12話 入れ替わり1
私が兄さんで、兄さんが私に、入れ替わってしまったようです……。
誰か、嘘と言って下さい。
私はもう一度、目の前の自分に声をかけて確認しました。
「目の前にいるの兄さん?」
声が低くて心地よい声です。自分の声じゃありません!
「ああ、そうだ、じゃあ、俺の中にエリカが……」
私はこくりと私の中に入った兄さんを見て、頷きました。
「久しぶりだね、優斗君、それにエリカちゃん。私、驚いちゃった、カエルちゃんがエリカちゃんに変身したんだもん。何かの魔法にかかってたの?大変だったね、でも、こんな所で会うなんてラッキーだわ」
その場の張りつめた空気を和ますようにつぐみさんが言いました。
「ああ、そうだね。つぐみちゃん」
私は兄さんのふりをしてつぐみさんに言いました。
「兄さん、私、早く家に帰って休みたい」
私の中に入った兄さんは、私に成りきって言いました。
「つぐみさん、悪いけれど、また今度、改めて会いに来るから」
「そっか、今日はエリカちゃん、大変だったもんね。また、私に会いに来てくれるなら、ヒナタさんも良いよね」
「私は、……何時でも遊びにおいで」
「優斗君も……来てくれる?」
「わ、わた……俺も会いに行くよ」
「それじゃ、早く帰りましょう、エリカ、疲れちゃってるもの」
エクレールがそう言って入れ替わった私と兄さんとお城の護衛の数人がヒナタさんの家を出ました。
ヒナタさんの家はアパートで築50年は経つ古い建物で赤レンガで素敵な建物でした。
少ししか入れませんでしたが、いつか住んでみたいなと思いました。
「所でユートにエリカ、二人ともどうしちゃったの。魔力の気配がまるで入れ替わったみたいだよ」
エクレールの言った通り私と兄さんは入れ替わりました。
「それが、エクレール。私と兄さん、入れ替わちゃったみたいなの」
兄さんの声で私は言いました。
「そうなんだよ、……プリシラに聞けば良いのか」
私の声で兄さんは言います。自分の声なのに不思議な感じがします。
「あの黒魔女に一発、電気パンチを食らわせてやる」
エクレールはバチバチと電気を放出させています。危ないから落ち着いてエクレール。
私と兄さんはプリシラさんの所まで移動して、私と兄さんのことを聞き出しました。
「プリシラ、これはどういうことだ、エリカがカエルから戻ったのはいいが俺とエリカは入れ替わったじゃないか」
「そうね、言うの忘れてたわ。ごめんなさい。うふふ」
プリシラさんは今朝、あった時とは別人のように生き生きとしているのです。
「どうやったら、戻る?」
「忘れちゃったわ」
「ふざけるな」
私になった兄さんはイラつき、怒っています。
こんな兄さんを見るのは、久しぶりです。
それから、プリシラさんにいくら聞いても、はぐらかされてしまうばかりで、戻る方法を教えてはくれません。
「仕方がないから、しばらく俺とエリカは入れ替わって生活をするしかないか……」
「そうだね、……兄さん、ごめん、私、トイレ行きたくなっちゃった……」
「ま、待てエリカ。とりあえず、トイレへ行こうか」
私と兄さんは、男子トイレに入って行きました。
「とりあえず、エリカ、大きいほうか小さいほうか……」
「……小さいほう」
「まず、個室に入って、下帯を解いて、座ってトイレを使おう」
私は言われた通り、トイレの個室に入って、下帯を解いて、便座に座って用を足しました。
それからが、大変でした。
下帯の締め方が分からないのです。
「兄さん、下帯ってどうやってするの?」
「それは、説明するからやってみな。まず、端を顎で挟んで…………」
何とか、下帯を締めることができました。
「ところで兄さん、前にも思ったんだけど、どうしてショッキングピンクの褌なんか着けてるの」
「それはだな、魔力を使った望遠鏡やメガネで透視されるからだよ」
「……そうなんだ」
兄さんは大変なんだなと思いました。
私と兄さんとエクレールは兄さんの執務室でユリアーネさんとコーネリアさんを呼んで今日一日、起こった事を話しました。
コーネリアさんとユリアーネさんは私を見て、それから兄さんを見てそれぞれ言いました。
「陛下~、エリカ姫様~大変な目に合って可哀そうだにゃ」
「お労しいことで、それもこれもみんな、あの魔女のせいよ!」
「それより、ユートとエリカはこれからどうするの?」
エクレールが言いました。
「仕方ないから、しばらく俺がエリカになるよ」
「私も兄さんになる」
「それから、ユリアーネの父上、ハリー・ケーン宰相に今回ことについて意見を聞きたい」
「父上ですね、分かりました。今日中に伝書鳩を飛ばして、早ければ明日の昼までに飛んで来てもらいます」
「ハリー・ケーン宰相って、兄さん」
「エリカは初めて聞く名前だったな、ユリアーネの父上でこの国の宰相っても、ほとんど隠居の身で仕事はユリアーネがしている、この国のご意見番みたいな存在だ。竜族でもう150歳位、年を取っている。先々代からこの国の政治に関わっている人だ」
「そうなんだ、なんだか頼もしいね」
それから、話合いは進んでいき、夕飯の時間になったのでした。
「これからオモシ……じゃなくて、大変な生活になるわね」
ぽつりと、エクレールがこぼした言葉を聞き取る人はいませんでした。
こうして、私と兄さんの入れ替わり生活が始まったのでした。




