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吸魔妖精物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
一体目 吸魔ピクシニー
1/45

プロローグ

 魔界。

 それは神話の時代、神々に追われ地の底へと逃げ込んだ魔物と呼ばれる者たちの住処。

 現世とよばれるこの世界のあるいは地中深く、あるいは位相世界、あるいは別次元に存在するとされる世界のことである。


 そこには幾多の種族が住むという。

 指先位の小さな身体に昆虫の羽を生やす悪戯好きの妖精、高貴なる魔界の貴族であり人間の血を好む吸血鬼、あるいは本能の赴くまま目に付くものに噛みつく魔獣。


 そこには無数の種族が住みこみ、それぞれの種を代表する王が治める。

 自治区という区切りはない。ただ弱肉強食の世界だ。

 その中でも、統括者は存在する。

 魔物たちを統べる者、その名を魔王と呼んだ。




「ついに……俺は解明したんだ……」


 一本の蝋燭に照らされた薄暗い部屋で、黒いフードを被った誰かが呟いた。

 感嘆を押し殺したその言葉に、どれ程の感情が詰め込まれているのか、彼以外には誰にもわからない。

 ただ、苦節数年の苦労がようやく報われた事だけは確かであった。


 部屋は黒のカーテンで外界と区切られ、床には赤い何かで魔方陣が描かれていた。

 フードを被った人物は、右手に髑髏の付けられた錫杖、左手には開かれた一冊の分厚い本を持っていた。

 締め切った部屋は淀んだ空気を漂わせ、揺らめく蝋燭が男の動きで激しく揺らめく。


「ついに……俺の念願……」


 フードを被った人物は本を閉じる。

 ぐっと溜めこみ、まだ溜めこみ、思い切り両手を掲げて力の限り叫んだ。

 それを喜びの咆哮だと、誰が気付けただろう?


「魔王様降臨祭だぁぁぁぁッ!」


「学、静かにおしッ!」


「は、はいッ!?」


 どこからともなく聞こえてきた母親の声に萎縮するフードの人物。

 声に驚いた拍子に手にした本を落としてしまう。

 足を本に潰された断末魔の声と母親の怒声が響き渡った。

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