始めての勝利
橋の横の草むらに隠れてバイクの音が近づくのを待つ。
中野和彦は右側から、岡野達也は左側に腹這いになると銃を握り締めた。
練習などしている余裕はない。ぶっつけ本番だ。
奇襲ならよっぽど負けないという和彦の自信に引っ張られ今、こうしてここにいる。
「逃げた方がいいんじゃないですか?」
情けない声を出しているのは橋の下にちゃっかり隠れている小島健二である。
「黙ってろ」
岡野達也の苛立った声を聞いて、慌てて口を閉じた。
確かに、今すぐにでも逃げ出したい。
しかし、今逃げ出したとして全てが敵ではしょうがない。
クラスメートと合流して同じグループに入れて貰うか?
そもそも、そんなことが出来るのか?
それに皆が生きている保証だってない。
頼られるのも、まっぴら御免だ。
そもそも何で俺がこんなことをやらなきゃならないんだ?
もしかしたら死んだら夢でしたってオチになってないだろうか?
頭を振ると頬をつねってみた。
これは現実だ。どうすればいい?
今俺が出来ること、それは・・・今から来る奴を倒すこと。
決して人殺しをする訳じゃない、ゲームだ。ゲームをやってるんだ。
自分に言い聞かせるとスコープ越しでバイクを覗く。次第にはっきりと見えてくる。
乗ってるのは迷彩服に身を包んでガスマスクをし、ヘルメットをかぶった男の姿だ。
運転席と後ろに一人、サイドカーに一人だった。
中野がいうにはバイクも、車も運転手を先に殺せば制御が出来なくて自滅するというのだ。
もしも、左右に飛び降りたとしても無傷ではないだろうからすぐには体勢を立て直せずに格好の的になるそうだ。
岡野達也はAK47を構えるとスコープのメモリを見ながら首もとに標準を合わせる。
そして決めていたラインを越えた時点で引き金を引いた。
ドフンッ。
凄まじい衝撃が腕から体にかけて走った。
そしてレンズを覗き込むとヘルメットは飛んだものの、今だに健在で走って来ている。
これでこっちの位置もばれてしまった。
橋の下に隠れるか?
いや、今更遅いか。
立ち上がれば確実に狙われる。
振り返ると健二の姿が映った。
「健二ー奴等に俺達の位置がばれた。今のうちにお前だけでもここから逃げろ!」
「そんな~~どうやって逃げるんですか~」
「今なら橋の方を警戒している。もうちょっと左側の、土手から上がって走れば気づかれない。行け!」
「はい。絶対生き残りますから」
そう、言い残すと左側の方へ走っていった。
どこから上がったって一緒だ。向こうからはこっちが丸見えなのだ。
なら、挟み撃ちにされると思わせて健二の方に意識が向いたときに狙うのが得策だった。
パシュ。パシュ。
岡野達也の目の前の土がいきなり舞い上がる。
同時に横の草が舞った。
少しでも動いていたらヤバイ距離である。
レンズ越しに見ているとバイクを停めてそれを盾に使っている。
次の瞬間、左後ろ辺りに狙いを定めた。
きっと、健二が逃げる姿を見たに違いない。
そこをチャンスとばかりにヘルメットのない男を狙う。
ドフンッ。
男が吹き飛び後ろに倒れた。
ヨシッと心の中でガッツポーズを決めていた。
それから次にレンズを眺めたときにバイクが弾けとんだ。
ドオーン。
と大きな音と、炎が辺りに散らばった。
起き上がり中野和彦を見ると、親指を真上に挙げてニヤッっと口許に笑みを浮かべると勝利を宣言した。




