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8話 妹、東の方と接触する

 季節は晩秋になり朝の冷え込みもグッと冷たさを感じるようになりました。


 今日はサリバン先生の授業はお休みで今日は何して過ごそうかなと考えていました。


 「ねえ、エクレール。今日は何して遊ぼうか」


 「そうねえ、そうだ!お城を突撃潜入捜査はどうかしら」


 「お城に住んでるのに?」


 「メイドに変装して普段聞けない話を聞くのよ」


 「面白そうだね」


 「でしょう。それじゃあ、早速準備して、私はポケットにでも入ってるから」


 そう言って、私はメグさんに頼んで、メイドの着物を用意してもらって、それを着て、お城の働いている人の普段聞けない話を聞きに部屋を出ました。


 私は、早速、洗濯場へ行きました。

 三か月前までエストランダ国でメイドとして臨時で働いていた時に洗濯場ではいつも町のニュースやお城のウワサ話などがたくさん聞けたので、洗濯場に来たのです。


 今の私の格好はメイドの着物を着て、栗色のかつらを被っています。それに私の顔は地味なお地蔵さん似なので誰も私がこの国の王様の妹だとは簡単に気づかないと思いました。


 洗濯場には案の定、メイドさん達が10人位いて仕事をしていました。


 私をその中に混ざって籠の中に入っているシーツを取って洗濯を始めました。


 そして、手を動かしながら、あることに気付いたのです。


 兄さんの筆頭世話係のコーネリアさんが洗濯をしていたのです。


 コーネリアさんは茶髪に黄金の瞳を持ち、耳は猫の耳をした、18歳の女性です。見た目は13歳の私と同い年位に見えますが年上です。そして、その証拠に立派な胸の持ち主でもあるのです。


 コーネリアさんには茶色のふわふわとした尻尾が生えているのにも気が付きました。


 コーネリアさんは熱心にドピンクのあるものを洗っています。


 私はコーネリアさんに近づいて声をかけました。


 「ごきげんよう、コーネリアさん」


 「ごきげんようだにゃ、新入りさんかにゃ」


 「はい」


 「そうですかにゃ」


 「あの、何を洗っていらっしゃるんですか?」


 「ああ、陛下の物です。私が管理して洗っているにゃ、そうしないと盗まれてしまうにゃ」


 「そうなんですか、でも、なぜ陛下の物が盗まれてしまうんですか」


 「陛下は大変、女性にモテるにゃ、それで陛下の物が欲しいという人が後を絶たなくて、陛下が使ったものであれば、コップやペン、鼻をかんだ紙さえ隙あらば拾ってお守りにするんだにゃ」


 「そうなんですか、それは知りませんでした……」


 「そこで私が陛下の私物を管理して処理をするんだにゃ」


 「……兄さんの為に、ありがとうございます」


 私は兄さんの人気ぶりに驚き、それを支えてくれているコーネリアさんに小さな声で感謝を言いました。


 「ところでコーネリアさん。コーネリアさんから見たユート陛下について教えて下さい」


 「もしかして、陛下愛等部ヘイカアイラブの会員にゃか?」


 「ヘイカアイラブですか、初めて聞きました」


 「なんだ知らないのかにゃ、陛下のファン倶楽部だにゃ」


 「そうなんですか」


 「活動内容は主に陛下を見守ることにゃ、そして、陛下の恋人にふさわしい人気のある女性をランキングするにゃ。でも、不思議なことに陛下には女性のウワサ話が少なくて嬉しいことにゃ」


 「そのランキングなんですが、どの人が選ばれているんですか」


 「私にゃ、それに悔しいことに鬼竜や魔女が挙がっているにゃ。それだけじゃなくて、最近は陛下の妹との禁断の愛が……それは、考えたくないにゃ」


 「わ、……エリカ姫様もですか?」


 「そうなんだにゃ、エリカ姫様は陛下の大事な妹様で陛下の心の支えになっている方にゃ、でも、禁断の愛はあり得ないにゃ。私がいるからにゃ」


 「コーネリアさんと陛下は深い仲なんですね」


 「そうなのにゃ、陛下は私の命の恩人、陛下に私の全てを捧げるのにゃ」


 「何か、理由があるんですね」


 「まあ、その色々あったんだにゃ」


 それから、コーネリアさんと洗濯場にいるメイドさん達と話をしながら、洗濯物を洗って干していきました。


 洗濯物が終わった時、コーネリアさんに私の名前を聞かれました。


 「そうだ、あなた、名前はなんて言うにゃ」


 「えっと、……エリ…ザです」と、とっさに偽名を付きました。


 「そうか、エリザか、それでは失礼するにゃ」


 そう言って、コーネリアさんは洗濯場を去っていきました。


 他のメイドさん達も仕事が終わったので他の場所に移動していました。


 私とエクレールは自分の部屋にこっそり戻りました。


 「今日は色々な話が聞けたね、エリカ」


 「そうだね、エクレール」


 その日の夜、私はお父さんに手紙を書きました。


 元気にしていること、兄さんとエクレールと仲良くしていること、今日は突撃潜入捜査をして、こっそりメイドになってコーネリアさんから話を聞いたことなど書きました。


 この間も手紙書いて、返事をもらいましたが、父さんは今、南の国に行って、水場が遠い村々に井戸を掘って作っているそうです。

 レッドも元気に燃えて、ロウソクの変わりに役だっているそうです。


 今日はコーネリアさんとお話しできて良かったです。


 兄さんの周りことをサポートして支えてくれているコーネリアさんともっと仲良くなりたいと思いました。


 私は障子を明けて月を見上げました。


 月は半分にかけて銀色に輝いています。


 その月が新月になる時、あの人に会えると思うと今から楽しみで心が躍るのでした。




 

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