23話 交錯する思い
冬至の日の翌日、私は兄さんの部屋を訪ねて終新の日のお祭りに参加しても良いか聞きました。
「いいよ、エリカ。楽しんでおいで、ただし一日だけだぞ」
「いいの?兄さん」
「ああ、メグとエクレールと一緒にな」
「うん」
私はアイザックさんとヴィルのことは内緒にして、遊びに行くと兄さんに伝えたのです。
「兄さんは、終新のお祭りはどうするの?」
「ああ、二日とも仕事で城下町にいる。祭でやるイベントのゲストに呼ばれているんだ」
「そうなんだ」
「俺はしばらく祭に向けて準備しているんだ。それと、つぐみちゃんのことなんだけど……」
兄さんは難しい顔をして言いました。
「つぐみちゃんを地球に戻してやりたいんだが、俺一人じゃ何にも出来ないんだ」
「兄さん……」
「親父とレッドの力が必要なんだ。今、親父に手紙を出して、急いで帰って来てくれるよう書いたんだ」
「じゃあ、お父さん帰って来るんだね」
「ああ、たぶん」
私はお父さんに会えるのが嬉しくて笑顔になりました。
「それで、エリカにお願いがあるんだけど」
「なあに、兄さん」
「ダイチ先生家に一緒に行ってくれないか」
「良いけど、何で?」
「いやー、エリカが居てくれるとクッションになるというか、その緊張するんだよね。それで一緒に居て欲しいんだ」
「そうなんだ、兄さんでも三次元の女性に緊張するってことあるんだね」
「うっ、し、失礼な兄さんだって三次元の女性を意識することはあります!」
「え、うっそ!だ、誰なの?」
「えーと、その、あれだな」
「あれじゃ、分からないよ」
「ここだけの話だぞ……あのな」
兄さんは私にこっそり耳元で気になる女性の名前を言いました。
それは、私の予想道理で兄さんの気になる人はヴィクトリア姫様でした。
同じ時として、ユートの従兄妹であり、エストランダ国の第二王子である、リヒャルト・エストランダのいる部屋に妹のヴィクトリアは訪ねていた。
「リヒャルト!聞きたいことがあるんですけど、昨日のお忍びの予定を立てた日とエリカのお忍びの日を合わせて会せるようにしたでしょう」
「いやー、何のことだい。俺にはさっぱり分からないけど」
リヒャルトはそう言いながらも、顔はにやりと笑っているのが分かる。
「それより、エリカとの時間は楽しかったかい」
「それは、もちろん楽しかったですわ。精霊も可愛かったですし、綺麗な桜も見れましたし……問題はボクが男でいる姿を見られたことですわ」
「それは、ばれるのは時間の問題じゃないかな。ヴィル、君は元々、男の子として生まれた訳だし、エリカ達にも早めに話しておいた方が良いんじゃないか」
「それは、そうですけども……ボクにも心の準備が必要なんです。それに、まだ男として生きると決めた訳ではありませんわ」
「それに、城中で「ユート陛下のお見合い相手」とか「北の方様登場」とか色んなウワサが立っているから気を付けるんだぞ、ヴィル」
「何ですか、それはまるでボクがユート陛下に恋して狙っているみたいじゃないですか」
「そうなんだよ、それにユート陛下の方もヴィルに対して、好意を持っているからな。ヴィル、自分のことを話しておいた方が良い。それと、どうだいユート陛下のことは好きか」
「好き嫌いで言えば、好感は持てますけれども、結婚相手として見るのでしたら、ありえませんわ」
「何だい、随分きっぱり言うねえ、何か理由でもあるのかい?」
「それは、個人的な意見ですけれども、先日の事件を思い出してもユート陛下の恋愛関係のもつれでエリカがひどい目に合ったのです。妹思いなのは分かりますけど、エリカを巻き込んで守ってやれなかったのが許せません」
「つまりは、エリカのことをそれだけヴィルは大事に思っているんだね」
「それはそうですとも、エリカはボクにとって妹みたいな存在だからですわ」
「女の子として見るのはどうだい、男ならまず触れたくなる、守りたい、口付けをしたいと思う、ヴィルは昨日、エリカといてそう思わなかったかい」
「ボクは、そ、そんな風にエリカに、し、下心など、抱いてはおりませんわ」
ヴィクトリアは、顔を真っ赤にしてリヒャルトに言った。
「まあ、京魔国にいるのもそんなに長くはいられない。年が明けたらこの国を出立する」
「……分かりましたわ、リヒャルト」
そう言って、ヴィクトリアはリヒャルトの部屋を出た。
それから、リヒャルトは誰もいないはずの部屋に声をかけた。
「そこで立ち聞きしている、可愛い精霊さん」
そっと、姿を現したのは緑の髪の可愛い小さな精霊エクレール。
「えっと、おじゃまー、てへ、色々お城探検しててたまたま通りかかりまして」
「ヴィクトリアとヴィルヘルムのことでも聞きに来たんでしょうか」
「うーん、まあね、二人とも魂が一緒だし同一人物だと思って」
「このことは、エリカやユート陛下にはまだ内緒にしてくれないか」
「もちろん、こんな大好物な特ダネないし、内緒にしてるわよ」
「それでは、このことは他言無用で頼みます」
そう言って、エクレールはリヒャルトの部屋を後にした。
リヒャルトは感の鋭さは親子そっくりだとレッドのことを思い出して苦笑いをした。




