11話 カエルのお姫様
私はものすごい悪臭で目を覚ますことになる予定でした。
ですが、生憎、カエルには嗅覚がないようです。
私が目を覚まして見ると、周りは濁った水に暗い下水道です。
私はぱちゃぱちゃと手足を動かして泳ぎ始めました。
溺れ死ななかったのは、カエルになった為かもしれません。
私は必死で泳ぎ、下水道から離れる為に光を見つけました。
排水溝の隙間から見える光。希望の光です。
私は排水溝の真下に来ると上を見上げます。
空は晴れて、太陽の日差しが差し込みます。
排水溝の出口までは2メートル位の高さがあり、壁を登って行かなければなりません。
私は壁に手を着いて壁を登り始めました。
壁はごつごつした石で表面はでこぼこしています。
私はその凹凸に手を置いてぺちぺち登ってます。
命綱のないロッククライミングをしているようです。
私の今の手は水かきがあり、湿っていて、粘着力があります。
そのおかげで壁は登りやすくあっという間に排水溝から外に出られました。
しかし、問題はここから始まったのです。
外に出てみると、寒くて体が動かないのです。
カエルは冬になると冬眠する生き物です。
12月の寒さはカエルになった私にはとても体に堪えるのです。
私はあることを思いつきました。
魔力を使って火を起こすのです。そうすれば、体も温まるし、動けるようになると、私は考えたのです。
ゴウっ!と火を魔力で火を付けました。
火の玉が出来て、私を温めてくれます。
けれども、時間はそう長くは続きませんでした。
泳いで体力を消耗したのと、魔力を使って体が乾燥してしまったのが原因かもしれません。
私は力尽きて、その場で意識を失ってしまいました。
ああ、私は今、天国にいるんじゃないかと思います。
ポカポカと暖かなお湯に浸かってごくらく~ごくらく~
ぱち、と目を覚ましました。
目を覚ますとそこは天国ではなく、本や紙が散乱とした部屋でした。
目の前には見たことがあるお姉さんがいました。
音成つぐみさん。日本に居た時に同じ養護施設にいた幼馴染のお姉さんです。
私はあ然と驚きながらも、声をかけてみました。
「ケロケロー(もしもしー)」
あ、カエルの声。
私は自分自身を確認しました。黒くてすべすべで湿った肌に水かきが付いた手足。今、私はマグカップに入って暖かなお湯に浸かって生き返ったようです。
「あ、カエルちゃん。目を覚ましたんだー。良かった。ヒナタさん!カエルちゃん、生き返ったよ」
つぐみさんはヒナタさんという人を連れて私の前に立ちました。
「あら、良かった。カエルさんが無事で……拾った時は臭くて干からびて死んでるかと思ったけど、洗ってちゃんとすれば、黒くて可愛いアマガエルになったわね」
ヒナタさんという人は女の人で年は25,6歳位です。栗色のふわふわとした長い髪に黒い瞳をして眼鏡を掛けています。そして、目の下にくまが出来ています。服装は紫の着物に花柄で身長は小柄です。美人です。
対象的につぐみさんは年は18歳の女子高校生で、紺のセーラー服を着ています。今は寒いので灰色のカーディガンを着ています。黒髪のボブカットに茶色の瞳をして顔立ちは可愛いです。
どうして、ここにつぐみさんがいるのか分かりませんが、二人が私を拾って助けてくれたのには違いありません。ここは、お礼を言うべきです。
「ケロケロケロー(助けて下さってありがとうございました)」
「何かカエルちゃん、お礼を言ってるみたいだね」
「そうみたいね、……可愛い」
今は言葉が通じていないけど、思いは伝わったかと思います。
「けど、カエルさんって何食べるんだっけ?」
「確か、……ハエとかコオロギ」
「雑食だったわよね、カエルさん、家にあるハムでもいいかしら」
「そうだね、ハム食べるかもしれないね、ヒナタさん」
そして、私の前には美味しそうなハムが目の前につぐみさんの手の上にのっています。
私は反射的に長い舌をぺろっと出して、ハムを飲み込みました。
「良かった~食べてくれた。カエルちゃん」
つぐみさんは嬉しそうに私のつるつるの頭を撫でました。
「あ、そうだ、カエルさんに構ってちゃいけない。原稿仕上げなくちゃ!締切が近いんだ」
そう言って、ヒナタさんは私の傍を離れて、テーブルに座って紙に文字を書き始めました。
「そうそう、カエルちゃん、ヒナタさんって小説家なんだよ。すごいでしょう、ヒナタ・ダイチって本名で書いてるんだよ~」
私はそういえば、兄さんもヒナタ・ダイチさんの作品読んでたなぁと思って考えていました。
これから、どうしよう。兄さんやエクレールのことを考えて、心配してるだろうなと思っていました。
すると、ドンドンドンと強く扉を叩く音がしました。
忙しいヒナタさんの変わりにつぐみさんが出ました。
「すみません、この家に小さくて黒くてつるつるのお肌に手には水かきが生えた両生類って知りませんか……、つぐみちゃん、……久しぶりだね」
「……ウソ、優斗君、どうしてここに……」
感動の再会ですが、私は兄さんに気づいてもらわなければなりません。
「ケロローケロロー(兄さん、私はここにいます)」
「何、ボケッとしているの、ユート。さっきの鳴き声、エリカだよ、エリカはここに居るよ」
そうすると、エクレールはヒナタさんの家に入って私を見つけてくれました。
「やっと見つけたエリカ。良かった」
エクレールは嬉しそうに笑いました。
そして、兄さんも私を見つけました。
「エリカ、その姿も可愛い……いけない、大変だったな、今、兄さんが元の姿に戻してやるからな」
そう言って、兄さんはカエルの私を大事に手に持って、私のつるつるの頭にキスをしました。
すると、私はどんどん大きくなってカエルから人へと戻っていきました。
しかし、頭がガンガン揺れて、目の前がぐるぐる回るようです。
しばらくして、落ち着いて辺りを見渡して見ると視界が高くなっているのです。
不思議に思って下に視線をやるとそこには黒髪の長さが肩にかかる位の長さで黒めの13歳の私が目の前に立っていたのです。
「わ、私!」
「お、俺!」
同時に声をあげました。
私が兄さんで、兄さんが私に入れ替わってしまったのでしょうか……。




