第八話「衝撃と斥力」
こんにちは、はやぶさです。
早朝更新になってしまった(眠い)
「うらぁぁっ!!!」
「はぁっ!!」
豪猛たる叫びとともに、衝撃波と斥力は衝突する。城内の壁などを利用して三次元的に動き攻撃を仕掛けるアフタンに対し、モーニンはほぼ動かずに攻撃を斥力の防壁で防ぎ、拳銃で狙撃する。
弾速、威力等々に申し分ないモーニンの弾を三次元的な立ち回りで撹乱し避ける作戦でいたアフタンだったが、しかし、その弾はアフタンを捉え始めていた。頬を掠める。左腕を掠める。
(まずいな……モーニンの銃がもうそろそろ俺のボディを捉えそうだぜ。悔しいが、中距離戦では分が悪いみたいだ。だが──)
突然、アフタンはモーニンに向かって真っ直ぐ突撃する。直前までの三次元的な動きから一次元的な動きに急転し意表を突くといった形だ。
だが、それは当然──
「おっとバカこじらせたか?それには意表を突かれたが、俺にとっちゃ狙い撃ちやすいだけだぜ?」
当然、モーニンにとっては狙撃しやすくなるという重大なメリットを孕んでいる。しかしこれまた当然、そこに気づかぬアフタンでもないのだ。
「撃てるもんなら撃ってみな!!〈衝撃波一掃〉!!」
突っ込むアフタンから、球面状に衝撃波が発せられる。その衝撃波は城の壁を削りモーニンに迫る。
モーニンはアフタンに向かって3発撃つ。しかし、それらは全てアフタンから発せられた衝撃波に弾かれる。
(な……へぇ、攻防一体って訳か。けど、俺の見立て通りならば──)
モーニンの斥力の壁と衝撃波が激突する。互いの威力で衝撃波は霧散、斥力の壁は砕け散る。
そして瞬間、アフタンは床に叩きつけられる───否、押し付けられるといった方がいいかもしれない。膝を衝き、のめり、そして四肢で堪える猶予もなく伏す。アフタンを襲うそれは、絶大な重力だった。
「が……っ………!」
「アフタン、お前の衝撃波の威力は面倒だ。だが穴がある。それは、衝撃波そのものはただの板のようなものだということだ。発せられる衝撃波には威力があれど、お前と衝撃波の間には別段何もない。だからそこに攻撃をすればお前の意表を突ける。どうだ?俺の能力は斥力だけじゃないんでな。」
「くっ………まず……い……動け……ない……」
「今からちゃんとぶっ飛ばす、歯は食い縛っときな。」
モーニンが攻撃を構える。
その時だった。
「俺の……能力とじゃ……相性が悪かったな……モーニン……!!」
アフタンは上体をほんの少しだけ上げた。その空間、その隙間から───アフタンは渾身の衝撃波を放つ。反動でアフタンは仰け反り、そのまま瞬間でモーニンの重力の拘束を抜け出す。
「なにっ!?」
「歯食い縛るのはテメエの方だな、モーニン!!食らえ!!〈一点衝撃〉!!」
アフタンの右拳の突きがモーニンの咄嗟の〈斥力壁〉に阻まれる。しかし刹那、アフタンの拳から衝撃波が発せられる。
一点集中の衝撃波───その威力はこれまでの衝撃波攻撃とは比較にならない。貫くその衝撃は斥力の壁をたちまち砕き、モーニンの腹に炸裂する。
「!?………がはぁっ!!!」
吹き飛ばされモーニンは、城の壁に叩きつけられる。更に威力そのまま城の壁を砕き、モーニンは城の外へ吹き飛ばされてゆく。
「彼方までぶっ飛びやがれ」
一言残し、アフタンは座り込む。
吹き飛ばされたモーニンは、一瞬意識を飛ばされたものの、すぐに意識を取り戻した。しかしそれ以上に、〈一点衝撃〉を受け、吐血する程の絶大なダメージを内臓に受けた。
(結構やべえな……あまり長くはもたなそうだ……ナイトが水の奴を倒したとして、多分まだランチは氷の奴を倒せていない。俺がアフタンの奴を抑えねえと、ランチに2対1を強いることになる……それは勝ち目が薄い。意地でも俺はアフタンを止めなければならない。ったく、こんな強力な攻撃があるならとっとと言えっての……)
「〈斥力加速〉」
モーニンは空中で斥力を使い、城の方向に飛んで行く。
