ABS
ABS
人類の開発した、ワールド内で様々な行動を行うための、人を模した形状のプログラム。アドバンスド・ビットソルジャーの略。ABSという通称以外にも、単にソルジャーと呼ぶ人もいる。
二〇七一年、メスナー&リュッカー社に招かれたアンソニー・マクニールによって開発された「AM1」が初のABSとなる。
基本的に一台のデバイス(パソコン)のみに紐付けられており、一台のデバイスと一機のABSがセットになる。デバイスは、一つのユーザーIDのみアクセス可能で、
オペレーター(ユーザーIDとその持ち主)
ハードウェア(パソコン一式やコントロールデバイス)
ソフトウェア(ABS)
が揃って、初めてワールド内で活動できる。
ボディ内のどこかに(ほとんどは胸の辺り)『コア』と呼ばれるユーザーアクセスポイントがあり、そこにアクセスすることで、ジェネレーター(動力)を作動させて、ワールド内で活動できるようになる。
コアを破壊されると、アクセス権にペナルティが課せられ、一定期間そのユーザーIDではログインできなくなる。
また、ジェネレーターを破壊されると、行動不能となり、コアを仲間などにサルベージしてもらわないと、その場に放置されたままになる。
大きさは、ワールド内のサイズで約一八〇センチ前後で、人間と同じくらいのサイズになる。
武装は、現実の兵士の武装と同じで、基本的にアサルトライフルや手榴弾などを使う。銃器以外にも打撃、斬撃武器も存在する。
旧世代のビットソルジャーとの違いは、「手」があること。複雑な動作が可能な指を備えた「手」の存在が、様々な武器や道具の使用を可能にした。
ABSは実在するものではなく、データの存在でしかないが、「ロウ」のせいで、プログラムのコピーで増やすことはできない。それぞれの機体には、モデルナンバーをつけないとワールド内で稼働させることができない。またそれは個々の部品すべてにも同様で、部分修理でもプログラムのコピーで直すことはできない。そのため、一機のために、凄まじく複雑かつ膨大なプログラムが組まれている。
個人で使用する場合は、各メーカーが販売しており、それを購入することになる。
価格はかなり幅があり、もちろんだが古いABSは安く、新しいものになる程高額になる。一般に新規販売されているものでは、第二世代の最初期のものが一部流通しており、これらは非常に安価で、日本円にして約十万円程度から買える。
ワールド内で不自由なく使おうと思うと、第二世代の後期以降が好ましい。これだと、安くとも十五万円以上となる。第三世代になると三十万円以上のものしかなく、大抵は四十万円クラスだ。
高額なものになると、百万円超のものがあり、個人ではあまり使われない。第四世代の最新モデルになると、このくらいになる。
ABSは壊れても、例えば「コピー&ペーストでプログラムを修理する」といったことができない。破壊され「破棄」となると、もう修理も不可能であるため、高額なABSを使うのは躊躇われる場合もある。高額なABSをあっという間に撃破され、ショックの余りオペレーターを辞めた人も多い。
大抵の国では、民間の参戦も歓迎される。そのため、ABSの購入費用を補助する国もある。
ABSのワールド内での活動はお金になる場合が多く、それを当て込んでABSで賞金稼ぎなどをやっている人もいる。
機体各部には様々な機構が備えられている。
ブレーンユニット
頭部に内蔵される、感覚を担当する機関。カメラアイやフィールドセンサーから得られた情報を、オペレーターのヘッドユニットやディスプレイに出力できるようにする。
操縦者が「ワールド内の、いわゆる空気」を感じ取ることができるのは、このブレーンユニットがあるおかげである。また、行動を補助してくれるAIユニットも内蔵しており、壊れると、視覚情報や臨場感も得られなくなる上、操作も複雑困難に陥る。
カメラアイは、オペレーターの見るディスプレイに、ワールド内の視覚情報を提供する装置。破損すると、ディスプレイには視覚情報が表示できなくなる。
初期のものは、円形のものだったが、これは周囲をヘルメットで囲うと視界が狭くなるため、大きく開ける必要があった。また、カメラアイの奥にブレーンユニットがあることもあり、防御面に問題も多かった。第三世代以降、ラインアイという、線状に自由に設置できるタイプのものが登場すると、頭部形状にもかなり自由度が増した上、顔の大部分を装甲で覆うことができるようになった。
