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吸魔妖精物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四体目 妖精ティンカーベル
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サンダー・クロス

「GUGAAAAAAAAAAAAA!!」


 大地を劈く咆哮に無数の人が集まりだす。

 ちょっとしたパニックだった。

 どうするよコレ?


 オーガの身体は少しづつ、だけど確実に魔法陣から姿を現す。

 既に下半身の腰に巻き付けられた汚れた布が見えている。

 全身で苦痛にのたうちながらも必死にこちらに顕現しようとする悪鬼に、僕たちはただただ見守るしかなかった。


 悪夢の光景だ。

 巨大な人型の生物が、人ではありえない咆哮と共に出現する。

 その絶望の光景を、人々がただただ見入る。

 あの生物がこの世界に完全に解き放たれればどうなるか、この場に居る人たちが逃げ惑い、あの拳を振り下ろされて肉塊に変えられる。

 けど、そんな光景に意を唱えるようにティンカーベルの声が高らかに響いた。


『天に轟くは汝!』


『おととひかりのししゃよ!』


 続くようにピクシニーが告げる。

 二人で絡まり合うように舞い踊る姿は、まさに妖精だった。

 神秘的な風景に、僕たちはしばし酔い痴れる。


『天の高みより舞い来たりて』


『こへつどえ!』


 ティンカーベルとピクシニーが互いに腕を絡めて握り合う。


『我が前を阻みし』


『こういにておろかなるものへ』


 頭上へと掲げられた二人の腕が今までにない放電を纏う。

 これは……物凄い一撃が放たれるのでは?

 なんて期待してしまう。


『汝がくだすは』


『ぎのさばきなり!』


 ティンカーベルとピクシニーの協力魔法が発動する。

 最後の一言は二人揃って、オーガに向けて組合った腕を振り下ろす。


『『サンダー・クロス!!』』


 それは、ラ・グやラ・グラではありえない光量を持つ迸る雷。

 未だ下半身を引き摺りだそうとしているオーガに真っ直ぐに襲いかかる。

 オーガの瞳に焼けつく様な光が映った。


 オーガもソレに気付いて咆哮する。

 両手を前にして受けとめようともがく。

 直撃するサンダー・クロス。


 余りの熱量にオーガの身体が焼ける。

 帯電した電撃が彼の身体を駆け巡り、オーガの絶叫が響き渡る。

 それは果たしてどれ程の時間だったろう?

 数秒? 一分は続かなかったと思う。

 でも、かなりの時間絶叫が迸ったと思う。


 雷撃が終わり、周囲に肉が焼けた臭いが漂う。

 雷撃で皮膚が泡立つ様に焼けただれたオーガが沈黙していた。

 凄い一撃だ。ピクシニーのラ・グを何度か受けていただけに、この威力の違いに思わず恐怖する。


「や、やったのか?」


 思わず呟く葉玖良……って、トラブルメーカー! それフラグ!!

 僕が心の中でツッコミ入れたせいだろうか? それとも葉玖良の言葉が切っ掛けだったのか?

 ピクリとオーガの身体が動いた。


「GAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!」


 大きく両拳を真上に掲げ咆哮するオーガ。

 焼け爛れながらも怒りに満ちた瞳で二体の妖精を睨みつける。

 校庭から砂を手に取り妖精向けて投げ飛ばす。


 オーガの怪力から投げられた砂はまさに弾丸のように飛んできた。

 ぎりぎりで躱すティンカーベル。

 その背後で、砂が校舎に突き刺さり幾つもの穴を穿つ。


 ……嘘でしょ?

 砂だよ? 砂で校舎に穴開けるってどれ程の威力!?

