七話vsアルルグ1
目を覚ますと視界に移ったのは知らない天井だった
寝ているベッドも固く、体にかけているのは薄い布一枚だった
「え....?」
思わず飛び起きた
回りを見渡すとまだ寝ている厳ついおじさん達と汚い壁があり...俺が使っていた部屋じゃないことだけが分かった
寝起きの混乱してる状況で必死に昨日の事を思い出そうとして....
「ああ....そっか。ここギルドの部屋か....焦ったぁ」
ここで起きるのかよ....引っ越しした日の寝起きどこか分からず驚くやつ...
まあ、それは良いか...それより...異世界での初めての夜.案外直ぐに終わるもんだな...
さてと...いつものメニュー済ませるか
部屋を出て昨日の記憶を頼りにギルドの訓練場に向かった
外は今から太陽が登り始めるのか薄暗く、人気が全くと言って良い程無い
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「はあはあはあ....まあ、こんなもんか?」
部活でやる地味にハードな練習メニューを終わらせ
近くに設置されてある給水所で喉を潤した
運動する理由は特にない
今までずっとしてきたメニューだし、ステータスが上がってるせいで逆にやり易くなってる
ただ...動かしてないと体が鈍りそうだったから何となくやっただけだ
それに....体を動かしてないとアイツの事思い出しちゃうし、単にすることが無くて暇だからな
「早く強くならないとな.....せめて大事な人を守れるようになるまで...」
昨日俺が戦えたのは。。。現代の科学技術のせいでもあるんだよな...今更ながら
VRMMORPG....それをやっていたおかげである程度は戦えるとは思う...PVPもあったし...でもやっぱりあれはゲームなんだよな、と戦った今強く思える
人に刃物を向けるときの緊迫感、肉を切り裂く時の感触、本当の殺気をぶつけられる感覚、そしていつ自分が今まで殺してきた動物と同じようになるのか?その恐怖、
ゲームでは感じたことのないもので....とても新鮮だった当たり前なんだけど
「はあ....双剣か...ゲームで使っとけば良かったな...」
使ってたのって両手剣なんだよな...単純に使いやすかった
片手でも使えなくは無いが両手のが良いってのが良かった、万が一は片手で振るって余った手を使えるんだから
双剣は...マイナー過ぎて殆ど人が使ってなかった、AGI特化の奴は使いそうだけど...そんな奴居なかったしな
何となく空を見上げてみると、もう太陽は完全に出ており
いつの間にか辺りは明るくなっていた
「もう昇ったのか...早いな...さて...朝食食べるとするか」
ギルドに戻ると、俺が訓練場に行くまでは仕込みの人以外居なかったのにもう沢山の人が集まっていた
その中にはリンクさん達もおり、俺二人が座っている所に行くと
「おはようございます」
「ん?ああ、おはよう」「.....ん」
....ルウガさんって無口だよな
一回も声聞いた事無い気がする...人見知りなのか?それとも警戒されてる?
警戒されてるなら何故?記憶がないから疑われてるのか?じゃあ何を?
「おい、突っ立ってどうした?。早く座れよ」
「....え?、ああ、はい」
リンクさんも言われた通り座ったが...
リンクさんは普通にしているがルウガさんはずっと見詰めてきてる
やっぱり、何かを探られてる?俺を異世界者だから?、有り得ないな第一何で俺が異世界者だと分かる
....考えても埒が明かないな、直接聞くか
「ルウガさん」
「......何だ?」
「何故さっきから俺の事見詰めてるんです?何かしましたか?」
「....いや、何でもない」
「ああ、コイツかなりの人見知りでな....無言で見つめ続ける事がよくあるんだ、気にしないでくれ」
「え?...は、はい...」
人見知りか...なんだ....
って本当に人見知りか?....訪ねた時に直ぐ目を逸らしたがまた元に戻してるし、絶対に何かあるだろう
人見知りならこの場合、相手は気にしてるなと思い、大抵は止めるもんだ...多分
それに...何故ここで朝食を食べるんだろうか?
昨日の晩はここでは食べていない、なら泊まっている宿もしくは行き付けのお店があると言うことだ
じゃあ、何故ここで食べる?、わざわざここで食べなくても良いだろう
「リンクさん達は何故ここで朝食を?」
「ん?悪いか?」
「いえ、気になっただけです」
「そうか」
気にしないでおくか?
