三話
小鳥が近くで鳴いているのかその普段聞かない音で目を覚ました。
目を開けるとそこには見知った天井は無く、木々の枝や葉、葉の間から大地を照らす優しい木漏れ日があった。
どうやら俺は地面に仰向けに倒れているらしい。
「ここどこだ?……」
体を起こししばらくぼうっとする頭を徐々に回転させていき、今の現状を思い出した。
そうか、俺、異世界に連れてこられたのか………
回りを見渡すと、苔が生えた土、生い茂った見知らぬ花々や木々、そして、こちらを不思議そうに見る。角が生えたウサギや、カラフルな鳥たちがあった。
「角が生えたウサギか……本当に異世界に来たんだな。」
そう自己確認をして、立ち上がる。すると
腰辺りに違和感があった
「なんだこれ?」
服は着ていた制服とは違い、日本では考えられない程雑な作りのTシャツと茶色い短パン、そして左右の腰辺りに1本ずつある鞘 短パンのポケットに何か入ってるのか、ちょっとした突っかかりがある。
二本も刀が入った鞘を持っているのに、ずっしりとした感じはなくしっくり来ている。多分だが神が何かしたんだろう。
左側の鞘から刀?を抜くと、手にはずっしりとしているのに何故かしっくりくる重さを感じた。刀身は真っ直ぐの両刃、掲げてみると日光を反射し綺麗な光景が目に映る
これ刀か?普通の剣では?と思うが剣を鞘に戻した。突っかかりも起きず、刀?を鞘に戻すと、ポケットに入ってるものを取り出した。
それは..白い封筒だった
「手紙か?」
『神からのアドバイス』そう書かれている表、裏には何も書かれていないので中身を取り出し、折り畳まれた手紙を広げ中身を読んだ。
『無事に着いたか?、着いたよな?、この手紙を読んでいるんだから着いたと仮定する。
まずは俺の世界『ルミナリス』にようこそと言っておこう。その世界は地球と比べ貧困が激しく、生死の重さが軽い、なんたって奴隷とかいるからな。文化レベルも低いし科学や医療が発達していないから、絶対に生きにくいだろう。
だが、その代わりに魔法がある。生活に便利な生活魔法、戦闘に有利になる戦闘魔法などだ、これらは科学と比べるとくだらない物かも知れない。だがこの世界で生きていくためには欠かせない代物だ。
次にお前についてだが、「ステータスオープン」と強く念じてみろ、そこにはお前のステータスやスキル、魔法が載っている。 ステータスは本来この世界には無いものだが転移者には見えるように設定してある。
スキルや魔法の発動は常時発動や条件自動発動のパッシブ型、任意で発動するアクティブ型がある
アクティブ型はスキルや魔法の名の発言が発動条件だ、まあ念じるタイプも少ないがあるっちゃあるがな。
最後だ、レベルやステータスの上昇はモンスターや生き物を倒すことや身に覚えた経験が重要となる。
スキルや魔法の獲得は経験だな。
だから、まずは色々試せ。そして世界を見て回れ。そうすることできっとお前自身が成長するだろう。そして、死ぬな、死なれちゃ俺が困るし家族を救えなくなるぞ。
最後が脅しになったが、これで伝えたいことは伝え終えた。この手紙は読者が読み終えた段階で光になり消える。ばれたらヤバイからな。じゃあな。頑張れよ、健闘を祈る』
読み終えると書いてる通りに光の粒となって消えた。
えっと、まずステータスオープンって念じるんだっけか。
(ステータスオープン)
八神悠斗 (16)
lv 1
mp 50/50
『ステータス』
STR(E) INT(G) VIT(F) AGI(E) DEX(D) SEN(S)
『スキル&魔法』
二刀流
初級風魔法 ウィンド(20)
生活魔法 クリーン(10)
鑑定*念じるだけでOK
???
共通翻訳機能
ステータスは数値じゃなくてランク式か……G〉F〉E〉D〉C〉B〉A〉Sかな?
それにしても、STR,DEX,AGIが二刀流扱うために高いのはわかるが……SENがSって高すぎないか?
