裏切り
今は日陰で休憩している浅野裕也の横には平田麻都佳と永井芳子、山口夕美が囲っている。
それを影から見つめる久納悟の姿があった。
永井芳子と山口夕美が今は悪さを出来ないと知ると、久納悟は周りを見回して家が近くに有るのを見つけ先回りした。
何か危ないものでもあればきっと、平田麻都佳を亡きものにしようと動き出すに違いなかった。
ドアにも表札はなく、鍵も空いていた。
手榴弾が3つもあり、拳銃が部屋に置いてあった。
「こんなものをあからさまに置いておくなんて・・・」
グチグチといいながら全部片付けた。
隣の倉庫に全部しまうと鍵を掛けた。
ナイフ一つ残さず綺麗に片付けてしまったのだ。
倉庫の鍵は制服のチェーンに引っ掻けて置いた。
ハンドガンのみ、ズボンの背に突っ込んだ。
「これでよし、っと」
岩場に戻ると、さっき久納悟が片付けた家に行こうという事になったらしい。遠くで花火が上がっているのか軽い音が鳴り響いていた。
「夜に花火でもあげてくれれば良いのにな?」
浅野裕也は呑気な事をこぼした。
「それはきっと綺麗ね。ここは街頭もなくて真っ暗だもの。そう思わない?」
平野麻都佳は何気ない仕草で永井芳子と山口夕美に問いかける。
「そうね。」
「私達も一緒に見たいものだわ」
さすがに浅野裕也の手前無視するわけにもいかない。
「私達、先に家の方にいってみてくるわ」
「悪いな、助かるよ。麻都佳とゆっくり行くよ」
そういうと早足で向かった。
浅野裕也と平野麻都佳を二人っきりにするのはシャクだが、先に家に入れればどうとでもなる。
「何かアクシデントが起きて大怪我でもすればいいんだ」
「何も無いのね~ナイフや包丁すら無いわ」
「そう言えば裏庭に倉庫があったよね?」
「いってみよっか?」
倉庫に向かうが厳重に鍵がかかっていて開けられそうになかった。
「これって飲み物よね?」
永井芳子が持っているのは青い缶に赤い十字架のかかれたenergy-drinkとかかれたもの。
「エナジードリンク?元気になる飲み物かな?」
「平野麻都佳に飲ませてみようよ」
「いいねーこれで死んでくれればいいんだけどね」
こっそりと缶を隠し、自分達用の水を確保する。
浅野裕也が到着するとコップに水を汲んで手渡した。
勿論平野麻都佳にだけはエナジードリンクを入れてだ。
普通に飲み干すのを見て、無味無臭であるので気づかないのだろうとつい、にやけてしまった。
それからソファーに腰かけると近くで乾いた音が響いて次に車のエンジン音が近づいてきた。
外に出ると、ごっつい幌の付いた車がこちらに走ってきていた。
「救助隊の人じゃない?」
平野麻都佳はここがどこかの島で、きっと自分達を探している人が見つけてくれたのでは無いかと考えたのだ。
「いい感じのリゾートみたいで楽しかったけどな」
浅野裕也は平野麻都佳の肩を抱くと車に手を振った。
中に乗っているのはミリタリーウエアを着込んだ自衛隊風の男達だったからだ。
永井芳子は悔しいまま、後に続いた。山口夕美だけは倉庫の鍵を開けようと今も裏庭にいた。
車の音に気付きこちらに顔を出した瞬間、あらぬ光景を目撃することになった。
それは今まさに目の前に停まって出てきた男達がいきなり発砲したからである。
サブマシンガンを撃ちまくる二人の男達とそれを眺める残りの二人。
男女三人が動かなくなると、家の中に入っていった。
中にはいると直ぐに出て来てどこかに走り去っていってしまった。
残された山口夕美は三人の元へ近寄った。
すると、平野麻都佳にはまだ息が有ることを知ってしまったのである。
「あんただけ生き残るなんてね、皮肉なものね」
近づくと首に手を掛けた。
「楽にしてあげる」
力を込める。
パーンッ。
乾いた音がして山口夕美の肩口からは血が流れ出てきた。
後ろを振り返ると久納悟の姿があった。
手には拳銃が握られていた。
「うっ、あんた。」
痛みと目眩で体を支えることが出来ずにその場に倒れ付した。
久納悟は近づいて来ると山口夕美を蹴り飛ばし、平野麻都佳の前で膝を付いて抱き締めた。
足元に拳銃を置き初めて好きな人を抱き締めたのだ。
しかも今にも死にそうな彼女を。
胸が張り裂けそうだった。一回たち上がると医療用キットを持ってきた。手当てをする気だった。
そこでさっき地面に置いた拳銃が無いことに気付き探していると背中に固い物の感触があたった。
「よくもやってくれたわね。ストーカーの癖に・・・」
「お前達が悪いんだ。僕の麻都佳を・・・」
「いちいち気持ち悪いのよ」
引き金を引くと久納悟の心臓へと弾は吸い込まれた。そしてそのまま、弾は貫通し平野麻都佳へと到達
する。
「誰があんたなんか・・・」
その場に倒れ込むと山口夕美は動かなくなった。




