15話 入れ替わり4
ヴィクトリアは兄のリヒャルトを訪ねて異国の地、京魔国へと来ていた。
目的は兄の恋人がエリカで母上からの手紙に紹介したいと書いていたのが発端だった。
エリカは京魔国の国王の妹ではないかとリヒャルトに聞き出して、ヴィクトリアはリヒャルト達が旅立つ前日に、生まれたときにかけられた呪いの魔法が発動して眠りについてしまった。
目覚めたのは母の純真な愛による口づけだった。もちろん、口づけは頬にしてもらった。
それからは、自分自身に起きた様々なことを思い出して、リヒャルトの部屋に入った。
「リヒャルト!お久しぶりです」
「やあ、久しぶりだね。ヴィル」
「ところで、リヒャルトの紹介したい人はどちらにいるのかしら、もちろんボクの知っている子だよね」
「いや、ヴィルとは初めて会うはずだけど、シャーリーだよ、今、隣にいるよ」
リヒャルトの隣に目を向けると、そこにはヴィクトリアよりも1,2歳年上の女性が座っていた。
「……エリカじゃない……」
「初めまして、ヴィクトリア、私はシャーリー。リヒャルトとはチェジュラ島の海で出会ったの」
「そうなんですか、初めまして、ボクはヴィクトリアよ。よろしくお願い致しますわ」
ヴィクトリアとシャーリーは挨拶をした。
ヴィクトリアは内心、ほっとしていた。自分の早とちりでエリカがリヒャルトの恋人だと勘違いしていた。もし、エリカがリヒャルトの本当に恋人になっていたら、止めただろう。
年の差がある、まだ早いという。一般的な常識を言って。
ヴィクトリアにとって、エリカは可愛い妹のような存在だった。
それを大好きなリヒャルトに取られると思うと、胸がずきんと痛むのだった。
それから、ヴィクトリアはシャーリーとリヒャルトと話をした。
チェジュラ島からリヒャルトと出会い、エリカが助けてくれてシャーリーを支えてくれたこと。
人魚から人間になってリヒャルトと生きて行くことを決めたことなど。
ヴィクトリアは二人の姿を見て、二人を受け入れることにした。
人魚から人間になったシャーリーと人間と魔族の間に生まれたハーフのリヒャルト、これから、越えていかなければならない壁があるけれど、二人はそれを共に越えていけるだろうとヴィクトリアは思った。
「ところで、エリカは今、どこにいるのでしょうか?」
ヴィクトリアの言葉にリヒャルトとシャーリーは困った顔をしていた。
「それが、実はエリカは今、大変な事になっているんだ……」
それから、ヴィクトリアはエリカにかけられた呪いで兄のユートとエリカが入れ替わってしまったことをリヒャルトから聞いた。
「……リヒャルト、プリシラという魔女は今どこにいるの?」
「今は、ユート達と一緒にいると思うが……まさか、会いに行くのか」
「そう、そのまさか、ボクが会って直接、エリカとそのお兄様を戻す方法を聞き出すのよ」
ヴィクトリアはリヒャルトの手を取って強引にユート達がいる場所へ案内させた。
私はプリシラさんがいる部屋にいて、そこには私の姿をした兄さんとエクレール、サリバン先生とケーン宰相とユリアーネさんが集まっているのです。
「さて、プリシラよ。早く陛下と妹君を戻す方法を教えぬか」
ケーン宰相が言いました。
「うふふ、いやよ。面白くないもの」
プリシラさんは楽しそうに笑ってこの状況を楽しんでいます。
「プリシラ、あなた、自分の立場を分かっているの。このままでは拷問にかけなければならないのよ」
サリバン先生がプリシラさんを諭すように優しく言います。
「いいのよ、私は拷問にだって喜んで、受けるわ」
「プリシラ、いい加減にしてくれ」
兄さんが言いました。兄さんはひどく困った顔をしていました。
プリシラさんの尋問に進展がないまま時間だけ進みます。
そこへ、
「失礼いたしますわ」
ばたん!
盛大に扉が開きました。
そこには、金髪に青い瞳の美少女が立っていました。
美少女は黄金に輝く金の髪。整った眉にくりっと二重の青い瞳に長い睫毛。筋の通った鼻に形の良い愛らしい唇。ふっくら桃色の頬に透き通る白い肌。とっても可愛らしいですが、どこか中性的な顔立ちの美少女です。
その美少女の名前はヴィクトリア・エストランダ。エストランダ国のお姫様です。
ヴィクトリア姫様の隣には気まずそうなリヒャルト兄さんもいました。
「初めまして、皆様、ボクはヴィクトリア。リヒャルト・エストランダの妹です。そして、プリシラという女性は誰ですか」
「私がプリシラだけど」
「そう、あなたが」
そう言って、ヴィクトリア姫様はプリシラさんの傍に来ました。
パシンっ!
ヴィクトリア姫様が何とプリシラさんの頬を平手打ちしたのです。
「失礼、あなたにはいろいろと聞きたいことがある前に、先に手が出てしまいましたわ」
「そう、聞きたいことって何かしら」
「エリカとお兄様を元に戻す方法よ」
「……いいわ、あなたにだったら教えてあげる。だけど、条件があるわ……」
「その条件って何かしら」
「私と決闘することよ」
「何で戦えばいいのかしら」
「そうね……」
「魔力を使った決闘はダメですよ」
その場を見守っていたサリバン先生は言いました。
「それに剣とか刃物を使ったものも危ないから駄目じゃぞ」
ケーン宰相も言いました。
ちっという舌打ちが聞こえたのは気のせいでしょうか……
「それでは、何で決闘すれば良いかしら」
ヴィクトリア姫様はちょっと困った顔をして言いました。
「ねえねえ、卓球はどう」
エクレールが言いました。
「卓球か、それならいいかもな」
兄さんが言いました。
「そう、それじゃあ、卓球で勝負しましょう。ヴィクトリア」
「ええ、構わないわ。プリシラ」
二人は卓球で戦うことになりました。
そして、話し合いの末、決闘の日は明後日、二日後に決まりました。




