19話 入れ替わり8
今日は私と兄さんの運命の日です。
朝から私はそわそわしています。
「落ち着いてエリカ。きっと大丈夫だからさ」
エクレールが励ましてくれます。
兄さんの部屋で準備ができるのを待っていたのです。
コーネリアさんも一緒に私と待ってくれています。
私はここ数日、コーネリアさんと仲良くなり一緒にお喋りしたりして、楽しい時間を過ごしたのです。
「まあ、まあ、エリカ姫様、焦る気持ちは分かりますが、今はゆっくりお茶でも飲みましょうにゃ」
そう言ってコーネリアさんはお茶の準備をして、美味しい緑茶を入れてくれました。
そうして、私は刻々と迫る運命の時間まで静かに過ごしたのでした。
一方、俺はエリカの部屋で悠々と時間を楽しんでいた。
朝起きて、身支度を整えて、メグに可愛いく髪を結ってもらい、唇に桜色の紅をさしてもらった。
「なあ、メグ、女の子ってさ良い香りがするよな」
「そうですね、女性は色々香水をつけたりしますから、陛下もご興味がおありで」
「ああ、ここ数日、汗の匂いがするから、何か気になって、ヴィクトリア姫はミントの良い香りがしてさ」
「なるほど、陛下はどのような香りがお好みですか?」
「あんまり、きつい花の香りちょっと苦手だけど、柑橘系とか良いな」
「それでしたら、私のアロマの液体がございますので、持って参りますわ」
それから、メグは数種類のアロマを持ってきていくつか香りを嗅いだ。
「うん、これが良いな。これって、何の香り、メグ」
「これは、オレンジスイートです。これをハンカチに数滴垂らして、持ち歩きましょう」
「そうだな、ありがとう」
こうして、俺はメグと一緒にアロマの香りを楽しんだ。
女の子って結構、楽しんだなと思っていた。
もう少しでこの生活が終わりになるんだと思うと、寂しさを少し感じるのであった。
運命の時間になりました。
試合の場所は広い客間です。家具は避けられていて、中央に卓球台が置かれていました。
応援には私と兄さんの事件を知っている関係者が集まって見守っています。
審判は兄さんでヴィクトリア姫とプリシラさんは向かい合って睨みを利かせています。
ルールは簡単。先に10点を取った方が1セット勝で3セット試合をします。
試合は始まりました。
先行はプリシラさんです。
たん、たたん。
ばしゅっ、ばしゅん。
激しい打ち合いが続きます。
そして、時間が過ぎ、1点、また1点とプリシラさんが点を先に取って、今度はヴィクトリア姫様が点を取り、1セット目はプリシラさんが勝利しました。
次に2セット目を取ったのはヴィクトリア姫様です。
最後の3セット目は激しい打ち合いが続き、両者とも引けを取りません。
9点対9点となりました。
ヴィクトリア姫様から打ち始まって、プリシラさんが打ち返そうとした瞬間です。
ボールはプリシラさんを過ぎて、ぱしゅんと床にボールが落ちました。
勝者はヴィクトリア姫様です。
周囲は喜びの声を上げ、ヴィクトリア姫様は「やりましたわ」と言い、プリシラさんの方へ歩きました。
「プリシラ、約束通り、エリカとユート陛下を元に戻す方法を教えなさい」
ヴィクトリア姫様はプリシラさんをきつい目で見ました。
「分かったわ、私の負けだわ。ユートとエリカを元に戻すには、もう一度キスをして、ショックを与えればいいわ。それで元に戻るわ」
プリシラさんは目が死んだ様になり、無表情になりました。
「ショックでどんなことをすればいいの?」
私は言いました。
「私の電気ショックでどうかな」
エクレールが言いました。
「それじゃ、試にやってみるか、エリカ」
「うん、分かった。兄さん」
皆が見守る中、兄さんは私に近づきました。
私の頬にキスをしました。次にエクレールが電気ショックを私達に放ってピリリと、体中に電気が駆け巡りました。
そして、私と兄さんというと……
馴染んだ体に丁度いい目線、そして、目の前にはちゃんとした兄さんがいました。
「やった、元に戻った」
「やったー、嬉しい」
私と兄さんは自分の体を何度も確かめて確認しました。
私達は元の体に戻ったのです。
私はヴィクトリア姫様の近くに来てお礼を言いました。
「ヴィクトリア姫様、ありがとうございます」
「いいえ、大したことはしてなくてよ」
「なにぃふるんでふか」
ヴィクトリア姫様は私の両頬を手でつまんで満足そうな顔をしました。
「やっぱり、エリカの頬っぺたは良く伸びるわね」
ヴィクトリア姫様はそう言って、私の頬から手を放して、頭を撫でました。
「やっぱり、入れ替わってるとやっぱり違うわね。エリカ、気づいてる?あなたのお兄さん、髪型を変えたり、お化粧をしたり、香を付けたりと色々と女の子生活を楽しんでたみたいよ」
「そういえば……」
卓球の試合で余裕がなかったけど、髪型は変わって、可愛く結われているし、何か甘い柑橘系の香りもする。ヴィクトリア姫様に言われるまで気づかなかったけど、兄さんは色々、やっていたようです。
「とても似合っているわよ。エリカ」
「ありがとうございます」
こうして、私と兄さんの入れ替わり事件は終わり、プリシラさんの罪は重く、ケーン宰相と兄さんはプリシラさんを「国外追放」として、更に魔力の力を使えなくなる魔具を付けてプリシラさんから魔力を奪うことになったのでした。




