4話 妹、兄を観察する1
午前中は家庭教師のサリバン先生に、京魔国の文字を教わりました。
私が異世界に最初にいた国、エストランダ語とは少し違い、文字を崩した感じです。
お昼になりました。
お昼は兄さんと一緒に食べます。
場所は食堂で長いテーブルに椅子が20個ほど並んで、兄さんは一番奥の席に座り、私は兄さんの隣に座りました。
テーブルにはすでに、ナイフとフォーク並べられていています。
今日は洋食のようです。
このお城では、日替わりで和食、洋食、中華、など色々なジャンルの料理を食べることができます。
変わっていますが、これも、お父さんが地球から持ち帰った料理のレシピ本が元で色々な料理を出すようになった、と兄さんから聞きました。
さて、今日のお昼は何でしょう?
給仕の女の人がお盆を持って、お皿をテーブルに置きました。
お皿にはこんがりと焼いたパンの間にハンバーグとレタスとトマトとピクルスを挟んだハンバーガーに油で揚げたフライドポテトが脇に添えられています。
私は「いただきまーす」と言って両手でハンバーガーを掴んで一口、噛り付きました。
お味は最高ー。久々に食べるハンバーガーは大変懐かしくておいしいものです。
兄さんも手でハンバーガーを掴み、もぐもぐ食べています。
「これ、おいしいねー、兄さん」
「ああ、そうだな。久しぶりのハンバーガーは旨いなあ」
ぴろろん、ぴろろん。
兄さんの方から音が聞こえました。
兄さんは食べるのを止めて、内ポケットからあるものを取り出しました。
それは、スマートフォン。スマホです。しかも見たところ4Gです。最新機種です。
いつどこで手に入れたのか、不思議に思いました。
「兄さん、そのスマホ、どこで手に入れたの?それと繋がるの?」
「あ、これはだな、この間日本に帰った時、買ったんだ。電波は繋がるんだ、一応」
「これ、見せて」
そう言って、私は兄さんの手元からスマホを素早く抜き取ると、スマホの画面を見ました。
ときめきラブレボリューション❤というタイトルが目につきました。
「兄さん、いつもこの恋愛ゲーム、やってるの」
「ああ」
兄さんは隠そうとはせず、堂々と言いました。
「俺はこのゲームで全キャラを攻略し、今はなんと念願のハーレムENDという偉業を成し遂げたのだ!」
「へえー……」
「すごいだろ、エリカもやってみるか。楽しいよ」
「遠慮しておきます」
「そうか、残念だな」
兄さんは明らかにしょんぼりしてしまいました。
「……まあ、ちょっとだけならやってもいいかな」
「そうか、じゃあ仕事が終わった夕方にでも執務室においで」
「分かった」
それから、私と兄さんはハンバーガーとポテトを食べながら、ときめきラブレボリューション❤の話をしました。
お昼の時間はあっという間に過ぎました。
午後の学習の時間はこの国の歴史を学びました。
そして、西の空が赤く染まって、美しい夕焼けになった頃でした。
私は兄さんの執務室へ入りました。
「失礼します。エリカです」
「はい、どうぞ」
ユリアーネさんが答えて、笑顔で迎えてくれました。
兄さんは仕事を終えて、ソファーに座ってお茶を飲んでいました。
「それでは、私はこの書類を各部署に届けますので、それでは陛下、失礼します」
ユリアーネさんが言いました。
「ああ、今日もお疲れ、ユリアーネ」
兄さんが言って、ユリアーネさんは執務室を出ていきました。
「ところで、兄さん。一つ聞きたいことがあるんだけど……」
「何だい」
「ユリアーネさんは恋人なの?」
ゴホ、ゴホ。
「……どうして、急に」
兄さんはせき込みながら、私を見て言いました。
「それは、噂で聞いたの。兄さんには恋人候補が三人いるって」
「そうか、もう知ってたのか。エリカも知っているよな。俺の魔力の力というか……体質」
「うん、魅了のタイプで人を惹きつける、特に異性にモテる」
「そうなんだ、それで女の人はみんな、俺に好意を寄せているんだ。だから、俺を好きなのもそのためなんだ」
「そうかな、それはきっかけであって本当に好きになってるかもしれないよ」
「甘いな、エリカ、俺が付けてる魔力を制御しているピアスを外した状態だと、朝から晩まで女性から告白を受けて、それはまだ良いけど、ストーキングされてトイレから風呂にまでついて来ようとする。それから、夜は、寝室に知らない女性が忍び込んでたりしてて、あれは、何度来られても怖いな……」
「色々、兄さんも大変だったね」
「ああ」
「それで、女の人は好きなの?それとも男の人の方が好き」
「それは、もちろん、俺は女の人の方が好きだが、二次元に限る」
「そうなんだね、やっぱり兄さんは変わらないね」
「俺は三年前と変わらないか?」
「うーんと、背が縮んだかな、それと大人っぽくなって格好よくなったよ」
「背が縮んだように感じたのは、エリカの背が伸びたからだろ、それに……格好よくなったか」
兄さんは嬉しそうに照れながら言いました。
それから、私と兄さんはしばらくの間、他愛もない話をして夕食まで時間を過ごしたのでした。