望みを賭けて
車に乗っていたのは4人だったらしく、屋上に待機していた荒木俊介のお陰で病院に入る前に狙撃だけで完全に殺す事に成功した。
いや。正確にいうのなら、俊介の当たったのはかすり傷だったりと直接死に至らしめるものではなかった。ほとんどが澪が頭部や心臓を狙ったお陰といえよう。
そんなことまで考えていないメンバーは大いに盛り上がった。
「俺らが組めば最強じゃないか?」
「だ~か~ら~。組まないって言ってるだろう?」
犬飼要だけは認めなかった。澪の近くに悪い虫を近づけたくないのだ。
「そんな事いうなよ。要だって生き残りたいだろう?一緒に手を組む位は良いだろう?」
「あなたもしつこい人ですね」
「バイクが接近中。4台狙撃は難しいかも。入られるのを覚悟しないとダメかもな」
「分った。おい、一階に降りるぞ」
「指示しないで下さい」
中野和彦の言葉に犬飼要が反応した。その時澪が降りてきていて合流した。
「要、行くぞ?」
「サポートはお任せあれ」
喜んで澪の後を付いていく。
「俺には冷たいなぁ~ま、落としがいがあるってもんか?」
達也と和彦と健二は澪達の後を追う。
この時健二は一つの考えを実行しようとしていた。
「お前さえ、、、お前さえいなければ、、、」
達也は健二の異常に気づくと問いただそうと足を止めて振り替えると拳銃を握り締め、血走った目で前を見つめる健二の姿があった。
「健二?どうしたんだ?まぁ、落ち着けって!」
何を言っても今は届かない。敵が侵入しようとしているときに、ここで揉める訳にはいかなかった。達也は健二の腕を掴むと病室に連れこんで説得しようとするがいきなり走り出してしまった。
「健二ー!」
声をあらげてしまったので、結構大きな声が出てしまっていた。前の和彦も要も一旦振り向くと驚いた顔でこちらを見つめた。
それもそのはず、今まさに健二の手には拳銃が握られていて、それを前の仲間に向けていたからである。
「何のつもりだ?」
「奥田澪ーーー」
和彦の質問より健二の叫びが早かった。そこで健二の狙いが分かったのである。
和彦には仲間に銃口を向ける事は出来ても引き金を引けなかった。
しかし、健二は連続して発砲していた。
前に突き飛ばされる澪の目に映ったのは真っ赤に染まる空間だった。血飛沫が周りに飛散して目の前を赤く染める。あっという間の出来事なのに、ながいスローモーションのようにうつった。
何があったのか、一瞬理解したくなかった。
一応は仲間のはずの一人から撃たれたのだ。
それも、自分を庇うために犬飼要が床に倒れている。そっと手を伸ばして脈を見ると微かだがある。
すぐに回復キットを使えば助かる。
「回復キットをくれ。今なら間に合う」
和彦と達也は首を振った。持っていないと。
「何があったんだ?」
荒木俊介からの無線に誰も答えることは出来なかった。
「おい、どうしたんだ?返事をしろよ」
健二はその場に座り込むと弾の入っていない銃をもってぶつぶつと呟いていた。
「お前さえいなければいい、いなくなればいいんだ。お前さえ・・・」
澪は立ち上がると『ソイツを縛っておけ』と達也にいい放つと、和彦に『付いてこい』と誘った。
「今から回復キットを奴等から奪う」
「持ってるかどうかもわからないのにか?」
「殺せばわかることだ。行くのか?行かないのか?どっちなんだ?」
「一緒に行かせて貰うよ」
なら、サポートではなく皆殺しだ。と呟いたのだった。
ゾクッとした寒気が走った。たかが女の子だと甘く見ていると火傷では済まない気がしたが、その半面落としてみたくもなった。
「一人は怪我してる。残り二人はダメージを与えられなかった。今、一階の入り口に入った、これから俺も下に降りる」
俊介はそういって無線を切った。
澪は走り出すと一階の受付ホールに入ってきた3人組に連射する。
タタタタタタタタタタタッ。
ロビーにこだまする銃声。威嚇で撃っているのかと思ったがそうではないらしい。残りの二人の足を撃っていたらしい。そのまま滑り込み受付の下に潜り込む。椅子を上に投げると、すぐさま飛び出してうちに掛かる。
見事な攻防だった。
こんな戦いが一緒に出来るとは・・・喜びにうちひしがれていた。
中野和彦もまたベクトルを構えてうち始める。
コロッコロンコロン。
と丸っこいものが転がってきていた。それが手榴弾と気づいた時にはもう、逃げてる暇などなかった。
柱を挟んで反対側に回り込んだ。
ドォーーーン。
大きな音と地響きが鳴り響いた。耳がキーンと鳴っていて音が掴めない。澪を探すと窓際に吹き飛ばされていた。敵は自滅覚悟だったのか?と思っていると瓦礫の下からくぐもった声がしてきた。
近づいて見ると回復キットを使おうとしていた。それを取り上げると和彦は動かない右腕の代わりに左で持った瞬間、中が開いて自分に使ってしまった。
敵を探しだして荷物を探すともう一人も回復キットを持っていた。
すぐさま倒れた澪に駆け寄ると回復キットを使った。
傷が治ると、澪は飛び起きて回復キットを探した。だがあるのは、空のケースが2つだけだった。
「何故だ?何故、私に使った?」
「女性の肌に傷が残るのは耐え難いんだよ」
確かに重症というわけではないので包帯を何度も巻けばいいのかも知れないが、それでも、澪に使いたかったのである。それは、喜ばれる事だと思っていた。
和彦は澪の反応がどうしても腑に落ちなかった。