 さすがにこれは危険だと気付いたらしい。周囲から人が慌ただしく逃げ始める。


 でも、僕たちは逃げられない。

 元々の元凶だから、オーガをここから出す訳に行かないからだ。

 でも、あの魔法を耐えきった化け物をどうやれば……


 邪魔がいなくなったとオーガは再び自身を引き抜く作業を始める。

 ついに下半身が現界した。

 後は足が出て来るだけで完全にこの世界に出現してしまう。


『ダメね。サンダー・クロスじゃアレを倒しきれない。見なさい。既に超回復が行われているわ』


 言われて見れば、オーガの身体が少しづつ緑色の皮膚を取り戻しだしている。

 これはマズい。

 折角与えたダメージすら無くなるってことだ。


 ますます打つ手が無くなっている。

 僕は思わず皆を見回すけど、誰も何も出来ないようだ。

 困った顔を向けて来る。


『マスター候補ォッ! ようやく見付けたぞテメェ! 今度こそ殺して……』


『あら? アレも来てたのね』


 僕の家で気絶させたパックが現れたのは、そんな絶望感漂う時だった。

 勢い良く跳びかかろうとしていたパックだったが、ティンカーベルを視界に収めた瞬間、青い顔をして転進。

 逃げようとしたところを素早く回り込んだティンカーベルに遮られていた。


『どこに行ったのかと思ったけど、こんな場所に逃げ込んでいたのね?』


『よ。よぉティンク。その、なんだ。俺はまだ契約前なんでちょっと立て込んでてな……』


『手伝いなさい』


『だ、だからマスター候補がその……』


『手伝い……なさい?』


『……はい』


 あのパックが暴れることなく大人しく従う人、初めて見たよ。

 パックと出会ってまだ一日しか経ってないけど。

 登場人物


  新見黙人

    ネクラトロスケと呼ばれる引っ込み思案な少年。


  ピクシニー

    吸魔と名乗る妖精少女。

    新見黙人の契約悪魔。

   習得魔法

    ラ・グ:電撃魔法の一つ。威力は一番低い。

    シェ・ズ:風の範囲魔法の一つ。威力は低いが広範囲に被害を及ぼす。

    ウェ・ズ:風の範囲魔法の強化版。周辺全体に被害を及ぼす。

    サ・クリフア:吸魔専用能力。倒した相手のディグを吸収できる。

    キュ・ア:単体を小回復する魔法。

    カン・フィール:状態異常・麻痺、混乱、睡眠、魅了などを回復する。



  常塚葉玖良

    黙人の隣人。姉と二人暮らし。

    何かの訳ありで姉妹共に髪の色がエメラルドグリーン。

    成績優秀三つ星料理と才色兼備だが毒舌。

    剣道部に所属する次期部長候補。ただし幽霊部員。


  常塚神楽

    黙人の隣人。妹と二人暮らし。

    何かの訳ありで姉妹共に髪の色がエメラルドグリーン。

    家事は得意だが料理は壊滅的。学食に勤め始めた時に作ったラーメンが校長の眼に止まり半永久的に学食で働くことに。

    ディグを大量に持っているため作った料理に魔力回復効果を付与してしまう。


  素本学

    黙人の友人。

    小学校高学年の頃一週間行方不明になり、魔王崇拝者として覚醒した精神異常者。魔王のためなら命も惜しくない少年。

    絵が以上に上手い。魔物図鑑ノート作成開始。


  鏑木沙耶

    黙人の憧れの人。

    隣のクラスの少女で彼氏あり。

    神楽ラーメン崇拝者の一人。

    ストーカー気質あり。


  赤井出京介

    沙耶の彼氏。

    バスケ部の赤い髪のイケメン青年。

    黙人とは中学からの先輩後輩として仲がいい


  パック

    妖精族の一人。

    ピクシニーを再召喚しようとして召喚された。

   習得魔法

    ラ・グ:電撃魔法の一つ。威力は一番低い。

    ラ・グラ:電撃魔法の一つ。威力は中くらい。

    シェ・ズ:風の範囲魔法の一つ。威力は低いが広範囲に被害を及ぼす。


  マンドラゴラ

    学が園芸部の一角を借り受け育てていた根菜。

    繁殖力が強く引き抜くと大音量の悲鳴を響かせる。

    比較的若い個体は音量が小さいが、大きくなると引き抜いた相手が死亡する事もある。

    地面に着くと走り出し自分に都合のいい地面を探し始めて埋まりに行く。

    走る速度は時速100Kmまで加速する。


  スライム

    葉玖良が召喚した魔物。

    思考を有しない本能のみの魔物のため契約は不可能。

   習得特技

    溶解液:肉なら楽に溶かせる溶解液を体内生成する。吐き付けてくる事もある。

    分裂:一定時間ごとに分裂を繰り返し増える。

   特性

    変温生物:気温変化に弱い。


  ティンカーベル

    下級妖精内では高ランクの妖精。

    口調は相手を見下すような毒が散見されるが、基本面倒見は良い。

   習得特技

    ピクシーパンチ:妖精族の基本打撃技。相手の体勢を崩すことがある。

   習得魔法

    ラ・グ:電撃魔法の一つ。威力は一番低い。

    ラ・グラ:電撃魔法の一つ。威力は中くらい。

    ライトニング:電撃魔法の一つ。威力は中の上くらい。

    シェ・ズ:風の範囲魔法の一つ。威力は低いが広範囲に被害を及ぼす。

    ウェ・ズ:風の範囲魔法の強化版。周辺全体に被害を及ぼす。

    キュ・ア:単体を小回復する魔法。

    カン・フィール:状態異常・麻痺、混乱、睡眠、魅了などを回復する。

    ヒュ・ルラ:相手の精神を破壊する魔法。単細胞生物程度の知能以上だとレジストされる。


  オーガ

    オーガの中でもリーダー格らしい巨体を持つ魔物。

    邪鬼族に属する中の下くらいの実力を持つ。

   習得特技

    鬼の一撃:全力パンチ。邪鬼族では比較的良く覚えられている特技。

    巨岩投げ:自分の体重くらいの岩なら楽に投げられる。

    咆哮:魔力のある叫びで相手を恐慌状態にする。

   特性

    超回復:主要器官さえ無事なら全身の肉が剥がれようと数時間で元に戻る。

    地耐性:大地属性の魔法に耐性を持つ。

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