(アフタンにもう重力拘束は通用しない。〈斥力弾〉は決定打にはならない。なら、残す手は限られている。
考えろ。俺はナイトみたいに感覚で戦うタイプでも、ランチみたいに能力任せに戦うタイプでもねえんだ。考えて戦え。)
アフタンは勝った気でいたが、飛来するモーニンの姿を目にし、慌てて再び戦闘態勢に入る。
「こいつ、〈一点衝撃〉を受けてくたばらねえとは、タフなヤローだ……!」
「随分と痛ェことしてくれるじゃねえか。お返しさせてもらうぜ。」
モーニンは斥力の銃を撃つ。アフタンはそれを衝撃波で無力化するも、痛みに顔を歪める。
「チッ、俺も長期戦には持ち込めなさそうだ、次で終いにするぜ!〈衝撃〉!!」
アフタンから3発、衝撃波が発せられる。するとモーニンは、それを斥力の壁で防ぐ───訳でもなく、それぞれいなし、受け流す。
「巧みなことしやがる……だが、中距離に強く近距離に弱いことはさっきわかってんだよ!!もう一発〈一点衝撃〉を食らわしてやるぜ!!」
アフタンはさっきと同様に突っ込む。
モーニンは、待ってましたとばかりに笑う。
「あんまり防御とかにリソース割けねェんだよ。こうするためにな!!」
モーニンの左手には、紫色に大きく強く煌めく何かがあった。
「この威力なら防ぎようがねェんじゃねえか?〈斥力砲〉!!」
モーニンは、アフタンに紫色に煌めく左手の物を構える。アフタンには、それが絶大な斥力の塊であることが感覚的にわかった。
アフタンは咄嗟に衝撃波を放ち、相殺を試みる。しかし無情にも、アフタンの視界は紫色の力に覆われ、モーニンの攻撃がアフタンを捉え───
はしなかった。
アフタンの衝撃波は紫色の力を晴らし、前方を空虚な廊下のみにした。そこにモーニンの姿はない。
「な………いない!?」
アフタンがモーニンの姿を失った直後、その解はすぐさま与えられた。
アフタンが振り返った瞬間、そこには紫色の左手を構えるモーニンの姿が既にあった。その距離僅か1メートル。
慌てて衝撃波を放とうとするも、もう遅い。モーニンは完全に先手を取った。
「まんまと騙されたな。だがもう手遅れだ。〈斥力砲〉!!」
「!?………があああぁぁっっっ!!!!!ぐうううぅっっ!!!」
アフタンを、絶大な斥力が襲う。最後の抵抗で右手から衝撃波を放つも、空しく斥力の威力が衝撃波も右手も砕く。そしてアフタンを吹き飛ばしてゆく。
「吹き飛べ」
アフタンは城の外へ吹き飛んでいった。そしてそのまま、モーニンのもとへは戻らない。吹き飛ばされ意識を失ったようだった。
「…………ふぅ、見た目威力ありそうに構えつつちょっとした斥力で目眩まし程度にし、咄嗟にガードさせつつ斥力加速して先の壁の穴から外へ出、新しく穴を空けて後方から本命の攻撃……うん、我ながらいい意表を突いた攻撃展開だ。」
モーニンは一人ごちる。実際、やはり強力な能力で応用も利く。実に優秀だ。
「………ガハッ!……やはりダメージが大きい。正直一休みしていきたい感じだ。でも、立ち止まっちゃいられないな。ランチが心配だ。」
そういうモーニンの表情は曇っていた。
(重力で拘束しても壊れない床、〈斥力拳〉でようやく砕けるこの壁、ランチ……"氷の王"、エドワード・G・カリキュラムは強敵だぜ……!)
───その頃、─モーニンの警戒していた通り─ランチは"氷の王"、エドワード・G・カリキュラムに圧倒され、苦戦を強いられていた。
人物紹介
アフタン
氷の王、エドワードの直属の部下。
能力 衝撃波を放つ/(不明)
アフタンを起点に、衝撃波を放てる。攻撃に特化しているが、ちょっとであれば防御にも転用はできる(が、本人はあまり防御したがらない)。
第2の能力はまだ発現していないため、衝撃波を放つ能力のみで戦っている。
いかがだったでしょうか?
次回はランチとエドワードの戦いです。身体能力、双能力ともに極めて強力なエドワードに対し、ランチに勝機はあるのか