決着
一階では美弥を誤魔化すために澪が上がっていった後、紗耶香は窓の外を警戒していた。
優を寝かせたまま、たまに脈が消えないか、呼吸は有るかを確認だけしていた。
「・・・ぅっ・・・ん・・・」
微かな呻き声が漏れてそれに気付いた紗耶香は優に駆け寄った。
「気付いたか?あと少しだ。もう少しの辛抱だ。あと一人さえ倒せば終了なんだ。それまで持ちこたえてくれ」
それだけ言うと戻ろうとする紗耶香を止めるべく何かを話そうとする。
「何か言いたい事でもあるのか?」
「・・・て・・・の・・に・・・いに」
掠れていて聞き取れない。必死に訴えるのでただ事ではないのは分かる。
体力的にもあまりよくはないのは分かるが直感的に聞き逃してはいけないと第六感が伝えていた。
「もう一回、ゆっくりと」
「この・・・にかい・・・うえ・・・ひとか・・げ」
「それって、この建物の二階の上にいるってこと?」
頷く優に紗耶香は急いで無線を開く。
「二人とも今から黙って聞いてよ。この建物の中に敵が居るわ。しかも私たちの上にね。私たちはここは二階建てで屋上もなかったじゃない?でも屋根裏部屋は見てないわよね?どこかから行けるとしたら?人影を優が見てるの!」
「優は目を覚ましたのか?」
澪はとっさに口を押さえた。
しまった。と思ったときには遅かった。美弥の視線が痛い。
「今はそれどころではにゃい」
つい、噛んでしまった。
しかし、それは美弥にもわかっているらしい。
早速上に上がる入り口を探した。
紗耶香も加わり3人で探すと一番奥の部屋にレバーがついていたのに気付いた。
「これじゃない?」
紗耶香はそのままレバーを手前に引いた。
重い音と共に上から梯子が降りてきた。
「こっれって、待ち構えてるパターンよね?」
「・・・」
「誰が行くのよ?」
「それは・・・」
紗耶香はスナイパーなので接近戦闘に不向きであった。
その為、美弥か澪のどちらかとなる。
しかし、階段と違い梯子となると銃を構えながら上がることは出来ない。
「私が行くわ。いざというときは頼んだわよ」
美弥はスタンドグレネードのピンを抜き、上に投げ入れた。
暫くしてから銃を背負うと梯子を駆け上がった。
上がりきるとすぐさま銃を構えた。
しかし、誰の姿も見えなかった。
「紗耶香~誰もいないわよー!」
屋根裏を探すように隈無く歩くと下の明かりが漏れているところがあった。
下のコックを開けるとゴミのシューターのようになっていた。
覚悟を決めて澪達に一声駆けて飛び込んだ。
時々蜘蛛の糸が絡みながら一階の脇に着地した。
そこにはさっきまで見たこともない男がいた。
銃を構えると戦闘体勢に入ろうとしてふと気付いた。
その男の側に横たわっている優の姿とそこに向けられる銃口を・・・。
「そこから離れなさい。さもないと殺すわよ!」
男は振り向くと顔を押さえながら笑いだした。
「くっくっくっ・・・お嬢ちゃんに俺が殺せるのか?」
銃口を優の方に向けたまま引き金に指をかけたままこちらを向いた。
美弥は唇を噛みしめながら反論を試みる。紗耶香と澪が突破口を開いてくれるのを信じて。
「出来ないと思うの?私は自分が一番大事なの!」
「そうかい、そうかい。しかし、段々と顔色が悪くなっている用だが大丈夫なのかい?銃をそこに置けばコイツは撃たないでやるよ。どうせ長くは持たなそうだしな?」
「それを決めるのはあなたじゃないわ。あなたさえ殺せば優勝よ!」
「おっと、お嬢ちゃん。知らねーのか?チーム優勝と個人優勝の事だよ。チームで勝てば願いは叶う。しかし、個人で勝てば願いは永遠に継続するってな。」
二階から降りてきて隠れながら成り行きを見守っていた紗耶香と澪は首を傾げた。
「なんか、裏が有りそうだね?」
「そんな事どうでもいい。優は長くは持たない」
「あたし達には関係ないわな?」
紗耶香達の考えは纏まっていた。
しかし、美弥は男が話そうとしている事が手に取るように分かっていた。
「用は仲間を裏切って一人で生き残るつもりだった!でもそれがムリなら2人で生き残らないか?とでも言いたいの?」
「話が早くて助かるよ。君と二人なら最強だ。さっきまでの戦いを見せて貰ったよ。すごいじゃないか!でも、君にも重大な弱点が有ることに気付いたんだ。」
さっきまで歓喜に震え上がったと思うと今度は下を向き消沈して見せる。
「それはね、彼だよ。彼の存在そのモノだよ。君には必要無いんだ。だから、さっきの戦いのうちに仕留めようと重度の手傷を負わせたんだけどね!君の友達が運んで来てしまったんだよ。まさか見られていたなんて迂闊だったよ。ただのガキの癖になっ」
ガッ。っと優の脇を思いっきり蹴りあげた。
「ぐはっ・・・うっ・・・」
呻き声が漏れるが痛みよりぼやけていく視界が怖かった。
優はさっきからかろうじて会話は聞こえていた。
しかし、動きたくても思い通りにならない体をなんとかしようと必死に腰のハンドガンを取ろうとゆっくり伸ばしていた矢先に蹴りあげられ、悶絶しながら意識だけはと懸命に食い縛っていた。




