1話 別れと出会い
私の日本での名前は相原エリカ、13歳。
今は、エリカ・アイハラ・ラインハート。京魔国のお姫様になりました。
一年前まではどこにでもいる普通の小学生だったけど、異世界にトリップして孤児院で過ごし、ある事件がきっかけでエストランダという国のお城で期限付きでメイドをしていました。
それから、エストランダを出て、エストランダの第二王子様であるリヒャルト様とお供とガイドと私で京魔国へ旅に出かけたのです。
旅の目的は京魔国との貿易の仕事について、そして私は実は京魔国の王様の妹ではないかと確かめにいくために付いて行ったのです。
旅の途中で海で巨大たこに襲われて海を遭難しかけたり、人魚に出会って王子様と恋に落ちたりとロマンスもあったり、何より船で出会ったおじさんが私のお父さんだっとと驚きもありました。
京魔国ではすぐに私の兄さんと再会できて、私と兄さんとお父さん、家族3人が揃ったのです。
お母さんは数年前に亡くなり、お父さんは異世界の京魔国の王族だったのです。
そして、私を地球から異世界に導いてくれたのが火の妖精レッドだったのです。
レッドはお父さんに頼まれて私を探していて、エストランダでマッチ売りをしていて、マッチに火を付けたら一寸サイズのマッチョな美中年の火の精霊レッドが現れたのです。
レッドは私をいつも見守って、傍にいてくれました。
京魔国でお父さんと兄さんに再会して、京魔国の首都・桜空で私は残り、この国の王様である兄さんと共に暮らすことを決めたのです。
お父さんとレッドは一緒に世界中を旅して困っている人達を助けに行くのです。
そして、お父さんとレッドの別れの日が来たのです。
ここは桜空城、私が今、暮らしている場所です。
城門の前にお父さんとレッドがここを去ろうしています。
「ユートよ、エリカのことは頼んだぞ。いいか、エリカ、ここではなんでも好きに過ごしていい。勉強でも運動でも昼寝もして、おいしい物をたくさんよく噛んで食べるんだよ」
ユートこと優斗は私の6歳年上の私の兄さんです。
「分かったよ。お父さん、私、好きなことするから、お父さんも体に気を付けて、行ってらっしゃい」
私はお父さんに抱き着きました。
ぎゅうっと力を込めてお父さんの存在を確認したのです。
今まで”父”がいなかった私にとってこの行動は、初めての甘えだったのかもしれません。
すると、お父さんも私を抱きしめてくれました。
「ああ、何か親父ばっかズリーな」
兄さんがそう言って私とお父さんの肩に手を回して三人で円陣を組むようになりました。
三人のお互いの顔が見えます。
私は兄さんの目を見て、兄さんはお父さんを見て、三人とも片手を前に出しました。
そして、手を重ねて、
「「「えい、えい、おー」」」
気合を入れました。
それを見ていたレッドは「仲がいいねぇ…」とつぶやきました。
「レッド、少しのお別れだね……」
「ああ、しかし、俺の娘を紹介するよ」
「今、いるの?」
「今から呼ぶから、耳塞いでおけ」
私はレッドに言われた通りに耳を塞ぎ、周りの人たちも耳を塞ぎました。
≪出でよ、我が娘、エクレール!≫
すると、空は曇り、稲妻がビシャ!と走り落ちたのです。
稲妻が落ちた所には、小さな緑の髪の美しい女の子が浮かんでいました。
「呼んだ。パパ」
鈴が転がるような可愛らしい声で女の子は言いました。
「ああ、エクレール。紹介するよ、ユージンの息子と娘のユートにエリカだ」
「よろしく」「よろしくね」と兄さんと私が言い、
「パパから話は聞いてけど、あなた達がね、私はエクレールよ。雷の妖精よ。よろしく」
「エクレールは特にエリカに付いて仲良くやれよ」
レッドが言いました。
そうして、お父さんとレッドは桜空城を去っていきました。
二人のいない寂しさがありますが、エクレールという妖精の女の子と知り合いになれたので嬉しいこともありました。
お父さんに沢山、手紙を書きたいと思います。
そして、小さな妖精のエクレールと友達に成れたらいいなと思いました。
季節は秋も深まった11月の始まりの出来事でした。