十五話
俺以外の模擬戦は終わった
5人とも地面に座り込み息を乱していた...なのにその5人を相手にしたリンクさんは息を乱さず、涼しい顔をしながら告げた
「次はユウトだ、掛かってこい」
「はい」
さて、どうやって実力を示そうか
分かっているのはこの前みたいな戦い方は出来ない事だけ
「では、行きます」
「おう」
リンクの返事を聞くと同時に前に右手で柄を掴みながら前に踏み込んだ
そして、剣が当たる範囲まで近付くと剣を抜くように腕を振るった
「っ!?」
剣を抜くと思いガードの構えをしていたリンクさんは何も持たず振り上げた腕を見て驚いき
俺はその間に左手で逆手に剣の柄を握り、腕を振り上げ、抜かれた剣はガードをしていない体に真っ直ぐ向かっていき...
ガキンッ!?
金属がぶつかる音が響いた
咄嗟に剣を動かしガードしたんだろう、振り抜かれた剣はリンクさんの剣とぶつかり、音を響かせただけだった
スローに見える視界で俺はガードされるのは分かったのでぶつかった直後に剣を左手から手離し、右手で受け止め握り、突くように腕を前に動かした
それをリンクさんは後ろに下がり避け
血が飛ぶ事無く、二人距離が開いた
「......すげえ...何が起きた?」
「わかんない、でもリンクさんが下がった」
「俺達じゃ動かすことも出来なかったのにな」
確かに5人じゃリンクさんを動かすことは出来なかず、俺は動かすことに成功した
端から見たらまあ上手く行ったように見えたはずだ....だけど...
「おいおいユウト、お前俺を殺す気か?」
「......すいません」
「いや、良いんだ、本気を出して貰わないと実力が測れないからな」
....正直避けられるとは思わなかった
二段フェイクをやったのに避けられた...リンクさんどんな視力してんだよ...
一回目は普通の抜く動作で抜かず、二回目は当たっても良いが防がれた場合次で仕留めるフェイク
そしてラストは一番避けにくい突きでのとどめ
「どうした?続けろよ」
「はい」
多分さっきのは通用しない...ならどうする?
自力じゃ絶対に勝てない、負けても良いかもしれんが負けること前提で挑んではいけない
なら、武器を奪うしかないだろう、俺に魔法は.....一応は出来るがただ風を出すだけなんて意味があるかもわからん
「はぁ~~~~ふぅ~」
「......」
出来るかは分かんない、でも出来るかもしれないのならやってみる価値はあるよな!
右手で握っている剣を普通に持ち変えて腕をだらんと下に下げたまま走り、剣が当たる範囲に入る直前で剣を振り上げた
リンクさんは自分に向けてそのまま剣を前に突き動かし、振り上げた剣を剣で守りながら俺に剣で突いてきた
前に体を動かしているので後ろには下がれず、横に移動しても剣を横に振るわれて切られる
「チッ!?」
間に合うか分からんがやるしかない
突いてきた剣を体を横に反らせ、胸の直ぐ横で剣が通りすぎ、当たり前に剣は俺を追うように此方に向かって滑るように振るわれた
右手で握っていってる剣で振るわれる剣受け止め、ほんの少し止めた時間で左手で右腰にある剣を掴み抜き、腕を引くように上げ、柄頭で剣の腹をぶん殴った
ガキンッ!?
殴られた剣は跳ね上がるって事には成らなかったが上斜めの軌道に変わり、少し背を反らせば避けることが出来た、剣が頭上を通り抜け、体を元に戻すと同時にリンクさんとは逆方向に体を回転をして通りすぎた剣を右手で叩き落とすようにぶつけ、さらにそのまま回転をして左手の剣をリンクさんの喉元に突き付けた
「チェックメイト」
「....おめでとう、ユウトお前の勝ちだ」
「「「「「おおおおお!?」」」」」
「ありがとうございました」
剣を鞘に戻した
5人とルウガが此方に向かって歩いてきてる
なんだろう...すげえ嬉しい....でも、目が痛い。そりゃあれだけ酷使すれば痛いだろうけど
「手加減していたとは言え勝つとはな、少なくともFランクには出来ねえよ」
「ありがとうございます」
「それじゃ昼は俺が奢ってやるよ、勝った奴にはそれなりのものをやらなあかんしな」
うーん...奢りか
こう言うのってお約束なパターンがあるよな...ニヤリ
「みんな!今日の昼はリンクさんが奢ってくれるって」
「ちょ!?待てユウト!?」
「よっしゃー、何食う?」「折角の奢りだし普段食べられない奴にしようぜ?」「おお、それ良いね、」「じゃあ俺はグランドベアのステーキにしよ」....
