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後継者  作者: 桃花
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上が続々結婚してしまい家を継ぐために実家に戻った。と言っても家業があるわけではない。先祖がこの地に入植した時に交わした約束を守るために戻ってきだけである

判りやすく言えば単なる墓守りである。両親が死んだらその墓を守っていくつもりである。私の代で跡継ぎが居なくなれば入植した時の約束はなくなる。また、村に馴染めなくて村八分と言うかんじになったら約束が無効とされる。

まあ、私が結婚しても子にめぐられなかった場合も約束は無効となるんだが。

故郷は現代社会なのにも関わらず妖怪が人間に混ざって生活している場である。魔法使いと言うか陰陽師と言うかそう言う類いの人が遭遇するような事が日々の生活の中であり得る。隣のおじさんが狐とか猫又とか普通である

「どうすっかなー」と就職について考える。高校卒業して直ぐ知り合いの紹介で遠方の会社に就職して10年間OLとして仕事をしていたが、こっちにはそう言う会社はない。無資格である私ができる仕事など限られていしなーと実家から通える近隣の仕事はないかと探すが皆無である

どうすっかなーと考えながら暇潰しと気晴らしを兼ねて機織りをする。履歴書には書けないが、加護付きの生地を織ることが出来る技術を取得している。それと加護を付けれる刺繍とか水晶や宝石等の石にも加護を付けれる技術とかも取得しているが、妖怪や摩訶不思議な関係者たちにしか必要されていない技術であり廃れる技術である

私が高校の時に使っていた機織り機が未だにあり古いが糸もあったのでやってみたら以外と体が覚えていた様でスムーズに行えるようになった。加護をつけるための祝詞も教本があったので忘れていたが思い出すことができた。加護をつけする人の条件は心清らかにだから機織りをしている間は集中して行えば問題ない

手始めにと1ヶ月頑張って作った生地はまあまあであるが、少々の幸せが巡ってくるようにと言う加護はきちんとついた。久し振りだからこんなもんかと思いながら悪意から身を守る刺繍と健康祈願の刺繍をしていると本性狐である布団屋の親父が集金に来た。茶の間で母と世間話をしているのを聞きながらのんびり刺繍を完成させる。

ジーっと言う視線を受けて狸のおじさんを見ると

「奥さん。娘さんは加護付けが出来るんで?」と聞いている。母も特に普通なかんじで

「そうなんですよ。就職に困っていてどうすっかなーなんていいながら生地を作って刺繍をしていたんですけどね。加護とか私にはよくわからないけれど」

「加護をつけられますよ。刺繍でも生地自体にも」それがどうしました?と聞いてみると

「へー。生地を作りながら加護を付けれるとか出来る人今はいませんよ。刺繍でもそれほどの効果がなくて困っているんですよ。我々は。見せてもらっても?」へーそうなんだといいながら生地を渡して見せる

「私が高校生の時は結構出来る人が多かったけれど何ででしょうね?生地に加護をつけて刺繍をした方が加護が弱くても効果的なのに」そう言ってお茶を飲みながら狸のおじさんが生地をしげしげ見ているのを見る。それほど真剣に見るような物でもないのにな。

今はどうか分からないが、昔は数千円の価値しかなかったし加護付きのものなんて溢れていたような気がするが・・・

「こういうものを作ってほしいと言われたら作ってもらえるだろうか?」

「生地だけなら問題ないですよ。何をつければ?」と聞けば

「うちの孫がそとに出るんだ。そのために認識をごまかすやつがほしいんだが中々なくてね」

「ああ認識のやつですね」と未熟なものだとちゃんと場蹴れないものや勘が鋭い人間に正体を見抜けられる人がいるから予防に認識をぼやかして人間だと誤認させる加護をつけた物を身近に持ち歩いた方がいいとされている。

「ハンカチと靴下にも刺繍してあげましょうか?それと安心して眠れる加護と疲労回復とかも寝具には必要では?」と独り暮らしの為に必要な加護を上げるとものすごい良い笑顔をされた

「そうしてもらえると助かるが」少し困ったような顔をしているので

「今の相場がどんなものか知らないけれど」そう言えば少し考えた後に電話をかけ始める。なにか困った事があれば地域の顔役に連絡すると言うのがここら辺の常識である。私も家を継ぐと決めた時に外を学ぶためにと遠方に就職することを顔役さんに相談したし帰って来たときも挨拶をした

息子は嫌いだが、お父さんの方は好きである。現在は仕事を継がせるために息子も同伴で顔役のつとめをしていると挨拶の時に言っていたで今日は来るだろうと少し顔をしかめる

思った通り顔役さん親子が来た。

私を見てバカにしたような顔をしている息子とそれを気にしない親父さん。親父さんは私たちをバカにしている訳でなく息子が本当に顔役に向いているか見定めていると言うところだろう

狸のおじさんから顔役さんが生地を渡して鑑定してもらう。加護付きのものは顔役さんが一番鑑定に適しているからだ

「ほー。こんなのを作れるんですね。軽い幸福の加護をつけているんですね。それと健康祈願と悪意から守る加護も付いている何て珍しいですね。加護自体は弱い部類だが相乗効果で中レベル++から高レベル−程度なんですね」と言っている。大体そんな感じの出来上がりを予想していたけど成功したようだ。地味に喜びながら話を聞いていると