フィールドセンサーは、オペレーターにいわゆる臨場感を与える装置。これを通して、ワールド内の「空気」を感じ取ることができ、例えば、「背後にウイルスが迫っている」という気配を感じることができる。
このセンサーから得た情報をブレーンユニットで変換、それがオペレーターの装着するヘッドユニットに伝わって、オペレーターが感覚を得ることができる。
現在はブレードタイプが主流で、邪魔になりにくい、左肩後部に備えているものが多い。頭部に備えるものもあるが、頭部は割と破損しやすい。
今では少ないが、ロッドタイプやフラットタイプといったものもある。ロッドタイプは折れやすく、フラットタイプは傷などで感度が鈍ることが多いのと、平面状のセンサーなので、攻撃に当たりやすいのが欠点。
ジェネレーター
主に胴体部に内蔵される、ABSの動力源。ABSが稼働するために必須の機関で、これが機能しなくなるとABSは行動不能になる。同時にエネルギーを貯める燃料タンクも兼ねている。ボディ外部にUSBコネクタに似た接続部を設けられており、そこにケーブルを接続して、ワールド内にてエネルギーを供給することも可能。通常はログアウトすることで、エネルギーをチャージできる。
複数のメーカーが製造しており、各メーカーとも種類も性能も様々。
カスタムをする場合の一番の悩みどころである。ジェネレーターの載せ替えは本体との相性もあるので、必ずしもプラスになるとは限らない。しかも高額だからだ。
コア
大抵のABSの胴体内部に内蔵される、ABSを操縦するために必須の機関。言うならばコクピットに相当する部分で、コアが破壊されると、強制的にログアウトされる。そして72hペナルティ(七十二時間ログイン禁止)が課せられ、三日間ログインできない。
なぜそのようなペナルティがあるのか、現在も理由はわかっていない。
ハンド
いわゆる手。ABSはこの手と指を細かく使うことで、様々な動作ができる。銃器等の扱いも、この「手」のおかげである。
ABSがABSと呼ばれるのは、この手の動作が素晴らしいことが理由の一つ。
マニピュレーターと呼ぶ場合もあるが、そう呼ぶ人はあまり多くない。
ABSは、基本的にパソコン一式を使用して操縦する。大まかには、操作は「キーボード」と「クラム」で行う。
「クラム」とは、ABSの操作において、マウスでは複雑な操作が難しいことから、そのために開発された。
ベースの上にマウスのような握り部があり、その接続部は前後左右(3D操作)に自由に動く。握り部が二枚貝に似ていることから、そう呼ばれているが、本来は「3Dコントロールデバイス」という。
また、「ワンド」と呼ばれる操作機器もある。これはクラムと同じ用途だが、こちらは操縦桿のような棒状の機器になる。使い勝手は個人の好みだが、持ち方がクラムより自然になるためか、疲れにくいなどのメリットをあげる人もいる。イギリスやフランスでは利用者が多いという。反対にドイツやアメリカなどではあまり人気がないようだ。
キーボードは、各キーに細かい動作をショートカットとして、必要時に打って実行させる使い方をする。
他に、タブレット端末を置いて、タッチパネルを使った補助操作をする場合もある。
ABSもすでに運用されて三十年以上になり、かなりのバリエーションも登場している。技術の向上などもあり、世代に別れる。最新は、第四世代になる。
第一世代
二〇七一年に発表された、メスナー&リュッカーの「AM1」が最古となる。当時は、ジェネレーターが性能の割に大きく、コアと一緒に胸部に収めることができず、背中に大きく張り出たせたり、腰の部分に分けたりしていた。そのせいかずんぐりした形状のものが多い。
第二世代
第一世代に比べ、かなり人間的なスタイルとなり、さらに複雑な作戦を行うことができる。カスタマイズが可能となったのもこの世代。
前期、中期、後期と分かれており、前期のものと後期のものでは、かなり性能もデザインも変わってしまっている。
特に第三世代が見え始めてくる最後期のABSは、第二世代と第三世代の中間という意味で「二・五世代」とも言われる。
第三世代
第二世代の正統進化となる。全身の装甲を取り替えることも可能で、開発においては、形状の自由度も増した。
線状のアイユニットである「ライン・アイ」が登場すると、頭部の形状がかなり変わった。大きく開けていたアイユニット周りを、かなり狭くするできるようになった。
第四世代
最新鋭の世代。大抵のメーカーで、この第四世代からプラットフォームを一新させている。そのこともあり、これまで以上に人間的な動きやデザインになった。