うんうん...予想通りの展開だ
お約束はやっぱりすべきだよな、だって困った顔してるリンクさんすげえ笑える
「あああ!分かったよ!今日は奢りだあ!」
「今日?なら夜も奢って貰おうぜ」
「ユウト...ちょっと前までの礼儀正しい感じは何処へ行った?」
.....こういう時どう答えるべきだろうか?
うーん...怒ってないみたいだし、普通通りで行くか
「......さあ?何処へ行ったんでしょうか?」
「マジかよ....まあ良いか、奢るのは昼だけだ!分かったな?」
「「「「「はーい」」」」」
「じゃあ、明日のひ....モゴモゴ」
「ユウト?調子に乗るなよ?」
「......はい」
明日の昼もって言おうとしたらリンクさんに口を塞がれた
うん、何事もやりすぎはダメだな....気を付けよう
「んじゃ、飯食いに行くか!」
「はい」
「「「「「はい」」」」」「.....あぁ」
訓練場を出てグルトンへ向かった俺達はリンクさんの奢りで昼食を取った
そして、食べ終わった後少しの間解散となった...俺以外は
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俺はリンクさんにギルドで待っててくれと言われ。今は飲み屋でキャリジュース(アップルジュースみたいなやつ)を飲んで時間を潰している。
最初、残された理由はさっきの奢りについてかと思ったが...多分違うだろうな
食べている間楽しそうにしてたし、リンクさんの性格上あの程度で怒らない...多分
なら、何か?...だが、まあさっきの模擬戦の事だろうとは思う。
今更だが俺は記憶が無い設定であり、一昨日はまあ惨敗した。考えてみて欲しい人はたった二日で此処まで成長をとげるだろうか?....もうやってしまった感満載だ
後悔しながらしばらく待っているととリンクさん達はギルドに入ってきた。真っ直ぐこっちには来ず少しばかり受付嬢と会話を何か受け取ってからこっちに来た。
「よう、待たせたな。」
「いえ、大丈夫です、それでどうかされたんですか?僕だけ居残りって……」
「いくつかお前に聞きたいことがあってな」
聞きたいことか...まあ、内容は思い付いている
どう誤魔化そうか....俺が転移者だとばれれば100%めんどくさい事に巻き込まれるだろう
今はこの世界に慣れ戦えるようのする、そういう準備期間である...そんな事になりたくない
「聞きたい事?」
「ああ、お前は俺達と初めて会ったとき、記憶が無いって行ったな?」
「は、はい」
「それは事実か?」
何故いきなりこんな話になるのか?っての思ったが...
さっきの模擬戦の事があるし....もしかしたらボロを出してるかもしれない
「はい、本当です」
だって元々この世界の事を知ってすらないんだから記憶があるはずがない
嘘はついてない、もし嘘発見器とか使われても大丈夫なはずだ....多分
「ふむ……そうか。ならもう少し質問して良いか?俺の目を見て答えてくれ」
「わかりました」
リンクさん達は椅子に俺と対面するように座った。俺はリンクさんの目を見ながら。どんな質問が来ても動揺
しないように準備した。
「そうだな。まず、ここフレスベルグを含めた数々の都市を領土とするのはアーズガルドって国なのは前に話したな。」
「はい」
「なら、アーズガルドに敵対してる国の名前は知ってるか?」
ヘエ、大きな国にもなると敵対国の一つや二つはやっぱりあるんだな。
何処だろうか?魔法の国かな?、似ているし
「いえ、知りません」
「そうか。なら次だ。お前はそのうち国からスパイとして送られたのか?」
ん?何で知らないって答えたのに。
その国のスパイを疑うんだ? 信じていないことまる分かりじゃねえか
「いえ、違います」
「そうか。なら次だ。お前は覚えていないとは言ったが。記憶を失ったとは言ってないよな?。そこんところどうなんだ?」
ッ!気づきやがった。どうする?....どうしたら嘘をつかずに信じ込ます事が出来る?
ばれたら結構面倒なことは目に見えてる...どうするどうするどうする
「そうですね、ある程度の記憶は残っています。名前だって覚えていたんですし。」
これで行けるか?。嘘発見器とか使ってても大丈夫な答え方なはずだ……多分
もし....これでじゃあ、名前以外は失ってるのか?って聞かれたら終わりだな.....どうくる
「そうか……そうだな。嘘は無いみたいだな。疑って悪かったな。」
「いえ、でも、どうして疑ったりしたんです?」
「俺達が初めて会った日、お前はアルルグに襲われてたな?」
「はい」
忘れるはずがない...来て早々に命の危機にあったんだから
でも、それがいったい?