「これだと加護を狙って余計な争いを招きかねない。中レベル−から中レベル++くらいの出来上がりの方が良いですよ」そういわれたので詠唱と刺繍を頭のなかでピックアップしておく

「先程いった中レベル−で一反5万円位ですね。あと刺繍で加護をつけるなら小レベル−から小レベル++で1万くらいですな」

「へーそんなに高いんですね」驚いて聞いている私を見て

「現在、刺繍での中レベル++から高レベルの物を作成出来る人間はいませんからね」と残念そうに言っている

「10年前は普通にいたんですよね」と答える私を見て

「お試しで作ったこれだって市場に出したら高値で取引されます」そういわれたが製品として売買出来る品質ではないので売らないと答える

「布団やさん。どうします?孫さん用に刺繍します?」そう聞けば少し考えたあとに

「お願いできるかな?布団カバーとシーツをセットで2個。靴下とハンカチを6個ずつ。それと生地を1反お願いしたい」そう依頼されたので受けることにした

生地を作るための糸と刺繍の糸は布団やさんの持ち込みだた。持ち込みなら安いのか?と思ったら顔役さんから持ち込みの値段だよと言われた。

持ち込みではない場合はもう少し高くなるそうな。その場合は集落に唯一ある服屋に買い取ってもらう用にと言われたのでそうすることにした

バカにした顔の息子は最後まで私の作品を触ることはなかった。と言うか顔役さんが触らせなかったのだ。

「ああ。そう言えば石にも加護をつけられましたよね」と思い出したように言っているので一緒に作った物を作業していた部屋から持ってきて見せた

「なるほど。先程の生地と同じように少々の幸福が付いているんですね。おや、刺繍の加護もついていますが」

「そう言うやり方もあるんです」

「そうなんですか。ふーん。良いですね。ボタンとかにも加護がつけられたら売れるでしょうね」と呟いている顔役さん

「石とか宝石とかがつけやすいですが、木とかプラスチックにもつけることは出来ますよ。ちょっと馴染むのに時間がかかりますが」

「ほー」と興味深々に聞いてくる顔役さんと布団屋のおじさんたちにプラスチックに加護をつけたものを出して見せる。大体小レベル−から中レベル++のものを出して

「小レベルなら一ヶ月。中レベル++は半年位で馴染みます」といえば目を光らせている顔役さん

「半年の方は姉の結婚祝いの時に仕込んだものでそのまま放置していたんですよ。あっちではこの技術は使ってません。自分のお守りとして世間に流通している程度のことはしましたけれども」と言えば視線が和らいだ

約束の一部に技術の流失を防止するものが含まれているからだ。顔役はそれを監視する役目もあるのだ

「ならば良いですけれども。小レベル−から+程度なら流通させてもいかも知れませんね。小物を集めたら相乗効果で中レベル++とかにならないように注意が必要ですが」と言っている

「持ち込みである程度の加護を付けることは出来るけれどもそれを仕立てるのはできないから服屋さんの腕次第だと思いますよ」と答えると頷いたあとに

「柳野さんの依頼を受けて認識をぼやかすのを作りますよね。その時に一緒にボタンも加護をつけて貰えませんかね?そうすれば無駄な手間を掛けずに済みますし」と顔役さんが話を進めているがボタンなんて大量に持っていませんが?と思っていると

「服屋と小物問屋の跡継ぎに息子から連絡をいれてもらったんですよ。で、どちらも乗り気でしてね。ハンカチや靴下。シャツに刺繍をしてもらいたいと言う服屋やボタンや小物にも加護をつけてもらいたいと問屋さんがね」とにこやかに話しているが大丈夫か?

「まずは品質を見たいから一箱程度ボタンを持ってくるとそれと一緒に糸もといっていますから大丈夫です」

「ハンカチと靴下はすでに注文がすんでいるから服屋に直接こちらに持って来て貰えば良いし。寝具はあとからうちから持ってくるよ」と言っている。

仕事どうすっかなーとか言うレベルではなく。何やら仕事がいつのまにか涌いて出てきている。

あれ?と首をかしげたくなるレベルの話となるが、まあ。無職より良いかと思い直す

顔役さんが帰ったあとに布団やさんにどんな感じの刺繍が良いのか見本を孫さんに選んでもらってくださいと見本を渡して見送った

「なんか。仕事が舞い込んできた。と言うか自営業なんだろうかこれ?」と母に聞けば同じようにポカーンと見ていた母が

「そうね。自営業になるのかしら。それにしても畳み掛けがすごかったね」

「ね。どれほど加護つきがないんだよって言いたいくらいだったね」と二人で話をしながら少しお茶を飲む

15時頃にはシーツ類を持った布団屋さんと糸とボタンを持った問屋さんが来たので作業場に運んでもらう。そのあとに靴下とかハンカチとかを持った服屋さんも来たのでそれも作業場に運んでもらい仕事を開始することとした



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