「アナナス」
その日は一日最悪だった。
「ねえ伊勢崎君!どんなスポーツやるの?!」
「伊勢崎君何処から来たの?」
「伊勢崎君!」「伊勢崎君!」
昼休みはこんな感じでずっと伊勢崎コールだった。当の本人は律儀にも苦笑交じりだが答えている。
「るみは行かなくていいの?」
あんなに熱々目線をしていたるみは涼しい顔でトランプタワーを作ってる。
「いいのいいの。あんなにいっぱいいたら印象にも残らないし、大多数の一人になっちゃうからね。狙いどきはあれがはけた後!」
この知恵は何処かで活かせぬものか。
目を輝かせて如何にしてイケメンを落とすかを語るるみを尻目に、私は朝凪の方を盗み見た。
朝凪は退屈そうに伊勢崎に集まる集団を見ている。退屈そうに、冷めた目で。
「おい」
はっ。いつの間にか朝凪がこちらを見ている。髪の合間から少し見えた顔は不機嫌そうだ。
「なに?」
突然話しかけられてかなり驚き声が裏返ったがあくまで平静を装う。
「暇?」
えっ。質問の意味がわからない。
「暇かって聞いてんだよ」
朝凪の少しイラついたような声にこちらもカチンとくる。
何様のつもりだ。
「見てわからない?」
私はトランプタワーをこれ見よがしに見せる。ぶっちゃけ暇だがなんだかむかつくので如何にも暇じゃない風を装う。
装い切れてない感は若干あるがそこは気づかないことを祈ろう。
「....ちっ」
どうやら暇じゃないとわかってくれたようだ。舌打ちされたけど。
朝凪は伊勢崎に近寄って何か話している。周りの集団などお構いなしだ。
(すげぇ...)
あの躊躇の無さには非常に不本意だが思わず感心してしまう。
野次馬がいつの間にかいなくなっている。朝凪のせいか。
私はまたトランプタワー作りに戻ろうと思いタワーを見る。
「ほとんど出来てやがる....」
「頑張った!」
るみが盛大に褒めてオーラを出してくるのでとりあえず頭を撫でてタワー建設に戻る。
「ねえ!」
急に耳に入ったデカイ音に驚いて最後の二枚を取りこぼしそうになった。
いや、取りこぼした。
「「あ....」」
るみと私は儚く散るタワーをただ呆然と見守ることしか出来なかった。
朝と合わせて2回目だ。
2回分の殺意を込めながら声の主を睨む。そこには伊勢崎と後ろにあいつが立っていた。
「校舎案内してくれるの?ありがとう!」
.......?訳がわからない。割と本気で訳がわからない。
「修也がしてくれるって言ってたんだけど...?」
伊勢崎は朝凪と私を交互に見ながら若干おどおどしている。
要約すればこうだ。朝凪は私が(暇じゃないのに)暇だと判断して校舎の案内をしてくれると伊勢崎に言った。
伊勢崎信じた。私は死んだ。
るみに助けを求めようとしたが時すでに遅し。るみは伊勢崎に夢中で自分から買って出てしまっている。
朝凪方をちらとみる。今までに類を見ない程の見下し顏だった。
私は3回分の殺意を込めて朝凪を睨んだ。
2話目です。
チキンラーメン美味しいです。
よく読んだらこれジブリでよくあるあれですね。いやぁ恋ですね。