「そして一昨日俺達が模擬戦をした時はお前は手も足も出なかった」
「そうですね」
「だが昨日、お前は初めて会ったときに殺されかけたアルルグを討伐し、そして今日お前は俺を手加減していたとはいえ倒した」
「はい」
「あまりにも成長が早すぎる、だから全部嘘をついていて俺達を騙していたと思ったわけだ、まあ実際にはそんなことは無かった訳だから申し訳ないとしか言えないがな」
......やっぱりか...まあ、疑いは晴れたようだから良いが....
でも、どうやって嘘をついてないって分かった?....マジで嘘発見器でもあるのか?
「いえ、疑われるような事をしたのは俺ですから気にしないでください、それよりどうして嘘をついていないって分かったんですか?」
「ああ、それはなこれのおかげだ」
取り出されたのは、俺が冒険者登録するときにさわった水晶みたいな物だった。
多分さっき受付嬢から受け取ってたのはこれだろう
「これって、俺が冒険者登録したときに触った奴ですか?」
「あー違う違う。似ているが違う。あれは魔力を計るだけの物だがこれは嘘を見抜く水晶だ。ただどっちも相手を見抜くという性質上、作るための素材がほぼ同じなんだ、だから見た目がこんなにも似ている」
なるほど、と言うかやっぱりそういう物あるんだな。嘘発見器は確か地球では存在事態はしていたが精度が高いわけではなかったが、この世界では100%嘘かどうか分かるのか...すげえな
「さて、話しはこれで終わりだ。午後の訓練には遅れるなよ。後色々疑ってこんなものまで使っちまったしな。飲み代は俺が払ってやるよ。」
「あ、ありがとうございます」
そう言うとリンクさんはテーブルに銀貨1枚を置いてルウガさんと共に受付嬢のところに行った。
ふう、なんとか乗りきった。まあ、多分だがまだリンクさんは疑ってるはずだ。記憶については少し濁したからな、当然気付いてるはずだ。それでも深く追求はしなかったのは、俺が敵ではないと解ったからだろうか
さて、これからどうしようか...リンクさんからの話はもう終わったみたいで自由時間にして良いんだろうけど....することが思い付かない
どうしようかと他の冒険者を見ながら考えてると....少し見ていただけの3人が俺の所に来た。
左がヒョロなモヒカン頭、右がデブっちょ、真ん中がリーダーであろうガタイが良い奴。
「何かようですか?」
そう聞くとさっきまで騒がしかった飲み屋が静かになった。みんな同情の目で見つめ少し距離を空け始めた。
はあ、なんかトラブルに巻き込まれたみたいだな、一難去ってまた一難か……最近ついてないなー。
「ああ、さっき、俺たちを見ていたような気がしてな、用があるんじゃないかと思って来たんだが。」
「なるほど、いえ、別に用が有るわけではないですよ。ただそれなりに強いだろうなと思って観察してただけです、どこの場所でも上下関係は大事でしょうから」
「確かに上下関係は大事だよな。お前らも見習えよ」
「「へい、分かりやした」」
二人は何故かずっとニヤニヤしてる……何か間違ったこと言ったか?
こういうチンピラにそういう事考える意味ないか....最初から悪いこと考えてるんだから
「そういやお前、見ない顔だな新入りか?。どうだ俺達のパーティーに入らないか?」
「そうですけど。……誘ってもらってありがたいのですが遠慮させていただきます。当分はリンクさん達と学ぶつもりなので」
「そうかそうか、邪魔して悪かったな。お互いに冒険者として頑張ろうぜ。」
「はい」
そう言うと。3人組は依頼書が張られているところに向かっていった。
それにしてもさっきのはなんだったんだ?他の冒険者が遠ざかったりしてたから何か問題を抱えてる奴だとは思ったが。なにもしてこなかったな....まあいいか、そのうち解るだろう。
その後も観察続けて気付いたんだがみんな何かしらの防具類を装備している。
やっぱり防具って買うべきなのかね...必要なんだろうな現に模擬戦ではもう少し遅れていたら胸を切られていただろうし...
胸当てとか買うべきかな?でもかさ張りそうだな....どうしよ....まあ、取り敢えず見に行くだけ行ってみるか
そう思い、俺はリンクさんのお金で飲み代を支払い、空いていたので受付嬢に場所を聞きに行った。
「あの。ここら辺にオススメの防具屋ってありますか?。 」
「それならギルドを出て真っ直ぐの所にアルマガって言う防具類屋がございますよ。」
「ありがとうございます」
良いのが売ってる事を願いながらギルドを出て教えてもらった防具屋へ向かった