それぞれの思惑
外で江崎希美子の悲鳴を聞き、松岡信治は外の窓を開ける。
「どうした?」
その声に服部雅臣の嗚咽が混ざる。
「信治窓を開けるな。家に・・・」
言葉は途切れてバサッっと倒れる音がした。
直ぐ様窓を閉めると、玄関の鍵を閉めた。
この様子だと外は全滅だろう。
「どうなってんだよ!・・・祐司か、アイツが撃ってたからそれで狙われたのか?」
机を殴るとM16に弾薬を装填する。
「畜生。敵は取る。絶対にだ。どこからでも来やがれ」
二階上がると壁を背にして銃を固定して寝転がる。腹這いになれば銃身が上に跳ね上げることは防げる。一階に数名の足音が響いてきた。それは徐々に近づいて来て階段を上ってくる。
「先に撃つか?いや、ドアを開いて入ってきた瞬間に打てばこっちが有利だ」
自分に言い聞かせると静かに入ってくるのをまった。
扉の前で一旦止まるとドアノブがゆっくりと回る。
扉が開くかと思いきや何かがコロンッと投げ込まれた。
「これは?」
気づいたときには遅かった。眩い閃光と共に爆破に巻き込まれる。
辛うじて意識はあったが、目の前には銃口があった。
パシュッ。
海岸線を歩きながら酒井学は考えていた。このまま一人でここにいるのは危険ではないかと。
目の前には小さなほったて小屋が建っていた。
中には食料と大きなナイフ。マチェットナイフが落ちていた。それと棚には迷彩のツナギが置いてあった。酒井学はすぐにそれに着替えると手近なヘルメットをかぶり食料をもち山の中腹を目指した。
そこでさっきから後ろの方角で銃声の音がするのに気がついた。
「バカな奴等だ。自分の位置を教えてどうするんだ❗」
フンッ っと鼻をならすと後ろを振り向くことなく前を目指した。
軍用基地のようなところには5人の学生がたむろしていた。
態度も体もでかい岡野達也とその取り巻きでいつも弱いものいじめをしてしか自分の立ち位置を示せない小島健二。
細い貧相な体つきに猿のような顔立ちは小者を思わせる出で立ちだ。
もう一人の取り巻きは中野和彦。
腕っぷしは岡野達也に劣るがそれなりに体格のいい青年だ。
ラグビー部で体を鍛えているだけあって爽やかさもあって女性受けがいい。
岡野達也と喧嘩で負けてからよく一緒につるむことが多い。
「ねー暇なんだけど~」
そういったのは三神怜子。
茶髪のウエーブのきいた髪にド派手なピンクのリボンを付けた今時のギャルである。
いつも、メイクをばっちり決めていて化粧をとった時の素顔は誰も知らない。肌は焼け過ぎというほど浅黒く、
岡野達也にいつもくっついていた。
「あたしらちょっとそこら辺行ってくるしー」
「勝手に行動するな」
「ってか、トイレだしー」
「着いていってやろうか?」
岡野達也の言葉に軽く手を振り女子二人は奥へ歩きだした。
もう一人の女子は鈴木真理。
同じく浅黒い肌と似たような化粧をしている。いつも三神怜子と共に行動している、もう一人のギャルである。
明るい金髪をショートカットにしていて頭にはこれまたでかいリボンがのっている。
色は真っ赤で白のドット柄だった。
「このままあいつらと一緒にいていいのかな?」
「確かに生き残るなら隠れた方がいいんじゃん?」
「だよね~」
「このままフケちゃう?」
「それいいじゃん?」
コツッン。
「なにこれ?」
「えー拳銃じゃん。サツが持ってるやつ~」
「じゃーうちら最強じゃん?」
「あははっ。確かに~」
二人はピストルを一個づつ拾うとスカートの腰に挟んだ。
下に弾薬が転がっているのも気付かずに。
そのまま、二人は帰って来なかった。
「あいつらどこまで小便しに行ったんだ?」
岡野達也は苛立っていた。態度はでかいが小心者なのである。
お山の大将でいられるうちはいいがそうでなくなったとき逃げに徹したいのである。
しかし、取り巻きの前では意気がって見せていないと見放されるのではないかと気が気でないのだ。
「見に行って来る、どうせあいつら遊びだしてるんだろうしな」
中野和彦は立ち上がると歩き出した。
「いや、ここはバラけるのは得策じゃないな。俺も行こう」
「優しいじゃねーか?いつもはほかっとくのに?」
岡野達也は立ち上がり、中野和彦の横に並ぶ。
「たまにはな。道に迷うと可愛そうだろ?」
「あぁ、そうだな」
中野和彦は納得したのか、全く疑ってなかった。
「待って下さいよ~俺もいきますぅー」
小島健二がその後を追ってゆく。




