわぁ……!」


 ギルドの外観に見とれていると、そこへ赤色の鎧を着た、恐らくハンターであろう者がヒロトを横切り、建物へと入っていった。

 その鎧はただ赤いだけではなく、きっと何かの鱗だろうか、それを鉄か鋼の鎧の上から着せてガチガチのフル装備にしている。

 その姿がヒロトの目にはあまりにもかっこよく映り、見とれる対象が建物からそのハンターへと移り変わった。


「私達はここでやることがある。では君も今後はあのように危険な──」


「──あの!」


 別れ際に今日の出来事を注意しようとするアドラの言葉をヒロトは全力の大声で遮った。

 アドラは驚き、急に叫びだしたヒロトに少し引いてしまう。 そして一歩ほど体を後退させ、ヒロトに聞いた。


「どうしたんだ?」


「ハンターって、僕にもなれるんですか!?」









────────────────────────







 ハンターズギルドの二階、主にハンター達が食事を取ったり、酒を飲んだりして楽しむ一種の憩いの場として用いられる階であり、俗に言う集会所のようなものである。

 そこには今この瞬間も沢山のハンター達が集まっており、ガヤガヤと騒がしい効果音が付く程には賑わっている。 そしてその中にはヒロトとアドラの姿があった。


「それで……君はハンターになりたいのか?」


「えっと、あの…………はい」


 呆れるでもなく、バカにするでもなく、アドラは真顔でヒロトにそう聞いて、ヒロトもそれに頷く。


「どうしてそう思う?」


 真剣に、真面目にアドラはヒロトがハンターになりたい理由を聞く。 ギルドの二階に来る途中、ヒロトはアドラに言われたのだ。

 『簡単にはなれない』と。


 理由を聞かれたヒロトは一瞬答えに困り、少し吃るがすぐに答える。


「かっこいいな、って……」


 単純で、簡単で、一見ふざけているようなその理由にアドラは顔をしかめ、ため息をつく。

 アドラの顔を見たヒロトはこんな理由では怒られてしまうのではと、自分は変な答えを言ってしまったと少し後悔した。 ヒロトは顔を下に向けてしまい、両手を膝において、肩を狭くし、申し訳なさそうにしている。

 そしてその縮こまったヒロトの姿にアドラは苦笑いし、口を開く。


「来る途中にも言ったが、簡単になれるものではない。 生きる為に、命をかける仕事だ。」


「は、はい……」


「成り上がる者もいれば野垂れ死ぬ者もいるわけだ。 だから決してかっこいいだけではない。」


 淡々と、ハンターとはどういうものかを話していき、ヒロトの夢を潰していくアドラ。

 

(──でも、なりたいよ!)

 

 子供故の頑固さか、アドラにそう言われてもヒロトは「ハンター」を諦めることはなかった。

 それこそ彼は前の世界ではひ弱で、クラスではよくイジメの対象になることは必至であり、それ故に何か大きな夢を持つ余裕もなく、それを誰かと楽しく語ることも出来なかったのだ。

 だからこそヒロトは一目惚れした「ハンター」をどうしても諦めたくはなかったのだ。


「君がどのよう最期を迎えようとそれは君の選んだ道の結果であり、自己責任だ。 私達には関係ない。 だから君がどうしてもと言うなら、それを止める権利は私にはないがね」

 

「…………はい」


「登録なら一階のギルドカウンターだ。 せいぜい死なないようにな」


 そう言い残してアドラは上の階へと続く階段を上がり、ヒロトの前から姿を消した。

 なぜ彼女はこうも冷たくなったのか、ヒロトには理解ができないが、その理由は簡単である。 彼女はこんなひ弱な少年をわざわざ死地に送り込みたくなかったからだ。 しかし彼女にヒロトを止める権利はなく、悲しい、もしくは心に痛みでも感じているかのような表情でヒロトの前から消えたのだ。




 ヒロトは一階に下り、カウンターを探す。


「あった!」 


 入口の目の前にカウンターを見つけ、そこまで歩く。 カウンターの奥に緑と白が特徴的なメイド服のようなものを着ている人がおり、恐らくその人が受付嬢なのだろうと思ったヒロトは声をかける。


「あのぉ……」


「はぁい?」


「うぇっ……!」


 声をかけ、振り向いた受付嬢は非常に華奢で、姿勢がよくきっちりとしている。 ヒロトの目にとにかく綺麗に映ったが、その独特な、ねっとりとした返事に思わずヒロトは変な声が漏れてしまう。


「?」


「あっ、えっと……! ハンター登録に来ました!」


 その変な声で相手に与えてしまった不信感を慌てて取り繕い、自分がここに来た目的を伝える。

 

「かしこまりました。 では出身地での戦歴書をお願いします」


「はい……? ええっと、ないです…………」


 急に聞きなれない単語でそれが指す物を求められ、一瞬ドキッとするがしっかりとそれを持っていないと伝える。


「では訓練卒の方ですね。 それでしたら訓練証の方をお出し下さい」


「それもないです…………」


 受付嬢が求める物を出すことが出来ず、ヒロトはまた焦る。

 そしてよーく受付嬢を見てみると、さっきと何か態度が違う。出しているオーラは明らかに悪意が篭っているのだ。

 何も言えないままヒロトが立ち竦んでいると、受付嬢はため息をついた。


「────────はぁ」


「えっ?」


 ヒロトがハンターになりたいと伝えるや否や受付嬢はため息をつく、ヒロトはその意味がわからず、ただただ困惑するばかりである。

 ヒロトが黙っていると、受付嬢は口を開き、こう言った。


「あなた、舐めてるの?」


「あのっ…………!」


「モンスターの討伐実績もない、訓練学校での訓練の経験もない、そんな超が付く雑魚がハンターになりたいですって? 貴方、ハンターを舐めてるでしょ?」


 ため息をついた数秒後、受付嬢の口から飛び出してきたのは紛れもない罵倒だった。

 急な態度の変わりようにヒロトは驚き、それに伴いだんだんと怖くなっていき、まともに言葉を発することが出来なくなる。


「まぁ別に、死にたきゃ死にたいでいいけど? ほら、登録したからさっさと死ねば?」


「うわっ、痛っ…………!」


 そう言って受付嬢はカードのようなものとバックパックらしきものをヒロトの顔に投げつけ、カウンターの奥へと戻っていく。

 あんなに怒られるまでハンターというのは危ない職業なのかと、未だ惚れてはいるが今更ながら怖くもなってきた。

 ヒロトは投げつけられたカードを手に取り、こう言った。









「というか、日本語通じるんだ…………?」




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