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7話 魔術と手紙

 サリバン先生の午後の授業は初めての魔術の授業です。


 その前に午前中に受けた試験の用紙を返してもらい、答合わせをしました。


 「エリカ姫様の点数は100点満点中98点です。文字の癖がついてますね。そこさえ気を付ければ後は問題ありません」


 いつの間にかクセ字になっていたようです。気を付けないと。


 「それでは、魔術の授業に入りますが、まず、基本となる大四元素、火・水・風・土の要素があり、今日はその要素を説明し、実際にその力を使ってみようと思います」


 それから、サリバン先生の説明を聞いて、魔力を使うことになりました。


 最初に桶の中に水の入ったグラスがあり、それに手をかざして魔力を注ぐようサリバン先生に言われました。

 

 私は言われた通りに手をかざして、魔力を注ぐイメージをしました。


 すると、グラスに中に入っていた水がどんどんあふれ出てきて、すぐにグラスから水がこぼれて、桶の中まで水がいっぱいになりました。


 「魔力のコントロールがうまいですね」と、サリバン先生が褒めてくれました。

 

 「さて、それではそのまま水の中に円を描くように渦を作ってみて下さい」


 私はそのまま水のいっぱい入ったグラスに手をかざしてイメージして力を込めてみました。


 けれども、水がいっぱいになったグラスはゆらゆらと少し揺れるだけて渦はできませんでした。


 「水の相性は良好、風との相性はまずまずですね」とサリバン先生は言いました。


 次に行ったことはロウソクに火を付けることでした。


 普通のロウソクに私は手をかざして力を込めました。


 たちまち大きな火の玉ができて、ロウソクはあっという間に溶けてしまいました。


 「さすが火の精霊レッド様と近しい方だけありますね。火との相性は抜群です」とサリバン先生は言いました。


 最後に砂を机にまいて砂を集めることです。


 私は砂を集めることに集中して手をかざしました。


 けれども、砂はピクリともせず集まりませんでした。


 「土との相性は合わないようですね」とサリバン先生は言いました。


 こうして、初めての魔術の授業は終わりました。


 それから、私はお城の客室へと向かいました。


 目的はリヒャルト兄さんに会うためです。


 客室にはすでにリヒャルト兄さんとシャーリーさんとブライトンさんが集まってお茶を飲んでいました。

 

 「お久しぶりです。みなさん」


 「お久しぶり、エリカ」

 リヒャルト兄さんは爽やかな笑顔で言いました。

 リヒャルト兄さんは茶色の髪に黒い目の爽やかな好青年です。


 「お久しぶりです。エリカちゃん」

 シャーリーさんです。シャーリーさんは綺麗なピンクの髪に、春の優しい空の瞳を持つ、愛嬌のある元人魚です。

 シャーリーさんはリヒャルト兄さん達と船旅をしていた時にチェジュラ島で出会った元人魚なのです。

 シャーリーさんはリヒャルト兄さんと恋に落ちて、人魚から人間になった人なのです。


 「お久しぶりです。エリカさん」

 リヒャルト兄さんの従者のブライトンさんです。ブライトンさんは茶髪の長髪に緑色の瞳を持つ青年です。


 「今回の商談はどうでしたか」


 「ああ、順調に進んでいるよ、エリカ。それよりも、母上から伝書鳩が来てね。大事な話があるんだ」


 「何でしょうか」


 「それが、ヴィクトリアが京魔国に来るようなんだ」


 「え、そうなんですか」


 私は驚きました。ヴィクトリア姫はリヒャルト兄さんの妹でエストランダ国のお姫様です。

 私がエストランダを去る時は眠り姫の魔法の呪いを受けて永遠の眠りについたヴィクトリア姫でしたが、純粋な愛の口付けで目覚めたようです。


 「ヴィクトリア姫様はもうお元気なんでしょうか?」


 「ああ、呪いも解けて元気にしているそうだ。それで、どうやら、シャーリーに会いたいそうなんだ」


 「え、私?」


 シャーリーさんは首をかしげています。


 「どうやら、俺が紹介したい女性がいると手紙に書いた為だと思う」


 私とブライトンさんは(もしかしたら、恋人の品定めに来るのかもしれない)と思いました。


 なにしろ、ヴィクトリア姫様はブラコンです。上に二人のお兄さんがいますが、一番上の兄のレーガン様は今年、結婚したばかりです。それに加えてリヒャルト兄さんにまで恋人ができたのは、妹として寂しいのではないかと思います。


 「そうですか。ヴィクトリア姫様はいつ頃、京魔国に着く予定なんですか」


 私はリヒャルト兄さんに聞きました。


 「そうだな、後、一月後位には着くらしい」


 「分かりました」


 「もうしばらく、京魔国に滞在することになるだろう。ユートにも相談しないとな」


 リヒャルト兄さんはそう言いました。


 それから、お世話係のメグさんが夕飯の時間だと知らせてくれました。


 そして、私と兄さんとリヒャルト兄さんとシャーリーさんとブライトンさんとユリアーネさんの6人で夕飯を食べました。


 夕飯は和食のお膳でギンナンを使ったものはありました。


 茶わん蒸しです。カツオと昆布のダシを取ってあつあつのとろとろでおいしいです。

具はエビにユリ根、ギンナン、シイタケが入って季節の旬を感じました。


 夕食は楽しく、あっという間に過ぎてしまいました。


 そして、月が真上に差し掛かった頃、私はエクレールと二人で一緒に布団に入って眠る時間になりました。

 

 最近、エクレールは私と一緒に夜、寝てくれるのです。


 「ねえ、エリカ、今日、なんか良いことあった?」


 「え、どうして」


 「だって、エリカの口角が上がって、顔が嬉しそうだから」


 「うん、今日は試験でいい点数取れたし、魔術の授業も楽しかった。それにリヒャルト兄さんが帰って来たからかな」


 「ふーん、そうなんだ」


 それから、私とエクレールは眠りにつきました。


 もうひとつ、嬉しいことがありました。


 それは、ヴィクトリア姫様が京魔国にやってくることです。


 そのことを考えるだけで心が暖かくなり嬉しくなるのです。


 そのことは、エクレールには言わず、私の心の中でそっと思うのでした。





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