残りの一人
マップを確める前に傷口を確認した。
「やべっ。歩けなくも・・・ないわけないかっ・・・」
ところどころに銃弾が掠めていった痕が残ってはいるが脇腹の辺りだけ掠めているにしては洒落にならない位出血もあった。
集中していたときはそんな事気にしていられなかったが、終わって確めると痛みをしっかりと認識してしまった。
このままだと確実に出血死は免れない。
「おっと、それよりマップを・・・うっ・やっぱ・・いてーわ・・」
マップを操作して出すと収縮した範囲がまた次のエリアを指定していた。
そこは崖の下の建物の周辺のみに限定されていた。
「俺達の勝ちだ!」
紗耶香はすぐに移動するだろう。あとの二人はもう建物の中だ。
これで残る敵は一人だけ。
この状況なら絶対に勝てる。自分が居なくなってもきっと・・・。
無線を着けると連絡を入れた。
「次のエリアはついてるぜ?今いるその建物の周辺のみだ!今からそっちに合流する。」
「分かったわ、気を付けて。まだどこかに一人潜んでいるから!」
「・・・わかっ・・てる。またっ・・・後でなっ」
言うだけ言うと無線を切った。後ろの崖に体を預けると目を閉じた。
「ごめんな。折角助けてくれたのに・・・無駄にしちまった」
力を抜くとそのままずりずりと横に滑ってた折れ込んでいった。
無線を切った後、なぜか嫌な予感がしてもう一回無線を握る。
「優くん?聞こえてる?聞こえたら返事して!」
「・・・・・・」
「アイツがどうかしたのか?そっちに行ったんだろう?」
紗耶香が代わりに返してきた。
美弥は不安を拭いきれないまま紗耶香に優の事を頼んだ。
「なんか、さっきの会話がおかしい気がするの。紗耶香、お願い優くんを探して。今すぐに!」
「おい、おい、敵はいいのかよ!」
「それも、そうなんだけど・・・」
美弥は口ごもった。そこへ澪が口を挟んできた。
「紗耶香、聞いて。次のエリアがこの建物の周辺ならすぐにこちらに向かうべき。そのついでに優を回収すればいいことだ。そうは思わないか?」
「あーはいはい。今から行くよ。そっちはそっちでちゃんと見張っときなよ!」
「ありがとう」
美弥は紗耶香に礼を言うと澪にも感謝を言った。
澪は ニイ っと笑うと「当たり前の事だ」
と言ってみせた。
ぶっきらぼうで男らしい性格は澪の専売特許だった。
「あのバカはどこにいるんだ?全く人騒がせな奴だ。」
崖の近くには居なかった。
持ち場を離れてどこに行ったんだろう?と思いながらさっきの狙撃が出来そうな場所を探した。建物の奥でノース、ウエストが見える場所は?と探していた。
「ここぐらいなんだけどな?」
見晴らしのいい高台。そしてさっきの戦闘が一望できて、絶好の狙撃ポイント。ちょっと高さが有るけど・・・もうちょっと下のが角度的には撃ちやすいかな?
そいって下を覗いた。すると下にも足場があってそこに人の足が見えていた。
「ん?そこにいたのか?おい、早く上がって来いって。聞いてんのか?」
大声で叫んでも反応がない。
「全く無視しやがって。何様のつもりだっての」
不安定な足場を降りて優のいる出っ張った足場に降りた。
そこにいたのは紛れもない優本人なのだが脇から出た血で真っ赤に染まっていてピクリとも動かなかった。
「おい、嘘だろ?何やってんだよ!」
揺すってみるが、余計に血が出るだけで反応がなかった。
一発ぶん殴ってやろうと意気込んで来たのに、予想外の事態だった。
紗耶香は回復を持っていない。
自分はスナイパーだから、危険な目に会うわけはないと澪に託したのだ。
「そうだっ。コイツのは?」
荷物を探っても入って無かった。
「そうだっ、脈拍!」
脈を取ると微かに分かる。息も一応はある。しかし、このままにしておけば確実に死ぬ。
紗耶香は一か八かの大博打を打つことにする。
ロープを取り出すと優の体を縛ると頑丈そうな岩にくくりつける。
そしてゆっくりと崖下に下ろしていく。
流石に背負って崖を登るのはムリだが下ろすのならなんとかなるだろうと思ったのだ。
それに小柄な彼ならそれほど女子と重量も変わらないはずである。
途中で崖に当たってしまったが慎重に下ろして行く。地面に完全に着くと。
今度はそのロープを伝って紗耶香も降りていく。
無線で連絡もしなくてはならなかった。
「澪、ちょっと建物のサウス側の崖の方に来てくれない?」
「優くんは見つかった?」
すぐに美弥が出たがまだ探していると伝えておいた。
澪の方は何かを感づいたのか誤魔化しながら、自分が見てくると言って美弥には見張りを頼んで出て来てくれた。
「一体どうしたというんだ?」
「澪はまだ回復を持ってる?」
「使ってしまった。さっきドジって!!・・・彼は生きているのか?」
わずかながら息をしているのを確認すると澪はため息を漏らした。
「美弥にはこの事は・・・」
「伏せておいた方がいいでしょうね」
「それも時間の問題だ。このままじゃ長くは持たん。が、敵がどこにいるかわからんままじゃ終わらせる事も出来んし・・・あっ・・・包帯も止血くらいなら使えたよな?」
拾っておいた包帯を取り出した。服を脱がせると包帯を巻き始めた。
巻き終えると光だして傷口がすうっと消えていった。
「やったか?」
「安心は出来んがな!」
澪が言うには包帯は一事凌ぎにしかならないというのだ。
傷は消えてもなくなた血液はそのままなのだそうだ。
いまだに顔色は悪いままだがこれなら少しは時間が稼げるはずであった。
二人で建物の中に運ぶと美弥が見張っている二階に澪は上がっていった。
「何だったの?」
「私的な用事だっただけだ。それより、優のヤツは今は紗耶香と一階で見張っている。安心していいぞ」
「そうなの?よかったーなんだか胸騒ぎがしてて。じゃー無線も出れるわね。」
早速無線を使おうとするので慌てて止めた。
「今は戦闘に集中すべきだ。後でゆっくりと話せばいいじゃないか?」
「ん~それもそうね。紗耶香には感謝しなきゃね!」
とにかく美弥には悟られる訳にはいかなかった。
「因みにだが回復って持ってたりする?」
「あぁ、回復ならさっき窓から飛びおりた時に硝子で足を切っちゃってね。それで使っちゃった。どうして?紗耶香が怪我でもしたの?」
「ちょっとな・・・スナイパーなのに手を擦りむいてなっ・・・」
「そっかーごめん。持ってないわ。後は休んでて。一人は私が仕留めるから!」
笑いながらいう美弥にほんとの事はどうしても言うことが出来ないでいた。
「そ、そうだな。紗耶香もドジだな・・・はっはっはっ・・・」