まあ二刀流が神の解説通りならsense...才能が高いのは分かるけど、最高値(多分)ってやりすぎだろ
それに魔法か……()が消費mpってことで良いのか?それと???ってことはなんだろう?、翻訳機能はまあ文字通りだろう。
今はわかることだけ、やってみよう
「試してみるか、【ウィンド】!」
手を真っ直ぐ伸ばし、叫ぶと体から何かが無くなったような感じがしたあと、手から風が出来た
ボールとかが出来るんじゃなくてただ風を生むだけか……まあまあ強い風っぽいから、砂を空中にばら蒔いて使うと目潰しとか出来そうだな、もしくは、相手が同様にしてきたときの壁としてか……微妙
次だ次
「【クリーン】」
そう言うとまた何かが無くなったような感じがしたあと、全身が泡風呂浸かってるような感じがした、見た目になんの変化はないが、体が風呂あがりのようにすっきりしている……
風呂がない場合での体を清潔にするための魔法か、これは戦闘には全く使えないが便利だな。さすが生活魔法。
「最後は鑑定か」
(鑑定)
すると目の前に草木の名前や状態などが表示された。
アレンカの花(枯れかけ) ヤガの木(正常) ヤガの実(正常、毒があり食べられない)ert
「おおお!」
これは便利だな、草木に隠れてるはずの生き物は見られない為、見えている範囲だけだが全て見られる。それに
意識さえすれば一個だけに絞ることも出来るな。
鑑定で回りを見渡していると突然背中が凍り付くような感覚になり...茂みからガサガサといった音が聞こえた。
何事だ?と思いつつ音がした方に体を向けると、そこには...
「.....は?トラ?、おいおいマジかよ」
その体長は大きく動物園で見るトラと同じくらい、もしくはそれより大きかった
鑑定で調べてみると...
アルルグ (出血)
lv 20
ヨンガ山に生息するなかで最強の肉食獣
普段は山の奥底に住み、角ウサギやアルンガなどを主食としている、
ソロ討伐推奨lv25以上
マジか………運がねえええー、
なんで最初のエンカウントが肉食獣(最強)なんだよ……もっとましなところに飛ばせよ、
生きろって言われても無理じゃん
「うわっ!?」
アルルグは俺を見付けると何かを放ってきた....それを受けると頭が逃げろと警告音をならす、だが体は反対に重くなり痺れてきてる...こわい
普通に考えると殺気だろう...野生の肉食獣が人間を見付けたのだから
俺は本能のまま逃げようとしたが...重くなり痺れている体では思うように動かず転んだ
「いって....」
立とうとしたが足が震え、言うことを聞かない...そうしてる間にもアルルグは近付いて来ているというのに...
ヤバイ....やばいやばいやばい。死ぬ....嫌だ
足掻こうとアルルグを見ながらも腕と足をなんとか動かし後ろに下がったが、その度に近付いてくる
「だ...れか。たすけ...」
そんな助けの声も虚しく、アルルグは俺に飛び掛かってきた
その動作はあり得ない程遅く停止してるかのようだった.....また死ぬのか?、嫌だ...嫌だ嫌だ嫌だ、逃げたい
だが...体は言うことを聞かずあまり動かない....
「はははは....ごめん....凪沙、俺守れなかった...ごめん」
俺は妹に謝ってから目を瞑った。
怖かったからだ、襲ってくるトラを見るのが、生きているまま自分が食われていく様を見るのが...
恐怖によって瞑った目には涙が滲んでいて....目を強く瞑り死ぬ覚悟を決めた
だが..覚悟とは裏腹にどれだけ待っても来るはずの痛みは来なかった、その代わりに男性のような声とアルルグが吠える音、そして金属が何かにぶつかったような鋭い音が聞こえてきた
恐る恐る瞑っていた目を開けると....
「え?....」
目の前には二人の男性がいて、一人がアルルグの攻撃を受け止めていた
もう一人は俺に気付くと近寄ってきて...
「大丈夫か?」
「...あ...はい」
「そうか良かった、取り合えずここにいろ、」
「.....はい」
それだけ言うと。男性はアルルグを抑えていた男性の所に行き、アルルグと戦い始め
あっという間にアルルグを倒してしまった....
「すげえぇ」
アルルグを倒した後、さっきの人が俺の所に来た。
男性は俺の目の前に立つと手を差し伸べてきて、その手を掴むと凄い力で体を起こされ立ち上がった
「あ、ありがとうございます。助けていただいて」
「良いさ。それよりお前は?俺はリンク、アイツはルウガだ」
「お、俺は悠斗です。八神悠斗」
「変わった名前だな。それに名字持ちか...お前さん貴族か何かか?何処に住んでいる?」
そうか、この世界じゃ名字持ちは貴族なのか...
そして『スキル』共通翻訳機能のおかげか言葉は通じるな
さて....何て答えようか。
さすがに「異世界から来ました!」何て言っても通じないし。。。寧ろ危ない奴だと思われる
なら、どうする?。無難に記憶がありません。とかがベストか?
「いえ....その...分かりません」
「分からない?」
「はい...その...何も思い出せないんです」
「.....そうか...ちょっと待ってろ」
「はい」
それを伝えるとリンクさんは困ったような顔付きになり、ルウガと教えられた人の所に行き何か話し始めた。
しばらく待っていると話し終えたのか二人は俺の所に来て...
「詳しく事情が知りたい、近くに町があるから取り合えずそこに向かおう」
「あ...はい」
そうして俺はリンクさん達に着いていき、町へと向かった