別々の道へ
今まで側で聞いていた仲間の笑い声が聞こえてきた。
優は今いる状況を把握して真っ青になったり、真っ赤になったりと忙しく顔色を変えながら慌てていた。
「全く、貴様は危機感が無さすぎだ!」
澪は仁王立ちしながら見下ろすと腕を組みながら少年とサエと呼ばれる少女を見た。
「君は何を望むんだい?」
ふんっ。と顎をしゃくると横柄な態度を崩さない。
「決まっている。二度とこのよう戦闘に呼び出すな!そして、今すぐ戻せ!直ぐにだ。二度と貴様の顔は見たくない」
「いいだろう。全員の願いを聞いたら戻してやろう。次は誰にするかな?」
「俺は・・・死んだクラスメートを生き返らせれのは、ダメなのか?」
「それは欲が深いと言うものだよ。生き返らせるなら一人を選ぶんだな。」
それまで黙っていた香奈が口を開いた。
「なら、美弥ちゃんの両親を、事故で亡くなった人でもいいの?」
少年は香奈を睨みつけるとため息をはいた。
「構わない。周りの記憶も改竄することになるがね。しかし、君には選択権はないよ。黙っていたまえ」
「私が願えば帰ってくるの?」
美弥は切実な思いで聞いてきた。
小さい時に亡くなったと聞いていたのでそれ以上は深く聞けなかった。
美弥が望むのなら優にとっての答えは決まっていた。
「しかし、君に選べるのは片方だけだ!どちらを選ぶ?」
少年の不適な笑みに美弥は悩むが、意を決して口に出す前に言葉を遮った。
「そんなの選べるわけねーじゃん。俺もの願いもそれでいい。なら、二人とも行けるだろ?」
優の言葉に美弥は驚いた顔をする。
「どうして?だって優くんには何のメリットもないんだよ?」
「そんなの関係ねーよ。困ってたら助ける。それが男だろ?それに、好きな女の前でいいとこ見せたいじゃん!」
後半は声が小さくはっきりとはしなかったが美弥の涙の浮かんだ笑顔は惚れ直すには最適だった。
やっぱり君が好きなんだなーと優は改めて認識した。
勿論見ている周りにも伝わってくる。
見てられないとばかりに紗耶香と澪はあさっての方を向いた。
香奈だけはそんな二人をじっと見つめていた。
「そういうことなら君の両親を蘇生しておこう。しかし、直ぐにとはいかないので24時間待ってくれ。記憶の調整もあるからね。」
サエが前に出るといきなり辺りが真っ暗になった。
だが、声だけははっきりと聞こえた。
「さぁ、望み通りに戻るといい。コレが最後だ。」
そう言うと周りの景色が歪み一気に浮遊感に苛まれると目の前には教室の風景が写った。
何事もなかったかのように皆がいる教室。
「こら、早く席につけ!」
声を出したのは担任の山口先生だった。
優は美弥と香奈を振り向くが彼女らも違和感を感じていた。
先に帰ったはずの足立や荒川、犬飼も違和感をぬぐえないでいた。
「どうなってるんだ?」
「皆、生きてるってこと?」
するとそこに白いワンピースの少女が現れて山口先生を殺害した。
そしてこちらに目を向けるとサエは笑いながら一瞬にして生徒の大半の人数を残虐に殺した。
「バイバイ。お兄ちゃん、お姉ちゃん。」
言い終わるとスッと出てきたときと同じように消えていった。
残されたのは周りに散らばる死体の山だった。
そこからは警察が来て優達は事情聴取を受けることになった。
それもそうだろう。隣のクラスも同じような有り様だった。
本当に生き残ったのは水谷優、牧野美弥、伊藤香奈、奥田澪、内田紗耶香、犬飼要、足立享、荒川千尋の8名だけだったからだ。
学校は暫く休校になり家にもマスコミが押し寄せる事態となった。
そして各学校に割り当てられ、同じ学校に編入する事は出来なかった。
親同士も極力気を使ったのか、引っ越し等して悲惨な惨劇を思い出させないようにと気を使ってくれた。
しかし、彼等は事情聴取の時もそうだが誰一人として狼狽えたりしなかった。
まるで現場写真も見慣れているかのような堂々とした態度で質問にも答えた。
あの事件のあと半年が過ぎた。
とある古びた廃屋。後ろには森が広がっている。
そこに今、若者が集まってチーム毎に別れて対戦しようとしていた。
手には拳銃を握り、迷彩服に身を包んだ彼等はゴーグルやヘルメットを着用し装備を確認している。
至るところにはカメラが設置されている。
これは公式戦である。大人たちが勝ち抜くなか、なぜか高校生のグループが決勝まで勝ち抜いてきたのだ。
弾丸の代わりにBB弾が詰められている。
始まりの合図がなると一斉に森に散らばった。
「優、今度はしくじらないでよね!前回の死亡判定はあんただけだったんだからね」
「分かってるって!」
「今度は全員で生き残ろうね?」
隣から美弥の可愛らしい声が聞こえてくる。
「しくじるな!私たちの点数が下がるからな、いくぞ要?」
「あぁ、任せてくれ!」
そう言うと澪と要は二人で別の方向へ走り去ってしまう。
享と千尋は陰に隠れると待機し、紗耶香と香奈は高い所。狙撃ポイントを目指す。
親たちの知らないところで彼等は彼らの戦いを続けていた。
命を落とすことのないサバイバルゲーム。
ここで彼等は最年少記録を叩き出した。それから、雑誌などにも取り上げられた。
それは、世界中に広がり一躍サバゲーブームが到来するのであった。




