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抵抗する者

 米国在住のハッカー、グレッグ・ウィルソンは「反逆者」だった。少年時代から「体制」に対して抵抗した。人生最初の抵抗は、四歳の時、母の用意した食事を食べなかったことだ。美味しくないと感じたグレッグ少年は、どうしても食べろ、と威圧し、立ちはだかる母に対して徹底的に抵抗した。どんなに折檻を受けようが、家から放り出されようが、絶対に食べなかった。結局、最後は母親の方が折れた。

 以降、彼はことあるごとに、目の前に立ちはだかるものに抵抗した。

 学校では、常に不良のレッテルを貼られ、教師たちにとっては鼻つまみ者だった。しかし、成績は常に優秀で、高校生の時には、大手ソフトウェアメーカーのバグやセキュリティホールを見つけてはメーカーに報告し、多額の報酬をもらっていた。

 二〇六三年、彼は二十五歳。どこの会社にも就職せず、自力でソフトウェアを開発して販売し、また大手メーカーの外注などをして収入を得ていた。


 ウィルソンは、マザーによって支配されたネットの世界に不満を持っていた。これではまともにネットを使えない。仕事に影響がある、だとかそんな理由ではない。彼は、自分の自由にネットを使うことができないのが気に入らなかった。

 どうしてマザーに制限をかけられなければいけないのか。

 自分がかつてのように自由にネットを使えるようにするためには、マザーからネットを取り戻さなくてはならない。もし、マザーが自分の前に立ちはだかるなら排除する。

 ウィルソンはそう考えて、早速行動に移した。


 最初の一撃は、ウィルソンが独自に開発したハッキングプログラムだった。マザーの頭脳を乗っ取って、思い通りにしてやろうと考えたのだ。しかし、想像以上に分厚いセキュリティの壁は、ウィルソンの攻撃を簡単に跳ね返した。

 ウィルソンも、簡単にはいかないと考えていた。

 「どんなに強固な壁でも、必ずいつかは崩壊する」

 これはウィルソンが、よくハッカー仲間に言っている言葉だ。

 マザーに抵抗を試みるウィルソンに、仲間たちは驚いた。どうにもならないくらいに強力なマザーに抵抗しようと考えるだけでも相当だが、実際にやってしまうとは。

 しかしウィルソンは、その代償に、自身の愛用してきたコンピュータを破壊されてしまった。防御策は万全だと思っていたが、マザーの攻撃はそれ以上だったようだ。しかし仲間たちは、自分たちの力を結集すれば、どうにかなるかもしれない、そう考える事ができた。

 そうして、ウィルソンと仲間たちは、総力を結集してマザーに抵抗するために作戦を開始した。



 ユージーン・テーラーは、高校時代にウィルソンとハッキングで何度も競争したよきライバルだった。現在は、ウィルソン同様に個人でソフトウェア開発などをやっている同業者であり、仲間だった。

 ウィルソンとテーラーは、かつてのようにお互いに競い合って「マザーの壁」を破壊するべく、しのぎを削りあった。

 他の仲間たちも、この二人に協力し、必死に戦った。その様子が、米国中に伝わり、多くのハッカーが彼らに続いた。

 これに、マザーの壁は、とうとうヒビを入れられてしまったようだ。

 ――ようやくマザーにダメージを与えられた。首を洗って待っていろ。

 ウィルソンは、勝利を信じてひたむきに突き進んだ。


 しかし、そんな彼らの前に、マザーは再び困難を突きつけてきた。

 マザーは、ネット上に「仮想空間」を作り出した。


 そこは漆黒の空間……まるで宇宙空間のようだった。そこに無数の星々があたり一面に浮かんでいる。この星々は、アクセスポイント――人類がネットにアクセスするために必要な「扉」とでも言ったらよいだろうか――や、ウェブサイトなどであるようだ。

 インターネットというのは、無数のサイト同士を繋いでいる。これを宇宙空間のようにしてしまったということのようだ。

 ここに一つの問題が浮かんだ。


 この暗黒空間をどうやって行き来すれはよいのだ? 我々は、このネットに作り出された、宇宙空間を移動するための宇宙船は持っていないのだ。生身では無理だろう。しかし、宇宙船などどうやって作ればいいのだ?

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