14話 入れ替わり3
朝になって目を覚ますとそこはいつもと違う部屋でした。
本棚があって閑散とした空間の部屋です。兄さんの部屋です。
やっぱり、昨日の出来事は夢じゃなかったんだと思いました。
でも、隣には妖精のエクレールがすやすやと寝ていて、私の傍に必ずいてくれたのです。
私は兄さんの部屋にある、鏡を見て確認しました。
お母さんに似た整った顔にサラサラの黒髪、19歳の優男です。
喉には喉仏があって、顎には1,2本の薄いヒゲが生えてます。
お父さんもあまりヒゲは濃くない方なので将来、ヒゲの濃い顔にはならないでしょう。
一応、体の方も確認しました。
私はパジャマを脱いで上半身、裸になりました。
まじまじと兄さんの体を見ました。
よく見ると、左脇腹に傷跡があったのです。昨日は余裕がなくて気づきませんでしたが、刃物で刺したような傷跡があったのです。
私が自分(兄さん)のお腹を見ていたら、コーネリアさんがやって来ました。
「おはようございますにゃー、エリカ姫様」
「おはようございます。コーネリアさん」
「今のご気分の状態はいかがでしょうかにゃ」
「うーん、まだ、落ち着かない。なんか視界が高くなって慣れないです」
「そうでしょうね、それより、陛下は毎日、朝は長距離を走り、筋力トレーニングをしているんですが、いかが致しますかにゃ」
「それって、どの位走って、トレーニングはいくつやってるんですか」
「およそ、5キロ走って、トレーニングは腹筋100回、背筋100回、スクワットが100回ですにゃ、それから、ストレッチを欠かさずやっていますにゃ」
「じゃあ、とりあえず、全部やってみます」
こうして、私は朝のトレーニングを始めたのでした。
俺は朝、目覚めるといつもと違う部屋で目を覚ました。
そう、妹の部屋に。
目が覚めて、世話係のメグを呼んで朝の身支度を手伝ってもらい、髪を梳かしてもらった。
「なあ、メグ。エリカっていつも髪、ストレートだよな」
「そうですね、結ってみましょうか?」
「そうだな」
俺とメグはエリカ(俺)の髪の毛をサイドに結んで三つ編みにしてみた。
「うん、可愛いじゃないか。エリカ(自分)」
「そうですね、よく似合っています」
「他には何かアクセサリーとか無いかな」
俺はエリカの机の引き出しを開けて、髪飾りなどを探した。
中には親父からの手紙が大事にしまわれていた。
親父とエリカ、二人はお互いの存在を長い年月、知らずに過ごしていた。
でも、今は離れていても絆を結んでいる。
それを知って、俺は安心した。
俺は机の引き出しをそっと元に戻した。
それから、部屋で朝ご飯を食べて、俺の執務室に向かって歩いた。
私は兄さんの執務室に入って、兄さんに会いに行きました。
「おはようー。兄さん」
「おはよう、エリカ」
「あれ、兄さん、髪型変えたの」
「ああ、メグに結ってもらったんだ。似合うだろ」
「……うん」
「それより、エリカ。なんか疲れた顔してるよ」
「えっと、兄さんの朝の日課のトレーニングしてたから」
「そっか、無理してやることないだろう……」
「でも、いつもしていたことは、やっておいた方が体には良いかなと思って」
「そっか、ありがとうな。エリカ」
「ところで、兄さん。今日はどうする」
「そうだな、サリバン先生を呼んで俺達のこと話そうか」
サリバン先生を兄さんの執務室に呼んで、私と兄さんが入れ替わったことを話しました。
「そう、昨日はそんなことがあったの。大変だったわね。陛下、エリカ姫様……」
サリバン先生はそう言いながら、私になった兄さんの手を握って、「私で良かったら、いくらでも力を貸しますので、何でも言って下さいね」と言い、満面の笑みを浮かべています。
なんか、サリバン先生がいつもより積極的な感じがします。兄さんに対して……
それから、私は兄さんの執務室でサリバン先生と授業をして、兄さんは溜まった書類の仕事を片づけていきました。
お昼になり、昼食の時間になった頃です。
「失礼します。陛下、父が間もなく到着する予定です」
ユリアーネさんが入って来て、兄さんに言いました。
「そうか、それじゃ、城門の前で待ってようか」
「兄さん、これからハリー・ケーン宰相が来るんだね」
「まあ、懐かしい。ハリーがここに来るのね。私もご一緒にいいかしら?陛下」
サリバン先生が兄さんに聞きました。
「もちろんいいですとも。是非、ご一緒に行きましょう」
私と兄さんとユリアーネさんとサリバン先生はケーン宰相を迎えに城門の前で待つことにしたのです。
城門の前です。
すっかり冬空で空気は澄みきって、空は青さを増し、白い雲は悠々と浮かんでいます。
空を見ていると、だんだん桜空城に近づいて飛んでくる竜族が5,6人います。
先頭には長い白髪のおじいさんが中心となって空を飛んで、城門の前に静かに降りました。
「これは、お出迎えとは有り難い。久しぶりですな。ユート様。戴冠式以来ですな。そして、その少女が例のユート様の妹君、エリカ姫ですな。可愛いらしい子じゃな」
白髪のおじいさんは70歳位で、白くて長いヒゲを生やして、顔は優しそうで皺があります。
頭には角があり15センチ位の長さがあって、2本生えていました。背中には黒い羽根があります。
服装は白い法衣のような物をきていて、よく似合っています。
身長は180センチ位で大きいです。声は渋くてカッコいいです。
「お久しぶりです。ケーン宰相、訳があって今は妹のエリカが俺になって、俺が妹に入れ替わっています」
「ああ、大まかな話は娘のユリアーネから手紙で知っている。詳しい話は中で聞こう」
そう言って、私達は城の中に入って食堂に向かいました。
とりあえず、お昼を食べてから話し合うようです。
途中でエクレールにも会って、一緒に移動しました。
私になった兄さんはケーン宰相とサリバン先生に囲まれていろいろ話しています。
そして、ケーン宰相とサリバン先生の兄さんを見る目は孫を見る優しい眼差しで始終ニコニコしていました。
エクレールと私は二人で話をして、もしかして私になった兄さんは”お年寄りキラー”ではないかと密かに話していました。
しばらくして、桜空城の城門の前にそれは美しいお姫様がリヒャルト兄さんを訪ねて来ていました。
名前はヴィクトリア・エストランダ。海を越えてやってきた異国のお姫様です。
これから、一波乱起こる予感がします。




