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第二次オンライン戦争とABS誕生

 二〇七〇年、ビットソルジャーがワールドを侵攻するようになると、瞬く間に、多くのアクセスポイントを獲得した。これまでは、簡単には侵入できなかったエリアにも難なく入っていき、世界各国で自国内のワールド調査も進んだ。

 まるでSF映画のようなワールドもあれば、おとぎ話に出てくるようなファンタジーなワールドまで、とにかく多種多様であり千差万別だった。

 いろいろとわかってくると、対応もしやすくなる。このころ、様々な人が様々な方法でワールドで何かをしようとした。ビットソルジャーを使って未踏の地に侵入し、そこで得た情報や資源などを持ち帰って、それを売るというビジネスを始める人が出てきた。

 それらを買って研究し、それを元にビットソルジャーを開発したり、支配下のワールドを整備したり様々だ。

 こういったビジネスで、様々なソフトウェアメーカーが参入したり、起業したりする者もいる。

 後にも大手のメーカーとなる「メスナー&リュッカー」や「ヘルマンストック」、他にも「B&B」「GALE」「トマ・リシェール」などがワールドに関連する事業を本格化させている。


 ウイルスによる攻撃も激しくなってはいるものの、この頃には優れたビットソルジャーのオペレーター(操縦者)が次々登場している。

 ジョージ・B・クインシーや、フレデリック・コープなどが大活躍した。



 二〇七〇年、三月四日。アメリカ人プログラマー、アンソニー・マクニールとエイドリアン・ブルックは、驚くべき技術を作り出し、世界中を驚かせた。

 彼らは「腕」を用意した。それも機械仕掛けではあるが、人間の腕とそっくりな動きをする腕を。人間のように肩が動き、肘が動き、手首はぐりぐりと回る。そして何より衝撃だったのが「手」だ。

 この手は、人間と同じように指が動き、握ったり広げたり、果てはその指を使って「あやとり」までやってみせた。


 このマクニールとブルックの「手」は、ビットファイターの進化の第一歩だった。これを機会にビットファイターの開発競争は激化した。

 米国のソフトウェアメーカー、ヘルマンストック社は、ソルジャーの下半身の動きで革新を巻き起こした。人間と同じような挙動で足を動かし、歩き、そして走った。エルンスト・クラウスが歩行脚を開発したとき以来の革新的な技術だった。これを腕にも応用し、全身を人間同様に動けるソルジャーが誕生するのも時間の問題だと、ヘルマンストックは声明を発表した。

 ヘルマンストックのCTO、スーザン・ジョイスは、――これはまだ、ほんの序の口です。我々は決して停滞しない。常に走り続けている――と演説し、多くの聴衆を沸かせた。

 米国の著名なプログラマーたちが、次々と壇上に姿を表す。ジョン・スペンサー、アンジェラ・サトクリフ、ジャクリーン・ボナー、アーノルド・クーパー、ジム・マクブライド。そして最後にグレッグ・ウィルソンが登場し、「マザー」に対して「宣戦布告」を行った。


 ドイツの雄、メスナー&リュッカー社は、ヘルマンストックの技術に驚愕し、追いつけ追い越せの大号令を発して、最新技術の開発を進めた。

 二〇七一年、アンソニー・マクニールは、メスナー&リュッカー社に入社し、現在に至る革新的な「兵士」を作り出し、世界に公開した。革新的な

 ――僕たちの、このソルジャーの動きに驚いたかい? ビットソルジャーよりも先進的なんだ。そう、まさに「アドヴァンス」なんだよ!

 この先進的なソルジャーは、メスナー&リュッカーから「AM1」という名称で大量に生産された。


 マクニールは、この自らが開発した新しいソルジャーを「アドヴァンスソルジャー」と呼んだ。

 しかし、現在ではこの名称では呼ばれていない。結局、「先進的」な「ビットソルジャー」と捉えられ、「アドヴァンスト・ビットソルジャー」と呼ばれるようになった。これが現在略されて「ABS」と言われている。後年、マクニールは――これはビットソルジャーではない。もっと革新的なものなんだ――と、ABSと呼ばれることに不満を漏らしている。


 二〇七二年。ヘルマンストック社が、米国メーカー初のABSを発表。この「HSー01」は、「AM1」と比べて、ジェネレーター出力が倍近いこともあり、世界中から驚きの声が上がった。対抗するべくメスナー&リュッカー社も「AM1」の改良及び、次期型の開発などでお互いに競い合った。

 また、GALE社なども資金力を武器に開発を進め、ABS開発競争に拍車が掛かった。

 世界中でABSの開発が、急速に進められていった。


 二〇七二年九月十二日。アメリカ合衆国はマザーに対して一斉攻撃を開始した。第二次オンライン戦争が勃発。マザーの本拠地と目されている「サウザンド・ピーク」へ、ABS部隊二百機が突撃した。幾らかの戦果を残したものの、広大なサウザンド・ピークはまだ未踏の地が多く、ウイルスの反撃が激しさを増してきたところで撤退した。

 同時に「レッドランド」「ストームバレー」「ディープ・フォレスト」などの難所の攻略も始まったが、どれも凶悪なまでに侵攻が困難で、一進一退のまま撤退に追い込まれた。

 しかし、攻略の容易なエリアでは、順調に攻略が進んでいる。この頃、ウイルスとの攻防の裏で、ワールド内に大規模な基地を建設するなど、開発が進んでいる。


 二〇七二年十二月二十日。ロシアで大規模なウイルスの侵攻があった。これによってロシア政府は機能不全に陥り、大混乱になる。ロシア軍のABS部隊がウイルスと対峙するが、当時世界最大と呼ばれる超大型ウイルス(現在ではベヒモスと名付けられている。全長約五十メートル)の前に為す術もなく蹴散らされた。ロシアは現在でも厳しい状態に陥っており、ロシアのワールドは、その大半がウイルスに支配されている状況である。

 また、翌年には、中国でも龍のような超巨大ウイルス(赤龍と呼ばれる。全長約三十メートル)に攻撃され、燦々たる有様になっている。

 世界中でウイルスが猛威をふるい、人類はABSで対抗している。一体いつまでこんな状態が続くのか。

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