リンクさん達が俺を異世界者だと特定することはほぼ不可能だ
なら、何の心配も要らないだろう
リンクさん達が敵になるって事なら別だろうが...どっちにしろ俺には情報源がないんだ、
対処法がない、だから...気にしても無駄..か
さっさと朝食とって依頼しに行こう
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依頼を受けて歩いて廃村に行くと...
何人かの冒険者?グループを見付けた...ゴブリンを狩りに来たんだろうな...
ゴブリンは一体倒す事に2スピナ、だから1日一人辺り30匹狩れば稼ぎにはなる効率の良い魔物だ
確か...ゴブリンに捕まった女性を助けると銀貨2枚と感謝金で+α何か貰えるらしいから一攫千金も狙える
まあ...俺にはどうでも良い話だ、そんな女性見付けたら助けるが...そう簡単には見付からんだろう
人が居ないであろう奥へ行きしばらく歩き続けると
「gosyugogi」「guajakanak」「hajajdkduk」ect....
お?ゴブリンの声か?
声の聞こえる場所へ慎重に歩きながら向かうと
5体のゴブリンを見付けた。ゴブリン達は俺には気付いていないようで平然と会話?していた
「んじゃ。行きますかね」
ゴブリンの所へ走って近付き、一番近くの奴の首を刎ねる、
刎ねたゴブリンを蹴り飛ばし、他のゴブリンのバランスを崩さしてから息の根を止める
残った二体をそのまま突き、薙ぐ...
「うーん」
本当にゴブリンって弱い
何でだろうか?。こんな体が小さいなら早さ勝負に持っていって翻弄する。それが普通で当たり前だよな?
何故コイツらはしないんだ?、たまたま俺と戦う奴らが雑魚いだけか?
「まあ、気を付けていこう、こんな所で死ぬわけにはいかないんだから」
更に奥へと進みゴブリン探すが一向に見付からなかった
真横にある森へと逃げたか?....行ってみるか?いや...森は危ないし...でも...
「このままじゃ稼ぎならないし少しだけ入ってみるか...」
決心し森へ入ったが...少し歩いただけでは何も出ては来なかった
通った場所の木を目印になるように切っていき、奥へと進んだ
念のため戻って確り目印になるかを確かめながら
「ん?....やけに静かじゃないか?」
さっきまでは鳥や虫の鳴き声が聞こえていた気がする
だけど...何故か今はその声が全くと言って良い程聞こえない
「ヤバイな....そろそろ帰ろう」
そう思い、振り返ったとき
背筋が凍り付くような感じがして..そして、アルルグと対面したときよりも強い殺気を感じた
ははは....マジかよ...どうする?どうするどうするどうする
ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイ、死ぬ、死ぬ死ぬ死ぬ
それだけが頭をグルグルと回り、本能が警告音を鳴らしまくる
ゆっくりと、顔を後ろに向けると.....
「はあはあはあ....何も...居ない?」
じゃあ、何だ?今も続いてるこの恐怖は
どこからだ?、後ろにも前にも横にもいない....念のため上や下も見たが見付からない
「なん...だよ...これ」
何だ?これは何なんだ?
夜じゃないから回りはしっかりと見渡せるんだ、じゃあ何で何もいないのにこうなるんだなよ
もうこの状況が嫌になり俺は目印を辿りながら必死に走った
すると、後ろからノシッとした何かが静かに着地したような音が聞こえた、走りながら振り返ると....分かった、いったい何が俺に恐怖を与えていたのかを
「ははは.....マジか...あんなデカイ、アルルグいるのかよ」
体高だっけ?地面から頭までの長さ、それが大体3メートルあるじゃん
体長は分からんが、それだけでも驚異だ
俺が最初に遭遇したアルルグの倍はある...もうやだ
取り敢えず逃げろ、逃げろ逃げろ逃げろ、考えるな今は走ることに集中しろ
「くっそがあああああああ」
てか、一体何処に隠れてたんだよ!
分かってんだよ!木の上だよ!でも何で一度上を見たときに見付からないんだよ!
涙目になりながら必死に走り、そして....森を抜けた
後ろを振り返ると....何故かもうアルルグは居なくなっており...殺気も消えていた
「え...?」
何故襲ってこない?
俺があの場所に入ったから現れただけとか?追い出すために?
それなら良い、俺が悪かっただけだ、もう近付かないでおこう...こんな思いはもうごめんだ
でも....良かった、死ななくてすんだ
「はあ...はあはあはあ」
良かった、助かった、死ななくてすんだ、そう安心していた
帰ろう、そう思い森から町の方へと体を向けると.....
「え....?」
目の前には....居なくなったはずのアルルグが俺を見詰めていた